再び、取り戻す―(9/26)


「ふぅ~……」


私は保健室を出て、素早く玄関のほうへ向かいました。


が。


「──どこへ行く気じゃ、凛」


「Σ!」


運の悪いことに、おじいちゃんと鉢合わせしてしまいました……。


「お、おじいちゃんこそ、そこで何をしているんですか? まるで門番でもしているかのような佇まいですが」


「おお~、よぅわかったのぅ。ワガママで強情で頭の悪い娘が逃げ出さぬよう、ここで見張っておるのじゃ」


「そうですかそうですか。娘ではなく孫である私には関係のないお話ですね~。せいぜい頑張ってください」


「むむっ。ならば訂正する。娘じゃのうて孫じゃな」


「…………」


「…………」







「──逃げる!!」


「Σあ!! コラ待たんかっ!!」


なんでこうなるのぉ~!!!!


「あれ!? 鍵が開かない!」


窓から外に出ようと思った私ですが、何故か窓の鍵が超ハイテクなものに代わっており、開けることができませんでした。


「無駄じゃ無駄じゃ! 校舎から出たければワシを倒すがよい!!」


おじいちゃんは飛びかかってきました。


「くそぉ! あともうちょっとだったのにぃ!」


私はひらりと避け、その場から走り出しました。


……こうなったら、校舎の屋上から寮の屋上に飛び移ろう……。


「逃がしはせぬぞ!!」


「Σ!?」


な、なんじゃこりゃ!?

あのジジイ、マキビシなんかまき散らしやがった!!


「ふっふっふ、これで逃げられまい!」


コノヤロォ……。

だが、おじいちゃんは私を見くびっている。


「甘いデース!!」


私は壁を蹴って跳び上がり、階段の上に着地しました。


「Σな、なんじゃとぉ!?」


「壁蹴りを教えてくださったのはおじいちゃんでしたよね~♪ どうもありがとうございました~♪ ──じゃ!」


「ま、待たんか!! ──い、痛っ!! 誰じゃ! こんなところにこんな危ないもんをまいたのは!!」


あんただよ。




――あ~、とんだ邪魔が入った。さっさと寮に戻ろ。


私は2階へと駆け上がりました。


……すると。


「──待ちたまえトットロ君!!」


「Σわっ!」


私の前に、熱血さんが立ちはだかりました。


「あ、ホントに来たのねトロちゃん」


何故かナルシーさんも一緒です。


「な、何してるんですか……?」


もうめんどくさいので素で問いかけました。


「トットロの通せん坊だぜい!! ここから先は通さないんだぜい!!」


「あの保健教師に言われたのよね~。トロちゃんを捕まえられたら、高級ステーキを好きなだけ食べさせてあげるって」


そんなバナナ!!


「さあ!! おとなしく保健室へ戻るんだぁぁぁぁ!!!!!!」


熱血さんは、私に向かってダイブしてきました。


「気持ち悪いデース!!」


「Σぐふっ!!」


もちろん、蹴り返しました。


「ふ、富士子すわんっ……ヘルプミーっ……!!;」


「えー、めんどくさい」


ナルシーさんは階段に座り込みました。


「トロちゃん、富士子に高級ステーキ奢ってくれたら、通してあげてもいいわよ」


そんなお金ないよ……。


「ミー、ノーマネー」


「相変わらず貧乏ねぇ~。ま、予想してたけど。じゃあ、その件はカスに頼むことにするわ」


ラッキー!


「代わりに、ちょっと富士子の話聞いてよ。トロちゃんってば、最近つき合い悪いんだから、富士子溜まってんのよ」


うわ、それは長くなりそう……;


反対側の階段から上がるか。


「ソーリー! ミー、急イデマスノデ~!」


「あ!! ちょっとトロちゃん!!」


私は廊下を駆け、もう一つの階段へと向かいました。




「……やっぱり捕まえればよかったわね。あんたがちゃんと働かないからよ! この変態坊主!!」


バシッ!


「ぅおぉぉぉぉ……快感だぁ……俺っち幸せぇ……♪」



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