そして、甦る―(3/34)
※~[凛・トロピカル]視点~※
いや~、なんかもう、1週間も一緒にいると愛着が湧いてくるというか、本当の妹みたいに思えてきて可愛いものですね。
もうこのまま姉妹になっちゃっても全然OKかも~♪
アハハハハハ☆
「──って!! 笑ってる場合か!!」
「……!?」
あ、いきなり大声出したら守護神さんが部屋の隅に逃げてった。
「ソーリーソーリー。なんでもないですよ~」
いやあるんですけどね。
あなたのせいなんですけどね。
「…………」
そんな疑いの目で睨みつけないでくださいよ。
心読まれちゃったかな?
「疑心暗鬼でもいいですから、とにかくさっさと着替えてください」
今日は登校日なんですよ。
遅刻はできません。
ナルシーさんに怒られますから。
「……ねむねむ……」
「ダメ」
私だってまだ寝ていたいですよ!
でも行かなきゃダメです!
「……チッ」
あの舌打ちグセは治す必要があるな。
ということで、私達は着替えを済ませ、朝食をとりに食堂へ向かいました。
ホントにもう、1週間ずっと一緒にいます。
私が校舎の掃除をしている時も、マッケンさんと一緒にケタケタ笑いながら居座っています。
不気味です。怖いです。
そんな笑顔見たくありません。
手伝うつもりがないのならどっか行ってほしいです。
「──トロちゃんオッハ~」
あ、ナルシーさんだ。
「オッハ~デース」
ナルシーさんには素で喋ってもあんまりツッコんでこないので、ホントは普通に話したいんですが、どこで誰が聞いているかわかりませんからね。
キャラ作りはちゃんとしておかないと☆
「……フフフ、おはようございます……」
ほら、こういう背後霊がいますから。
「あ、マッケンオッハ~」
「おはようございます……」
「マッケンサンオッハ~デース。デ、イツカライタンデスカ~?」
「あなた方が部屋を出た時から……」
怖いわ!
また女子寮に侵入してるし!
「カミカミさんは気づかれていましたよ……」
「……フフ……」
じゃあ教えてくださいよ。
二人して私を陥れていたんですか。
ああこらケタケタ笑うな。
あ、そういえば、マッケンさんはいつからか守護神さんを〝カミカミさん〟と呼んでいます。
そのせいか、守護神さんはマッケンさんを〝モグモグ〟と呼んでいます。
はじめの頃はモグモグの意味がわからず、守護神さんが〝モグモグが飛んだ〟とか〝モグモグが跳ねた〟とか言った時には、彼女の頭がおかしくなったのかと思いました。
ま、モグモグの意味を理解したところで、飛んだり跳ねたりしているマッケンさんの行動までは理解できませんでしたがね。
「その子、まだトロちゃんにくっついてるのね。いい加減消えなさいよ」
「……黙れ……」
マッケンさんとは少し仲良くなりましたが、ナルシーさんとは依然として睨み合いが続いています。
お風呂上がりの牛乳は仲良く飲んでいるんですけどね。
「トロちゃんの隣は富士子の場所よ!」
「……シッシッ……」
ちょっ、くっつかないでくださいよ二人とも。
暑いですから。
「うらやましいですね……僕もハーレムというものを味わってみたいです……」
マッケンさんって隠れムッツリ?
「ということで……僕もくっついていいですか……?」
「アカンワ!」
するほうでもいいんかい!
「──じゃあ、私が代わりに抱き着いてあ・げ・る♪」
ギュッ。
「!?」
なんか大きいのが来たぞ!!
「──ヒィィィィィィィィィィィィィッ!!!!」
∑えっ!?
守護神さんが変な声上げて逃げてった!?
ものすごい勢いでどっか行っちゃったよ!?
