そして、甦る―(16/34)


「──エリザベスさん!?!?」


「あら、よく憶えていたわね、下僕その1」


そりゃ憶えていますよ!!

グレートバリアリーフ・エンジェル・エリザベス……その名はこの学校の黒歴史に刻まれています!!

っていうか何故あなたがここに!?

しかもお兄様って!?


絵里えり!? ここには来るなと言っただろ!」


「だって! お兄様がこの学校を潰すだなんておっしゃるから!」


ま、まさかこの赤毛……エリザベスさんのお兄さん!?!?

マジで!?

顔のパーツが全然違いますよ!?

お兄さん整形した!?


「この学校はお前をかどわかした挙げ句、邪魔になった途端、牢屋送りにしたんだぞ! そんな身勝手な学校許せるか!」


「違いますわ! それは誤解です! この学校に入学したのはアタシの意思ですし、学校から追い出されたのは、アタシが鳥インフルエンザに感染しちゃったからなんです!」


「はっ……!?」


え?

鳥インフルエンザ……?


「今ダーリン、あの時はごめんなさい。アタシ、鳥インフルエンザに感染しちゃったせいで、頭がおかしくなっていたの」


「そ、そうなのか……!?」


鳥インフルエンザって人間にも感染するの!?

っていうかいつから症状が……!?


「アタシ……その辺で捕まえたカラスをペットにしてたから……」


そういえばいた!

いたよカラス!

マッケンさんがやっつけたあれですよね!

っていうかマッケンさんは感染しなかったのか!?

ま、感染してもマッケンさんだから大丈夫か!


「でも、これだけは信じて! アタシ、ダーリンを愛していたのは本当だから!!」


「できれば信じたくないんだが……;;」


「どうして!? 嫌よ信じて!!」


本当に感染のせいだったのだろうか……。


「あぁ? なんだテメェ。俺の可愛い妹の気持ちを投げやりにするってのか?」


あれ?

この人、まさか……シスコン!?


「投げやりにはしてねぇけど……まあ、いらねぇな……」


「!!」


ちょ、ちょっとカスさん!

ここは嘘でも「ありがたくいただきます!」くらい言わないと!

シスコンは怒らせると怖いですよ!


「…………。はは、ははは……」


ほらね!


「そうかそうか……。よし、決めた……。俺は、俺達のたまり場を潰したこの学校と、絵里を泣かせたお前を許さねぇ!!」


「!」


エリザベスさん泣いてませんよ!


「お兄様!! ダーリンは悪くありませんわ!!」


「お前は下がっとけ、絵里。怪我するぞ」


「お兄様っ!!」


ダメだ、完全に頭に血がのぼってる。


「今田くん! 逃げるんだ!」


「な、なんでこうなんだよ!!」


あなたがKYだからですよ!


「逃がすか!」


エリザベスさんのお兄さんは、懐から鋭利な刃物を取り出すと、あろうことかそれをカスさんに向かって投げつけました。


「!」


「危ない!」


私は、ボケッと突っ立っていたカスさんに飛びつきました。

うまく避けられたと思ったのですが、反応が少し遅かったようで、ナイフが自分の腕にかすってしまいました。


「……?」


ピリッと腕に痛みが走った時、私は何故か、痛みが気にならないほどの既視感に襲われました。


……この感じ……どこかで……。


……なんだろ……黒い……。


……目の前が……黒い……。


……息が……苦しい……。


……空気が……冷たい……。


……それなのに……手は温かい……。


……何……この感覚……。






「Σお、おい……お前っ……血が……!」


「え……?」


わ、意外と出血してる。


「あ、あぁ……ちょっとかすっただけですよ」


私は平静を装い、腕を押さえて立ち上がります。


するとその時、どうしたことか、カスさんが吐き気を催したかのように口元を手で押さえました。


「……!? 大丈夫ですか……!?」


タックルが強すぎたのか……!?


「な、なんでもねぇっ……」


えぇっ、なんでもなく見えないのですが……。


とりあえず……すみません。



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