再び、取り戻す―(23/26)


「もっと勉強しねぇとな」


「今に見てろぉ! 隼人さんの手が届かないところまで行ってやる!」


「へいへい、せいぜい頑張れよ」


こんにゃろぉぉぉ!


「僕が勉強をみてあげようか?」


「お兄さんなんかに手は借りたくないです」


「オ、オイルショック;」


「無理してボケなくても」


お兄さんってそういうとこありますよね。


「私は隼人さんにみてもらいますから」


「敵の手は借りるんだな」


「あなたが言い出したんじゃないですか」


「まあ、そうだけどよ」


「それいうか、お兄さんは桃っちさんを見てあげてくださいよ。一学期の成績はあまり芳しくなかったようですし」


「Σギクッ!;」


「え? そうなの?」


「た、確かに、勉強はあまり得意ではありませんが……; なんでそれを凛さんが知っているんですか!?;;」


「ママから聞いた☆ 二学期も成績が上がらなかったら、正生徒会から解雇だって☆」


「Σえぇっ!? そんなの聞いてないですよっ!!!?;;」


「うん、嘘だもん」


「え……;;」


てへぺろ☆


「お前、そのうちバチが当たるぞ」


「このくらい多めに見てくれますよ、神様だって」


「桃子くん!! 君がいなくなったら僕が困るよ!!;;」


「Σえっ!?」


約一名、話を聞いていなかった者がいるようだ。


「か、会長っ!! 今のは冗談ですよ冗談!!;;」


「えっ、そうなの!? よかった……;」


「この人が本当に秀才な私の兄なのだろうか……」


「やっぱ腹立つな……」


久しぶりに隼人さんと意見が合いました。


「……でも、中間テストも近いし、僕でよければみてあげるよ?」


「Σえっ! そ、それは……嬉しいような……嬉しくないような……;;」


「どれだけバカなのかがバレちゃいますもんね」


「それを言わないでください!!;;」


案外、桃っちさんになら簡単に追いつけるかもしれない。


「大丈夫だよ、誰にでも得手不得手はあるんだから。僕だって運動は苦手だし……」


「そうですよ、完璧な人間なんていないんですから」


「お前も学習したな」


「もっと褒めて☆」


「調子に乗んな」


「ハイ……。でも、完璧な人間がいないのなら、マッケンさんにも弱点はあるんですよね?」


「あいつは……もしかしたらないかもな……」


「マッケンジャーくんはすごいよね。勉強も運動もできて」


「ご飯を食べるのも早いです;」


「薬の調合もできてメカも爆弾も作れて……」


「もはや人間じゃねぇよな」


「尊敬するよ」


「でも、あの性格はちょっと……」


「歪んでますからね。盗聴・盗撮のプロですし」


「そういえば、新しい盗聴器が完成したって言ってたな」


「それは止めないと!」


「被害に遭う女性が可哀相です!」


…………。


脱衣所であったことは言わないでおこう。


「男性陣はそんなに気にしなくてもいいから楽ですよね」


「そうでもねぇけどな」


「何かあるんですか?」


「いや、別に……」


『──こういう写真もあるから気は抜けないんですよね……』


「「「「Σうわっ!?!?」」」」


マ、マッケンさんっ!?!?


カッキーの陰からひょっこりと!!


「い、いつからそこにぃ!?」


「つい先ほど……。盗聴器ナンバー38から僕の陰口が聴こえてきたので……来てみました……」


やっぱパネェよ。


「写真って一体……。 Σ!! こ、これは……!」


マッケンさんが差し出した一枚の写真には、私が隼人さんに抱きついているシーンが写されていました。


ああ、さっきのやつですね。


「オイッ!! こんなとこ撮んなよっ!!」


「これを一定の人物達に見せれば……面白いことになりそうです……フフフフ……」


ママに見せれば煽られて、おじいちゃんに見せれば……隼人さんが殺される!


「この撮り方だと、まるで浮気現場を隠し撮りしたかのように見えますね;」


「今すぐ燃やせっ!! いや、俺が燃やしてやるっ!!」


「どうぞどうぞ……あとで焼き増ししますから……」


「このやろっ……!!」


マッケンさんに抜かりなし!


「別にいいじゃないですか、記念写真ですよ☆」


「何が記念写真だっ!!」


「あ、こんな写真もありますよ……。女風呂を覗くカスさん……」


「Σなっ!!」


「サ、サイテーですっ!!!!」


「何やってるんですか隼人さん!」


「いや、これはお前を探してる時に……!;」


「だからってお風呂の中まで探さなくても!」


わざとか!?

それとも素か!?


