そして、甦る―(10/34)
「よ、よかった……」
もぉ、心臓に悪いなぁ……。
「貴様もすぐに、我の前に平伏すこととなる。我が愛馬・
ブロンブロンッ!
「!!」
馬じゃなくてバイクだけど、ひかれたら怪我どころじゃない!
「地獄へ落ちろぉぉぉ!!!!!!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
襲いかかってきたバイクを、私は寸でのところで避けました。
無駄に広い廊下でよかった……。
「何!? 我の直進撃を避けるとは!」
直進だから避けられたんだけど……。
「貴様……もしや、死兆星を見たか」
「!」
そ、その問いは……!
イエスと答えれば、ラオウが黒王号から降りてくる……!
「え、えっと……;;」
ど、どうしよう……あのラオウモドキさん、それほど強そうには見えないけど……地に降り立った瞬間、鬼になったりして;;
軍のリーダーなら尚さらだ……;;
「見たか?」
「…………」
「見たか?」
「…………」
「見たか?」
「…………」
「見たか?」
「…………」
「見たということで」
「Σえっ!!」
そ、そんな……!!;;
「よかろう、我が直々に相手をしてやる」
ラオウモドキさんはバイクから降りました。
身長たかっ!!
2メートル以上ある!!
本物と同じくらいある!!
でもなんかフラフラしてる!!
「かかってくるがよい」
「くっ……」
怖いけど……ここは先手必勝!!
「殺人蹴りぃ!!!」
「Σぐはぁっ!!!!!」
Σ弱っ!?
なんで避けないの!?
「な、なかなかやるな……。よし、我も本気になるとしよう……」
えっ、まだ本気じゃなかったの!?
「我に逆らったこと……後悔するがいい!!」
ひぃ……!!
「よいしょ、よいしょ」
ポイッポイッ。
「え」
ブーツを脱いだ!?
っていうかちっさ!!
ブーツ脱いだら私と変わらないですよ身長!
どんだけ高いもの履いてたんですか!
「この開放感がたまらんな」
ラオウはそんなこと言わないよ!
「よし、良い感じだ。これならイケる! 喰らえ!! 北斗剛掌波!!」
「Σげぴっ!!」
私は、彼から放たれた気に吹き飛ばされました。
そ、そんなっ……あんなんなのに……普通に強い……!!
「くっ……すごい風圧……!」
「闘気と言え」
どっちでもいいよっ!
「やはり女は弱いな。腕ならしにもならん」
「っ……」
女は弱い……?
違う……!
女の子には、女の子にしか持てない力がある!
女の子だけの力がある!
だから私は……!
「女だからって、バカにしないでください!! 私にも闘う力はありますっ!!」
「ほぅ……ならばその力とやらを示してみせよ」
「言われなくとも……!」
私は敵に向かって駆け出しました。
自分が女の子だからこそ抱いた純粋な気持ち……。
その気持ちがあったからこそ宿った力……。
今こそ……解放しますっ!!
「――行きます!! 桃子神拳・超秘奥義!! 恋する乙女のキュンキュンフラァァ~ッシュ!!!!!!!!」
「そ、それはっ!!」
華と散りなさいっ!!!
「もぉもももももももももももももももももももももももももももももももももももももももももも!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ぐぅわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私は無数の突きを放ち、
「これで……ぶっ飛べ!!!!!」
「ぐはぁっ!!!!」
最後に、渾身の蹴りを打ち込みました。
「Σうわっ!?」
「げふっ!!」
吹き飛んだラオウモドキさんは、関先生を踏みつけていたお仲間二人を巻き込んで壁に激突しました。
「い、いてぇっ!!!!!! いてぇよ母ちゃあぁぁぁん!!!!!!」
「や、やった……!」
私にも……私にもやれた! やれましたよ先生!
「うっ……げほっげほっ……。ちくしょう……! なんなんだっ……今の桃子神拳ってのは……!」
「桃子神拳は、私のオリジナル神拳ですが、女の子なら誰でも使えます」
「誰でも……!?」
「はい。北斗神拳の真髄は、極限の怒りと哀しみにありますが、桃子神拳は、純粋な乙女の恋心にあります!!」
「純粋な……乙女の恋心……!?」
そう……この力は、私が会長に出逢った頃に授かった力……!!
