そして、甦る―(11/34)


※~[凛・トロピカル]視点~※



なんでだろう……。


今日の私は何かがおかしい……。


あの人達を見た時から、心臓の鼓動が早くなって……大きくなって……。


気を抜けば、手や足が震え出す……。


今まで感じたことのない、変な威圧感……。


自分でも気づかないうちに、恐怖を抱いている……。


あんな子供っぽい奴ら、いつもなら平気なのに……。


平気を装っていられるのに……。


今は怖くて……つらい……。


それなのに、体は正反対の動きをみせる……。


怖いのなら逃げればいいのに……何故かそれができない……。


理性を抑えようとする本能と、本能を抑えようとする理性……。


チカチカと点滅する危険信号を無視して、踏み切りを渡ろうとする私……。


何かを助けたい、誰かを助けたい……助けなければならない……。


そんな衝動が渦巻き、脳裏の奥のむずがゆい何かが、私を駆り立てている……。


もしかして……この感覚は……。


記憶が呼び覚まされる前兆……?


――そう思った。


きっと私は、本当の自分を取り戻すための刺激を求めているんだ。


本当の私……。


誰かを助けようとして……恐怖心を隠して……危険に飛び込むのが……本当の私……?


怖がって逃げる私じゃ……ダメなの……?


自分さえよければいいと考える私じゃ……ダメなの……?


間違ってるの……?


本当の私じゃ、ないの……?


どうして……。


記憶は失っても……私は私なのに……どうして違った考え方を持っていたの……?


どうして……。








階段を駆け下りた私は、タイミングを見計らって一階の廊下に飛び出しました。

そして、奴らの一人におじいちゃん直伝の華麗なる飛び蹴りを見舞ってやりました。


「──あーすみません足が滑っちゃいましたーテヘッ」


床がガラスの破片でジャリジャリだ。

危うく着地失敗するところだった。


「り、凛・トロピカルさん!?」


「どうしてここに!? 来ちゃダメだって言ったじゃないか!」


「いやー、やっぱりおじいちゃんが心配で心配でー」


「凛! ジジイはここにおるぞ~!」


「なんだ、生きてたのか」


「な、なんだとはなんじゃ!」


あれだけ元気なら、まだほっといても大丈夫ですね。

どうせ腰が痛くて動けないだけでしょう。

それよりも、あの赤・青・緑・黄・ピンクの戦隊もののような服を着ている人達のほうが心配です。


「……テメェ……よくもやりやがったなっ!!」


うわ、来た来た。

組み手はやったことがありますが、こういう輩の喧嘩はみたこともないですからね……ちょっと動きを読むのがめんどくさそう……。


──と、思ったのですが。


「Σいてっ!!」


単調に殴る蹴るを繰り返すだけなので、意外と隙だらけでした。助かったー。


「お二人さん、今のうちにあそこで倒れている人達を安全なところへ避難させてください」


「だ、だけど……!」


「片割れ坊主! 凛なら心配無用じゃ! 早うこっちへ来い!」


あのジジイ、そんなことを言ったら自分に敵の目が向くとは思わないのか?


っていうか、片割れ坊主ってどんな呼び名だ。


「うるせぇぞジジイ!!」


「Σヒャ~ッ!!!!」


やっぱり。


「世話の焼けるご老人だ」


私は、おじいちゃんに踵落としを見舞おうとしていた奴に向かって、お仲間の一人を背負い投げでぶん投げてやりました。


「Σグハッ!!」


「おぉ! ナイスストライクじゃ!」


感心してる場合か。


「会長さん副会長さん、お願いしましたから」


私はそれだけ言うと、敵を薙ぎ倒しにかかりました。


……さてさて、無事に片づけられるのだろうか。


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