核心、現る―(12/19)


※~[凛・トロピカル]視点~※



「いい天気だなぁ~」


「そうですね……」


いや暑いんですけど。

マッケンさん、日向ぼっこなんかやめて、早く校舎内の掃除をしに行きましょうよ。

ピーラーさんなんて放っておけばいいじゃないですか。


∑ドカァァァーンッッ!!!!


「「「!?」」」


「──トロちゃん助けてぇ!!!!」


「∑ワッ!!!?」


ナ、ナルシーさん!?

どうしたんですかそんなに慌てて!?


「暑苦しい変態が追いかけて来るの!! 早く助けて!!」


暑苦しい変態!?

──っていったらあの人しか……。


「富~士子すわぁ~んっ!!!!!!」


やっぱりな。


「ちょっとバカハル!! いい加減になさい!!」


あ、会計のエラお嬢様も一緒だ。


「書記なら報告書くらい自分で書きなさい!!」


「俺っちはそんな紙切れに付き合ってる暇はねぇぜい!!!!」


熱血さんってなんで書記なんだろ。

まったくそんな感じじゃないのに。

余りものかな。


「こっちに来ないでっ!!」


「そんなことを言っちゃいけねぇぜ富士子すわん!! 俺っちと一緒にいい汗かいてナイスバディになりましょう!!!!」


「富士子は今のままでもプリプリのナイスバディよ!!」


「違う!! それはただのデブり過ぎだ!!」


意外と言いますね、熱血さん。


「──と、扉がない!?!?」


あ、ピーチさんも来た。

守護神様も連れてる。


「も、桃子!? あなた、何故こんなところに……!?」


「えっ!? 世麗奈こそ何やってるの!?」


あ、一緒に来たわけじゃないんだ。


「わたくしは、このバカハルを追って少々……。あなたは、会長と話をしていたのではなかったのですか?」


ピーチさんが会長さんと話?

なんとも興味深い……!


「あっ、そ、その件は……なんとかうまくまとまって……//」


「まあ、よかったではありませんか」


ピーチさんが顔を赤くして、お嬢様が微笑んでいる……。

な、何があったんだ……!?


「そ、それはそうなんだけど!! それどころじゃなくて!!」


「え?」


ふむ、何かただごとではないことが起きたようだ。


「あの人がまた! 加美さんの命を狙いに来たんだよ!!」


「えぇっ!?」


あの人?

あの人って誰だ?

しかも命を狙われてるって……。


「何故!? あの者は部屋に閉じ込めていたはずでは……!?」


「わ、わかんないよ!! でも、いきなり正生徒会室に飛び込んできて、また加美さんを連れ去ろうとしたから、とりあえず立ち入り禁止で安全そうなここに逃げて来たんだけど……!」


まさか、不審者でもいるのか?

やっぱり警備が甘いな、ここは。


「それで、あの者は今どこに!?」


「正生徒会室で会長がなんとかしてくれて──」


「──見つけたぞボケェ!!!!」


「「「「!!!?」」」」


カ、カスさん!?

ピーラーさんに殺られたんじゃなかったんですか!?

まさかオバケ!?

でも足はあるぞ!!


「どうしてここに!? 会長は!?」


「あんな貧弱野郎、指一本であの世に送ってやったぜ」


「えぇっ!?!?」


相変わらず物騒な学校だなぁ。


「──勝手に殺さないでくれるかな」


あ、会長さんだ。


「か、会長っ!! ご無事だったんですね!!」


「ふふ、僕はそんな簡単に死なないよ」


「会長……//!!」


え、何この雰囲気。

ピーチさんも瞳キラキラさせちゃって。

一緒にイチャイチャシーン目撃しましたよね?