「つまり、誰かを想う強さが形となり、力となった神拳です!!」
「!!」
会長を守りたい……会長の支えになりたい……。
その想いが強かったから、募り、宿った力……。
──っていうのは、ちょっと痛い設定だったかな……;;
「なるほど……そういうことか……」
ラオウモドキさんは、いやに納得した表情で小さく頷きました。
「北斗神拳も……桃子神拳も……最終的には〝愛〟に到達する……。愛に繋がる道は……一つではなかったのだな……」
なんか、大袈裟なこと言ってる……;;
「最期に……愛の真実が見えた気がする……」
気のせいだと思います……;;
「少女よ……よき闘いであった……」
それほどでも……;;
「我が生涯に一片の悔いなし!! さらばだっ……──あべしっ!!」
死んだ!?!?
今ので死んじゃったの!?
えっ、嘘っ!!
そこまでする気はなかったのに!!
私捕まっちゃうじゃん!!!!;;
「チッ、下っ端のくせにでしゃばった結果がこれかよ!」
「邪魔だボケェ!!」
「Σひでぶっ!!」
あ、生きてた。
……っていうか、やっぱりリーダーじゃなかったんだ。
途中から違うのかなって思ってたんだよね;;
「──って、そんなことより!」
他の人の注意がラオウモドキさんに向いているうちに、先生達を助けないと……!
「先生! 大丈夫ですか!?」
私は慌てて関先生に駆け寄りました。
「おぉ……娘っ子。先ほどの技、あっぱれじゃったぞ」
「あ……いえ……それほどでも……//」
久しぶりに褒められちゃった//
「ワシはお主を見くびっていたようじゃ。すまなかったな」
「そ、そんなことはいいんです! 早くここから逃げてください!」
「そうしたいのはやまやまなんじゃが……腰がいとーていとーて動けんのじゃ;;」
だからやめておけばよかったのに……。
「では、私がお運びします!」
「ワシはこれでも教師の立場。先に生徒を運ぶのじゃ」
「で、でも……!」
「迷うだけ時間の無駄じゃ! 世の中には優先順位というものがある! 早うせい!」
「は、はいっ!」
確かに、立場上の問題はあるもんね……。
私がテキパキ動いて他の人達を避難させれば、先生の身も早く避難させられる……!
「──おいテメェ、何しようとしてんだよ」
「!!」
突然、そう後ろから声をかけられて振り返ると、そこには、先ほどまで見受けられなかった人の顔がありました。
よくみると、玄関から更に5、6人侵入してきています。
……う、嘘っ……敵の増援っ……!?
「おめぇら来んのが遅ぇんだよ」
「途中で東高の奴らに会ってな。肩慣らしにしてやった」
この人達……もしかして高校生なのかな……?
「──っておい、なんだよ、この死にくれどもは。楽しみは残しとけっつっただろ」
「いや、ガキはまだ上にもいるって」
あなた達もガキじゃん!
「そんじゃ、俺達は上に行くか」
「ダ、ダメですっ!!」
私は階段の前に立ちはだかりました。
「あぁ? なんだテメェ」
「わ、私は、この学校の正生徒会副会長ですっ!」
ど、どどどどうしよう!!;
こんな数、一度に相手できないよ!!
桃子神拳も体力的に一日一回しか使えないし!!
「生徒会?」
「生徒会とかウザそう」
「お前、ヘンテコ人間か?」
「わ、私は……ヘンテコ人間ではありませんが……」
普通の人間がここにいたら悪いかっ!
「へー、そんな奴もいるんだな」
「いわゆる物好きってか」
「お嬢ちゃんいい子でちゅね~」
なんか馬鹿にされてる!!
ちょっと背が低いからって子供扱いするな!!
「と、ともかく! 部外者は今すぐここから出ていってください!!」
「部外者~?」
「部外者はテメェらだろうが」
「俺達のよりどころを潰しやがってよぉ!」
ゆっくりと近づいてくる……!
と、とりあえず、捕まらないようにしないと!
