再び、取り戻す―(10/26)


……一体なんなんだ……。


1階におじいちゃんがいて、2階にあの二人がいたってことは……この先にもまだ敵がいるのだろうか……;

ママの指図だって言ってたしなぁ……。


こうなったら、なんとしてでもここから出てやる!


「──まあ、ここまで来てしまいましたのね、凛・トロピカル」


「僕のレイたんを返せっ!!!! このダシ昆布がっ!!!!」


誰がダシ昆布だ。

トロロはどこへいった。


「やはり、マサハルもあのブタ子とかいうヘンテコ人間も、役に立たなかったようですわね。しかし、ここは通しませんわよ」


「僕の北斗神拳を喰らいやがれ!! そしてレイたんを返せっ!!!!」


何を吹き込まれたのかは知りませんが、ミーはレイたん持っていませんよ、ピーラーさん。


「おとなしくわたくしの矢に射抜かれなさい!! あなたにあるのは、〝死〟のみです!!」


ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!


「地獄に堕ちろぉぉぉ!!!!!! ホワァアタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!!!!!!!!!」


Σ怖っ!! 危なっ!!

でも全然違うとこ狙ってますよ二人とも!!


「逃げるんじゃありませんっ!!」


ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!


「レイたぁぁあぁぁぁぁぁアァタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!!!!!!!!!」


だから当たってないですって!

私一歩も動いてませんよ!


