そして、甦る―(2/34)


──その後、気を失った俺は、約3週間後に病院のベッドで目覚めた。

聞くと、騒ぎを聞きつけた男女二人組が助けてくれたそうだ。

俺はすぐに、あの女の子の安否を聞き出した。


──少女は、退院していた。


つまり、生きていたのだ。

正直驚いた。

あんな怪我を負ったんだ。

絶対に死んだと思っていた。


しかし、安堵したのも束の間、問題はそれからだった。


顔を合わせづらい気持ちはあったが、俺は、あの女の子にもう一度会って、お礼と謝罪がしたかった。

だが、医師達は彼女の名前も住所も何も教えてくれなかった。

ただただ無事に退院したとだけ告げ、それ以上は何も語ってくれなかった。


俺は疑った。


やはり、あの子は無事じゃないのではないかと。

既に亡くなってしまったのではないかと。


だが、確かめるスベはない。

大人達に聞いたところで答えてはくれない。

たとえ答えてくれたところで信用はできない。


──だから決心した。

自分自身の力で、真実を探ろうと。

俺は毎日のリハビリに徹し、一人じゃ歩くこともできないズタボロの体を一日でも早く治そうと努力した。


そして、怪我がおおよそ完治した小学6年生の時。

少し怖かったが、あの路地裏の近所を一件一件訪問してまわり、あの子を捜した。

春ヶ崎小学校の生徒であることもわかっていたため、実際に行って、門の前で登下校時の生徒一人一人を見て調べたりもした。


しかし、彼女らしき子は見つからず、時間だけが無情に過ぎていった。


よく考えたら、彼女は、当時は自分と同じ小学生であったが、何年生かまでは不明であったため、今もまだ小学生なのか、既に中学生になっているのかがわからない。

それに、引っ越して遠くへ行ってしまっている可能性もある。


俺は何度も挫けそうになり、諦めそうになった。


だが、決して諦めなかった。

諦めるわけにはいかなかった。

絶対にもう一度会って、謝りたい。

本当に生きているかどうかはわからないが、俺には、そう信じて捜し続けることしかできなかった。


──そんなある日。


中学3年生になって、親から〝いつまでもバカなことをやっているんじゃない〟とか言われていたなか、俺はとある幼なじみから衝撃的な情報を得た。


それは、来年の春に開校となる新設の高校に、あの少女が入学するかもしれないという内容だった。

なんでも、高校の創設者であるその幼なじみの母親が、送られてきた入学願書の中から少女らしき人物を見つけたらしい。


アイツの母親が何故あの少女を見抜けたのかは未だに不明だが、希望は持てた。

アイツにだけは相談しておいてよかったと思った。


俺は藁にもすがる思いで直ぐさま入学願書を提出し、晴れてその高校──H☆H高校の生徒となった。


――そして、今にいたる。


だが、何故か詳しい情報は断固として教えてもらえず、俺は自力で少女を探す羽目となった。


ホントに、どうして教えてくれないんだ。

俺をじらして楽しんでいるのだろうか。

そうだとしたらブッ殺す。

こっちは精神削って死に物狂いで捜してるっていうのに、いくらなんでも無責任すぎる。

はらわたが煮えくり返るぜ。


──ま、結果的に俺が捜し出せばいいだけの話なんだけどよ。






「……とか簡単な話だったら苦労しねぇんだよっ!」


だって見つからないんですもの。


それっぽいのだけを当たるんじゃなくて、この学校の生徒を一から全員手当たり次第に捜し始めたってのに、見つからないんですもの。


もうどうしろっていうのよ。


ボクちゃん頭が爆発しちゃうわ。


ウフフフフフ。






「──って!! 笑ってる場合か!!」

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