「おはようございます……保健の先生……」
「おはよう天才くん♪ いい加減名前で呼んでちょうだいね」
「嫌です……」
ガン飛ばすマッケンさんも新鮮だな。
「ようやくいなくなったわね、あの貧乏神」
ナルシーさんは勝ち誇ったように微笑んでいます。
いやマジでどうしたんだろ……。
めちゃくちゃビックリしたんですけど;;
「あら、あの子がどうかしたの?」
百合花先生は私の頭をなでなでしています。
……ちょっと、離れてくださいよ。
「最近、ずっとトロちゃんにつきまとってたのよ! ホントうざったい!」
「つきまとってた?」
「そうよ! お姉ちゃんお姉ちゃんとか言って!」
「!」
あ、離れた。
「そういえば……結局のところどうなんですか、トロさん……」
「アァ、聞クノ忘レテマシタ~」
スッカリポッカリ忘れてたや。ハハハ。
「もう何やってんのよ! 相変わらずトロトロのノロマなんだから!」
ほっといてください。
「…………」
あれ、珍しく先生が静かだ。
「先生、ドーカシマシタカ~?」
「え? えぇ……なんでもないわ。ごめんなさいね、あの子が迷惑かけたみたいで」
「イエイエ、大丈夫デ~ス」
実際はかなりワガママで扱いに困りましたけどね。
「後でちゃ~んとお仕置きしておくから、許してあげてね♪」
「ハ、ハイ……」
ちょっと可哀想だな……。
「……あ、そういえば……」
ん?
マッケンさん、おもむろに何かを懐から取り出し、百合花先生に手渡しました。
あれは……小瓶?
なんかグロテスクな色してるんですけど。
「あら、何かしら?」
「先日ご注文いただいた……お仕置きの……美容グッズです……」
ああ、そういえばマッケンさんはそうでしたね。
「まあ、ちゃんと作ってくれたのね、嬉しいわ♪ どういうものなの?」
「肌が15歳若返る化粧水です……」
すごっ!
マッケンさんのお手製だから効果テキメンですよきっと!
百合花先生はおそらく20代後半くらいだろうから、15歳若くなったら私達よりもピッチピチになりますよ!
「あら、いいわね♪ これで私も学生に戻っちゃおうかしら、ふふ♪」
いや、やめてください!
そんなアダルティな学生ダメです!
犯罪です!
「ねぇ! そんなことはどうでもいいから、早くご飯食べに行きましょうよ! 富士子お腹空いた!」
あ、そういえば、朝食をとりに行く途中でしたね。
「食べすぎちゃダメよ、富士子ちゃん」
「指図するな!」
「あら怖い♪」
空腹時のナルシーさんは特に機嫌が悪いですからね。
そして行動が素早い。
ほら、もう見えなくなっちゃった。
食堂に着くと、ナルシーさんは既に朝食を取り揃えて着席していました。
よく見ると、私とマッケンさん以外は全員揃っています。
珍しいというか、久しぶりです。
制服姿がまぶしいぜ。
「ちょっと聞いてよトロちゃん! 今日の朝ごはんはピーラーのお手製じゃないんですって!!」
「ヘー。ソレハ残念デシタネ~」
「ここは食材が不足してんだよ。僕の腕が100%発揮できねぇ」
「富士子はそれでもいいわ!!」
「僕はよくねぇんだよ!!」
朝からうるさいですね、ホント。
「……おいトロ、あのひっつき虫はどうしたんだよ」
「サヨナラ、シマシタ」
相変わらず機嫌が悪そうなカスさんがこちらを睨んできます。
「さよなら?」
「ハイ。突然、ドコカニ行ッテシマイマシタ~」
「へー……」
まあ、また戻ってくるかもしれませんが。
「富士子は嬉しいわよ、あの疫病神がいなくなって」
貧乏神じゃなかったっけ?
「僕は寂しいです……カミカミがあるから……モグモグがあったのに……」
意味わかんねぇよ。
……ま、何はともあれ、私は久しぶりに解放感を取り戻しました。
ちょっとさみしい気もしますが、いつもの状態に戻っただけですし、別に気にすることじゃないですよね。
情報収集は十分にできませんでしたが。
「まあ、とりあえず合掌しましょ。大地の恵みに感謝を! 誠意を込めて、いただきます!!♪」
「「「「「いただきます」」」」」
そういえば、ここのところずっとナルシーさんが合掌をかけています。
リーダーシップのあったカスさんは、あの土下座騒動以来、様子がおかしいままですし。
今だって、他のクラスの生徒をチラチラ見ています。
なんか、最近また変な行動を起こしているようです。
といっても、以前のように暴れ回ったりしているわけではなく、写真を見せて聞き込み調査のようなことをしているんだとか。
まったく、何がしたいんだか。
おとなしいのはいいことかもしれませんが、傍観者の私からしたら、ちょっとつまらないですね。
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