「殺人パンチッ!!」
私は決死の覚悟で殴りかかりました。
しかし……。
「おっと、危ねぇなぁ」
「!」
いとも簡単に避けられ、手首を掴まれてしまいました。
「意外とおっかねぇことしてくれるじゃねぇか」
「は、放してくださいっ!!」
ヤ、ヤバい!
ヤバい気がするこの状況!!;;
「自分から喧嘩売っといて何言ってんだよ」
「い、痛っ……!」
放せ放せ放せぇ!!
「暴れんなよ。おとなしくすれば、そこまで痛い目には遭わせねぇから」
もう十分痛いですから!
「放してくださいここから出ていってくださいっ!!」
「うるせぇな……少し黙ってろ!」
「!」
相手が腕を大きく掲げ、こぶしを握りしめました。
やだっ……殴られるっ……!!
恐怖に首をすぼめて目をつむった――その時。
『やめるんだっ!!』
「!」
私に向かって振り下ろされかけたその手に、誰かが掴みかかりました。
「あぁ!? なんだテメェ!」
それは誰かというと……。
「Σか、会長!?!?」
そう!
なんと、私の大好きな会長だったのです!!
「大丈夫かい、桃子くんっ!」
「は、はいっ」
こんな状況のなか駆けつけてくださるなんて、もうホントに名前通りの王子様//!!
「無視してんじゃねぇよ!!」
「Σわっ」
なっ!!
会長を突き飛ばすなんて、無礼者!!
「会長っ! 大丈夫ですか!?」
敵から解放された私は、すぐさま会長に駆け寄りました。
「だ、大丈夫だよ。……よかった、君が怪我をする前に来ることができて」
はぅ//!!
そんなこと言われたら胸キュンして鼻血噴出の危機に……//!!
「ご、ごめんなさいっ……私は無事ですが……他の生徒が……!」
私は、H☆Hレンジャーの人達と関先生に目を向けました。
「おーい、片割れ坊主~。早くワシを助けんか~」
「関先生!」
ん? 片割れ坊主って……どういう意味だろ……。
「オイオイオイお前ら、目の前の俺達が見えてねぇのか?」
「他人の心配してる余裕あんのかよ」
「会長とかいうお前も、どーせ普通の人間なんだろ? こんな奴ら助けて、なんのためになんだよ」
怖い顔の人達は、ゆっくりとこちらに近づいてきます。
「僕は、彼らの力になるためにこの学校の生徒会長を務めているんです。決して、自分の利益を求めているわけではありません。彼らを助けることは、僕の責務です」
いつもなら物怖じしてもおかしくないのに、今日の会長は違う……。
本気で怒ってるんだ……。
「こういう頭のおかしい奴らは、おとなしく死んどけばいいんだよ」
「おかしいのは、狂気に満ちたあなた方の行動です」
「俺達は復讐しに来てんだ。悪いのはお前らのほうなんだよ!」
Σパリーンッ!
……かろうじて残っていた最後の窓ガラスが、その人の手によって割られました。
「生徒達には直接関係がありません。関係がないのに巻き込まないでください」
「なら責任者出してみろよ。出せるのか? さっき逃げてった教師どもの中に紛れ込んでたんじゃねぇのかよ」
「責任者……」
この人達が言う学校の責任者って……校長先生?
それとも理事長?
学校を建てた人が憎いんだよね……?
「ま、どのみち一人じゃ物足りねぇけどな」
「この学校で世話になってる奴らなら、一緒に罪を償えって話だ」
「あー、マジ腹立つ」
この人達……多分……もう何言っても退いてくれないよ……。
「つーわけで、お前らも目障りだから」
「「!」」
その言葉が合図だったかのように、彼らは一斉に襲いかかってきました。
どうしよどうしよう……!!
こんな大勢、太刀打ちできない……!!
「桃子くん! 君は逃げるんだ!」
「い、嫌です!!」
いま逃げたら、私がここにきた意味がなくなる……!
会長を置いて逃げるなんてできない! したくないっ!
私は会長のそばを離れ、決死の覚悟で彼らに向かって走り出しました。
──その刹那──。
「Σぐあっ!!」
私の横を黒い影が通り過ぎたかと思うと、彼らの先頭を切っていた人が吹き飛び、その後ろにいた人達もボーリングのピンのように弾かれました。
『──あーすみません足が滑っちゃいましたーテヘッ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます