核心、現る―(17/19)
※~[カリオス今田]視点~※
「……また……外れちゃったね」
「…………」
「今田くん、ちょっと安心してるでしょ」
「し、してねぇよっ!!」
安心なんかしてられるかよ!!
あいつらの前で土下座までしたっつーのに!!
「でも、ホッとしたような顔してるよ?」
「そ、そりゃ……」
アイツが男性恐怖症になった原因が、俺じゃなかったわけだし……。
「加美くんに嫌な記憶を思い出させちゃったけど……よかった、のかな。彼女を傷つけたのが君じゃなくて」
「知るかよ。──つーかお前、アイツとどこで出会ったんだよ」
「え? あ、あぁ……加美くんとはね……」
そういえば聞いたことがなかったな。
友達皆無の玉野郎が、どうやって仲間を集めたのか。
「教護院で会ったんだよ」
「教護院……!?」
「うん。今でいう児童自立支援施設だよ」
ああそうだそれそれ。
いちいち古い言い方すんなよな。
「そういうところには、この学校に入学可能な人がいるんじゃないかと思って、中学3年生の時に見学しに行ったことがあるんだ」
よく許可が出たな。
金にものを言わせたか。
「その時に、出会った。閑散とした部屋の隅で、独りうずくまっている彼女を」
「…………」
「僕は、窓ガラス越しに見ただけだったんだけど、一目で気になった。──それで、施設の方に彼女のことを詳しく聞いてみたんだ。そしたら、なんて言ったと思う?」
いや、もったいぶんなよ。
「彼女は、道端で倒れていたところを巡回中の警察官に保護されたらしいんだけど、眼が合った人を気絶させる気味の悪い力を持っているから仕方なく隔離している……だってさ」
「!」
「おかしいと思わない? 施設側は、無闇に近づくと殺されるかもしれないからと言って、何の対処もしていなかったんだよ」
「な、なんだよそれ……!? 放置して、餓死するのを待ってたみてぇじゃねぇか!!」
「食事は定期的に出していたらしいけど……ほとんど食べていなかったみたい。小柄なのは、そのせいかもね」
信じられねぇ……!!
精神科に診せるとか、何かやりようはあっただろうに……!!
「僕は思ったんだ。こんなところにいても、彼女は幸せになれない……ただただ無意味に生きているだけだと」
「…………」
そりゃ、死ぬのを待ってるだけの人生だからな。
「だから決意したんだ、あの場所から引き取ることを。──もちろん、中学生の僕が親権者になることはできないし、そんなことは誰も認めてくれないから、最終的には親に頼み込んだんだけど……」
物好きっつーか世話好きっつーか、やっぱ筋金入りのお節介焼きだな、お前は。
「よくお前に拾われる気になったな、アイツ」
「最初はダメだったよ。僕も、何度も気絶させられた。──でも、毎日毎日諦めずに面会しに行っていたら、いつしか、会話をしてくれるまでになったんだ」
へぇー……。
根気詰めてやってみるもんだな。
「彼女はただ、心を閉ざしていただけなんだ。努力すれば、いずれは社会に出られるようになる。僕がそうさせる」
そんな先の長そうなことよくやるぜ。
ま、だから正生徒会とか面倒なもん立ち上げたりするんだろうけどよ。
「彼女に出会えてよかった。ここに連れてきて正解だったよ」
「アイツは喜んでるのか?」
「んー……そういえば、聞いたことなかったなぁ;;」
「なんじゃそりゃ……結局お前の自己満足じゃねぇか」
「で、でも、お姉さんにも会えたんだから……」
「いや、アイツらが姉妹であることはまだ確定してねぇし」
「あ、そっか……;;」
マヌケめ。
「……やっぱり、違うのかな?」
「さあな。世の中には、親族でなくとも顔が似てるやつらはいるし。トロははっきりしねぇ言い方してるけど、それ以前にアイツ、自分は記憶喪失だとか言ってたし」
「えっ!? そうなの!?」
なんだ、知らなかったのか。
たまに二人で喋ったりしてるくせによ。
「ま、ホントかどうかは知らねぇけどな。ヘンテコ野郎だし」
「君のほうが十分ヘンテコだよ」
「うるせぇ!!」
俺のは作りもんだっ!
「つーわけで、真相は不明だろ。ま、どのみち俺には関係ねぇけどな」
「ま、まだ探すつもりなのかい?」
「当ったりめぇだ!! 見つけ出すまで探す!! 今度は男も女も関係なく、ここの生徒全員をしらみ潰しに調べ直してやる!!」
「そ、そう……」
諦めてたまるか……!
絶対に見つけ出してやる……!
それが俺のやらなければならないことだ!
今度こそ……確実に……!!
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