「さっさとその娘を渡せ!!」


「そんなことさせませんわ!!」


「富~士子すわぁ~ん!!♪」


「近づかないで!!」


ちょ、ナルシーさん、私にくっつかないでくださいよ。

汗べとべとですし、目の前をウロウロする熱血さんが気持ち悪いし邪魔です。

面白そうな光景が見えないじゃないですか。


「いい加減にするんだ今田くん!!」


「うるせぇ!! 触んじゃねぇ!!」


まあよくわからんが、噂通りカスさんの様子がおかしくなっている。

まるで、獲物を狙うイノシシ……スーパーでタイムセールの高級肉を奪い合う奥様方のような眼をしているぞ。


「加美さん! 逃げて!!」


「……ウィ……」


守護神さんはピーチさんのもとを離れて、ちょこちょことこちらに向かって歩いてきます。

なんか足取りがおぼつかないぞ。

ほら熱血さん、ちゃんと受け止めてあげないと……──って!!


「ナ、ナンデスカ!?」


私に抱き着いていた!?


「──助けて……お姉ちゃん…………」








……──えっ?




「……か、加美くん……? 今……なんて……?」


「──助けて……お姉ちゃん……」


「「「「「お姉ちゃん!?!?」」」」」


いやいやいやいや!!

誰が!?

誰がお姉ちゃん!?

どういう意味のお姉ちゃん!?


「カミサン、冗談ダーメダーメ」


「……お姉ちゃん……」


聞いてないし!!


「う、嘘っ……加美さんと凛・トロピカルさんが……姉妹!?」


「チ、違イマース!! 冗談デース!!」


そんなわけないじゃないですか!!


「そ、そういえば、顔がそっくりよトロちゃん!!」


「似テナイデース!!」


似てないよ!! 多分……。


「ま、まさかとは思っていましたが……!」


思ってたの!?

まさかと思っていたんですかお嬢さん!


「新事実発覚ですね……メモメモ」


メモるな!!


「皆サン落チ着クノデース!! ソンナワケナイナイ!!」


「あれ? なんか落としたわよ、トロちゃん」


「エ?」


私から離れたナルシーさんは、足元にひらりと落ちた紙切れを拾いました。

──そ、それはまさか……!!


「こ、これっ!! この貧乏神の写真よ!!」


貧乏神言うな!!


「加美くんの写真を肌身離さず持っているなんて、やっぱり……!!」


「妹想いの姉!?」


「しかも同級生ってことは双子だぜい!?」


「う、嘘でしょう!?!?」


嘘ですよっ!!

嘘だってさっきから言ってるじゃないですか!!


「おいトロ!! 正直に答えろ!!」


何をだカス!!


「そいつはお前の妹か?」


…………。


「ダカラ~、違ウトサッキカラ言ッテ……──ハッ!」


いや待てよ。

私が憶えていないというだけで、実は本当に妹なのかもしれない……。

その可能性も、ないわけでは……ない……。


「……エ、エット……アノ……;; 多分……違イマース……;」


「「「「「「「多分!?!?」」」」」」」


「ア、イヤ……確固タル自信ガ……ナイトユーカ~……;;」


蘇れ私の記憶っ!!


「ということはやっぱり姉妹!?」


「双子だぁぁぁ!!!!」


いやっ、勝手に決めないでください!!


「実は兄弟であった!! という設定はゲームやアニメの中ではよくあることで……──∑ってうわっ!!!!」


あっ!!

ピーラーさんが給水タンクの上から落ちた!!


「∑グヘッ!!!?」


そしてカスさんにクリンヒットした!!


「い、今田くん!?」


「だ、大丈夫かカス!?」


「────」


気絶してるし!!


「しっかりするんだ今田くん!!」


「死ぬんじゃぬぇカス!!」


「────」


そう思うのなら早くそこからどいたほうがいいですよピーラーさん。


「…………ウッ……!」


「えっ!?」


守護神さんまで倒れた!?


「加美!?」


「加美さん!?」


「大丈夫デスカ!?」


私は守護神さんを抱き起こしました。

息づかいが荒い……。

顔も真っ赤で皮膚も熱い……のに汗をかいていないということは……。


「熱射病……じゃなくて日射病か……」


早く日の当たらないところに連れていかないと!

あと冷やさなきゃいけないから、とりあえず保健室に!


「──よっこいしょ」


うわ、軽いなぁ。

私は守護神さんを抱き上げて走り出しました。


「ちょ、ちょっと! どこへ行きますの!?」


「まさか誘拐!?!?」


「保健室に決まってるじゃないですか!」


見てわからんのかい!

あんたらそれでも正生徒会か!

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