「Σな、なんと!! 矢がなくなってしまいましたわ!!;」


「ハァ……ハァ……!! た、体力がっ……!!;」


バカだ。


「ハッハッハ、残念デシタ~♪」


「くっ……なんて強さ……!」


「こ、このっ……! ヘンテコ人間モドキがっ……!」


ただの自爆でしょうが。


「ソーイエバ、Ms.会計。先日、Mr.ピーラーガ、youノ入浴シーンヲ覗イテイマシタYo!」


「Σな、なんですって///!?」


「はぁ!? 僕はそんなことしてねぇよ!!」


「嘘ダメデ~ス、Mr.ピーラー」


こっちが嘘だけど。


「この変態っ//!!!! 制裁を下しますわっ!!!!」


お嬢様は、落ちていた矢を拾ってピーラーさんに襲いかかります。


「意味わかんねぇ!! 僕はやってねぇよ!!」


「黙らっしゃい!!!! その目をお陀仏にして差し上げますわ!!!!」


「助けてレイたぁぁぁんっ!!!!」


二人は追いかけっこを始め、そのままどこかへ行ってしまいました。


――ソーリー、Mr.ピーラー。




跳んで跳んで跳んで、4階に降り立ちます。


やっぱりいましたよ、2人。

しかし、何やら揉めているようです。


「──ですから!! 盗撮は犯罪なんですって!! 売るのならちゃんと本人の許可を取ってください!!」


「ですが……僕の写真のおかげで幸せになる人達がいるんですよ……人を幸せにすることは罪なのでしょうか……」


「盗撮された側は不幸になりますっ!!」


「なりませんよ……撮られていることに気づいていないのですから……。この世知辛い世の中……知らないほうが幸せなこともあります……」


「そ、それはそうかもしれませんが……。って! ダメダメ!! うまいこと言って逃げようとしてもダメですよ!!」


「あなただって会長さんの写真をほしがっていたくせに……」


「ギクッ!!;; そ、それとこれとは話が別です!! 皆さんに言いつけますからねっ!!」


「そうですか……別に構いませんよ……。その瞬間、全世界にあなたのヌード写真がバラまかれますが……」


「Σヌ、ヌード/////!?!?!?」


「この間露天風呂で撮影しました……なかなかうまく撮れていますよ……ほら……」


「Σキャアァァァッッ////!!!!!!」


「フフフ……冗談ですよ……。ちゃんとタオル巻いてますって……」


「えっ!! よかったぁ……;; ──って!! それでもダメですから!! 返してください!!」


「2万5千円になります……」


「どうしてお金を払わなきゃダメなんですかっ!!!!」


「だって僕の所有物ですから……。まあ、これを渡しても増刷はできますから……買ったところで無意味だと思いますけどね……」


「卑怯ですよぉ!!;;」


…………。


なにやってんだか……。


ピーチさんとマッケンさんのやり取りは永遠に続きそうだったので、私は気づかれないように通り過ぎようとしました。


──しかし。


「どこ行くんですかトロさん……」


マッケンさんに気づかれてしまいました。


「Σえっ! 凛さん!?!? いつからそこに……!」


「結構前からいましたけど」


「僕は気づいていましたよ……探知器がありますから……」


やっぱりか。


「そ、そうだったんですか……。って!! なんでここにいるんですか!! ちゃんと寝てなきゃダメですよ!!」


「もういっぱい寝ました。すっかり元気ですよ。……あ、でもちょっとお腹が空いたかなぁ……」


「トロさん……ここに特製の栄養ドリンクがありますが……飲みますか……?」


「要りませんっ!!!!」


死ぬ! 飲んだら死ぬ! 絶対死ぬ!


「じゃ、じゃあ! ご飯食べましょうよ! もうすぐ夕飯の時間ですし! 私が保健室まで運びますから!」


「せっかくここまで来たのでお断りします」


「Σガーンッ!!!!」


相変わらずナイスリアクションだ。


「ということは……皆さんを殺ってしまったのですね……それは後戻りできませんね……」


殺してはないです。

というか、熱血さんに蹴りを喰らわせたくらいしかしてません。


「り、凛さんっ……どうしてそこまでしてっ……うっうっ……;;」


泣くなよ。


「私は用事があります。忙しいんです。時間がないんです。そう言ってるのに、皆さんが邪魔をする意味のほうがわかりません」


「忙しいんなら私が手伝います!! だから無理しないでください!! 凛さんがまた倒れたら、私心配です!!」


ピーチさんはイイ人ですね。


「これは私の問題です。手伝いとか、無理だと思います。可能でも要りません」


「どうしてそんな冷たいこと言うんですか!!」


「あなたのことが目障りだからです」


「Σガガガーンッ!!!!!!」


冗談ですけど。


「で、でででもっ!! どんな理由があろうとも!! ここを通すわけにはいきません!! 会長命令ですっ!!」


「僕は気分です……」


オイ!

気分ってなんだ!


「ピーチさんって、いっつも会長会長ばっかりですよね。あの人が誰かを殺せって言ったら、殺るんですか?」


「会長はそんなこと言いませんっ!!」


「仮の話ですよ。好きな人の意見にばっか従っていないで、たまには自分の意思を尊重したらどうですか?」


「今回のことは、自分の意思と合致しています!! それに、私だってダメな時はダメって言えます!!」


「そうですかそうですか。では、そんなピーチさんに悲報です」


「えっ?」


「ここを通してくださらないのなら、お兄さんにいろいろと……吹き込んじゃいます」


「へっ!? いろいろ……!?;」


「はい、お兄さんがピーチさんのことを嫌いになるようなことを……」


「Σえぇっ!!!?;;」


ピーチさんは思いっきりのけ反りました。


「マッケンさんも、退かないというのなら、もう真理ちゃんと遊ばせません」


「それは困りますね……どうぞ、お通りください……」


軽っ!


「ちょ、ちょっと!! 何言ってるんですかっ!!;」


「マリマリに会えなくなったら困ります……まだ研究途中ですから……」


研究って……何の研究だろう……。


「ダメですよっ!! 凛さんが心配じゃないんですかぁ!?」


「マリマリとのお遊戯時間のほうが大切です……」


「そ、そんなっ……;; こうなったら、私だけで凛さんを……!」


「マッケンさん、ピーチさんを捕まえておいてください」


「アイアイサー……」


マッケンさんは、ピーチさんの手に素早く手錠をかけました。


「Σな、なんですかこれ!! ちょっと!! 放してくださいっ!!;」


「トロさんに幸あれ……」


「センキューデ~ス☆」


マッケンさんがピーチさんをホールドしているうちに、私はさらなる上を目指しました。


名前を出すだけで効力があるとは……うちの兄妹って、実は貴重な人材なのかも。


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