「その時に撮ったもう一つの写真がこれです……。湯舟から上がる瞬間の副会長さん……」


「Σキャアァァァァァッッ///!!!!」


THE・隠し撮り。


「見えそうで見えないのが匠の技ですね~」


「感心してどうするんですか//!!」


「マッケンジャーくん、プライバシーの侵害だよ」


「こういうのもですか……?」


「え?」


マッケンさんが新たに取り出したのは、お兄さんがママにデコチューされてる写真。


「ど、どうしてこれを//!?」


「この瞬間だけはあの理事長も隙をみせたようです……フフフ……」


さすがだぜ。


「あ、トロさんにはこれを……」


「?」


私はそんじゃそこらの写真じゃ驚きま──


「Σハッ!!!!!!」


こ、これはっ……!!!!;;


「どんな写真だ?」


「ダメダメダメダメッ!!!!!!」


私はマッケンさんから写真をかっさらいました。


「えっ、どうしたんですか!?」


「これは絶対にダメッ!! 隼人さんに殺されるっ!!」


「俺に?」


Σアッ!!

お口にチャック!!


「……気になるな……その写真……」


「ホワッツ? ニッポン語ワーカリーマセーン」


「渡せ!」


「ヤダ!!」


「あ……同じ写真ならもう一枚ありますよ……」


「Σえ゙!!」


マッケンさんは懐から写真を取り出し、隼人さんに手渡しました。


「こ、これは……!!」


「ギャーッ!!!!」


皆さんにもお教えしましょう。

別に大したものではありませんが、そこに写っていたのは、立ったまま居眠りをする隼人さんの顔に落書きをしている私の姿でした。


「犯人お前だったのかよっ!!」


「ペンを貸してくださったのはマッケンさんで──ハッ! もしや、私はマッケンさんにハメられた!?」


「フッフッフ……」


コノヤロー!!!!


「重要なのは実行犯だ!」


「まあまあ、あなただって似たようなことをいつもしてるじゃないですか」


「てめぇ……──Σグフォッ!!!?」


「「「!?」」」


隼人さんが急に倒れた!?!?


「──お姉ちゃんをいじめるな!!」


「ま、真理ちゃん!?」


どうやら、真理ちゃんが隼人さんの腹部に頭突きを喰らわせたようです。


「おや、マリマリ……部屋で留守番をしているはずでは……」


「お姉ちゃんのピンチだから来たの!!」


なんで一緒の部屋にいたんだ!!


「このチビ助がっ……!」


「……地獄に堕ちろクソカスめ……!!」


口が悪いよ真理ちゃん!


「勉強中にも関わらず……お姉さん想いのイイ子ですね、マリマリは……」


「「「勉強中?」」」


「あ! お姉ちゃん! 真理、カッシーニの軌道計算ができるようになったよ!!」


「カッシーニの軌道計算!?」


って、何!?


「土星探査機の軌道計算式……。そんなもん、お前みたいな奴にできるわけねぇだろ!」


「黙れゴミカス!!」


よくわからないけど、かなり先を越されたみたいだ!!


「お姉ちゃんオイルショック!!」


「オイルショックは1973年と1979年に始まった原油の供給逼迫及び価格高騰とそれによる世界の経済混乱のことで──」


「ギャー!!!! 真理ちゃんが壊れたぁぁぁ!!!! 聞きたくないぃぃぃ!!!!」


誰か助けてぇー!!!!


「隼人さん!! 今すぐ勉強会を開きましょっ!!」


「は?」


「は? じゃないです!! 勉強みてくれるんでしょ!!」


「そうは言ったが……今からすんのか?」


「今からです!! オチオチしてたら真理ちゃんがどんどん遠くなります!! ──あ!! 桃っちさんも強制参加ですよ!!」


「Σえっ!!」


「一人より二人のほうが心強いです!!」


「そ、そんなっ……!;」


「真理もやる!!」


「真理ちゃんはダメッ!! おネンネしてなさい!!」


「Σふぇっ!?」


「さあ! 早く始めますよ!!」


私は隼人さんと桃っちさんの腕を引きました。


「モルモルぅ!! お姉ちゃんがいじめるよぉぉぉ!!!!」


「よしよし……可哀相に……。マリマリは僕と続きをやりましょうね……」


「モルモルぅぅぅ!!!!」


ムキィィィーー!!!!!!

今に見てろよぉぉぉ~!!!!!!


「ほら!! お兄さんも早く!!」


「えっ、僕も勉強するの!?」


「みるほうですよ!!」




──こうして、私の忙しない数日間は一時幕切れとなり、また新たなる戦いが開幕されました。


……支え合うって、いいですね。

一方的に支えようとするだけでは、ダメなんですね。

たまには甘えることも大事なんだと思いました。


これからは、ドタバタな日常の中でも、みんなとの繋がりを大切にして、頑張っていきたいと思います。




はあ、大変だなぁ……。

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