核心、現る―(7/19)


※~[盛利桃子]視点~※



「──と、いうことでして……」


あぁ言っちゃったよぉ……。

絶対嫌われたな……。


「ごめんなさい……盗み見なんて犯罪です……プライバシーの侵害です……私は罪を犯しました……本当にごめんなさいっ……!」


私は思いっきり頭を振り下ろしました。

しかし、会長の口から発せられた言葉は、とても意外な言葉でした。


「いや、謝るのは僕のほうだよ」


「?」


え、どうして会長が謝るの……?


「こんな人間が会長をやっている生徒会になんて……いたくないんだよね……」


「えっ?」


ち、違う!!

なんか違う!!

私が言いたかったのはそうじゃなくて!!


「ち、違いますよっ!! さっきも言いましたが、悪いのは私であって、会長は何も悪くないんです……!」


「え、でも……僕に幻滅したということじゃないのかい?」


違う!!

やっぱり違う!!

会長に私の気持ちが伝わってない!!


「そ、そうじゃなくて……」


「?」


な、なんだろ……このもどかしい感じ……。

──ままままさかっ、これが告白のタイミングというやつ!?


「あ、あのあのあのあのっ//!!」


そう思ったら急に恥ずかしくなってきちゃった//!!


「?」


「そ、そのっ……ですから//!!」


言っちゃう!?

言っちゃうの私!!!?


「ほ、保健室で……仲のよさそうな会長と先生を見ていたら……」


言うの!?


「し、嫉妬しちゃったといいますかなんといいますかっ……」


顔が熱い……! 涙が出そう……!


「嫉妬?」


「そ、そうです//!!」


どうしてそんなに冷静でいられるのかが不思議です会長!!


「どうして君が僕達に嫉妬を……?」


「へっ!?」


そ、そんなっ……!

半ば告白したつもりだったのに伝わってない!!

鈍いですよ会長ぉ!!;;


「で、ですからそれはっ……//」


い、言うの!?

言うしかないの!?

逃げるという選択肢だってあるはず……!!


「そのっ……//」


でも言いたい!!

どうせなら言ってから去りたい!!

そういう逃げ方でもいいじゃん!!


「わ、私がっ……//」


せっかく世麗奈が作ってくれた機会なんだし……!!

それは私だって望んでたことなんだし……!!


……だから……!


「か、会長のことを……//」


──だから──!!











「好きだからですっ//!!!!」






「…………」















「──えぇっ//!?」



……い、言えたっ……言っちゃった……。

でも後悔なんてしてない……絶対にしない……!!


「そ、それはどういう……//?」


さすがの会長にも伝わったみたい……。

直接言ったんだから、伝わってくれないと困るけど……。


「え、えと……そのまんまの意味ですっ……// もちろん、人として、尊敬する人物としてでも言えますが……私が今言いたいのは……そういう意味でではなく……」


うぅ……心臓が破裂しそう//!!


「こ、恋の……恋愛感情としての……す、好きって意味ですっ//!」


「Σ////」


はぁ……なんかちょっとすっきりした……。

もういい……この機会に、言いたいこと全部言っちゃおう……。


「……はじめは、一目惚れでした……。初めて会長に声をかけていただいた……あの時に……」


私が会長と初めて会ったのは、中学3年生の時でした。

部活も満期で引退して、土日はいたって暇になったので、私は地域のボランティア活動などにその時間を費やしていました。

ゲームばっかりしていたら、両親に怒られたので;;

推薦をいただいていたので、受験勉強をする必要はほとんどなかったんです。

そんなある日、介護ボランティアに参加した私は、同じく参加していた会長に出会いました。

はじめは、大人びた話し方をしていた会長を見て、歳上かと思っていましたが、老人ホームの方々に自己紹介をしていた時、中学3年生だと言っていたので、とても驚きました。

同い年なのに、全く違う。

ゲームが大好きな子供っぽい私とは違って、物腰が穏やかで、敬語もうまく話せていて、施設の方々との接し方も完璧で……。


それでいて、あどけない笑顔が素敵で……温かくて……。


会長に「偉いね、まだ中学生なのにこういう活動に参加するなんて」と微笑まれた時にはもう……いわゆる〝キュン死に〟をしそうになりました……。

ツッコむ気も起きませんでした……。


その後も様々な活動に参加していましたが、それらはすべて会長に会うためでした。

会長とはいつも会えるわけじゃなかったけど、会えた時には嬉しくて嬉しくて……。

いつも声もかけてくださって、すごく幸せでした。


そんなある日。

私は、会長から正生徒会に入らないかと誘われました。

はじめは戸惑いました。

説明を聞いても尚、正生徒会の仕事がうまく理解できなかったし、進学先も決まっていたので、なかなか答えが出せなかったんです。


でも……〝会長の力になりたい〟。

その気持ちが強く芽吹き、こんな私にもやれることがあるのならなんだってやりたいと思うようになりました。

そして、両親を説得し、入学手続きを取り消して、会長に申し出ました。


〝私を正生徒会に入れてください〟と。


そうして私は、晴れて正生徒会の一員となったのです。




「正生徒会に誘われた時、本当に嬉しかったです。私なんか、まったく役に立てないかもしれないのに……」


ドジだしバカだし……実際、迷惑しかかけてないし……。


「それでも私は、ずっと会長のそばで、会長を支えていけたらいいなと思っていました。会長の目標は私の目標でもありました。会長にはとても感謝しています。──でも……」


私は……くじけちゃった……。


「私の心は……折れてしまいました……。自分がこんなに弱い人間だとは……思ってもみませんでした……」


初めての感情……初めての恋。

それが、思いもしない形で砕け散った……。

失恋が、これほどつらいものだったなんて……。


「私は浅はかでした。けど、正生徒会を辞めて、他の学校に転校しても、福祉活動は続けていきたいと思います。だから、会長も頑張ってください。毎日が大変で、忙しくて、怪我も日常茶飯事ですが、会長なら、この学校の生徒達を変えることができると思います!」


会長が、ずっと悲しそうな顔をしてる……。

私がいなくなること……寂しいって思ってくれてるのかな……。

なんだかちょっと……不謹慎だけど……嬉しいな……。

たとえ嘘でも……嬉しいな……。


「短い間でしたが、楽しかったです。ありがとうございました! 体調にはお気をつけて! 私は、会長の幸せを心から願っています! どうか……どうか……彼女さんともお幸せに……!!」


そう言って、私は走り出しました。


もう思い残すことはない。


涙が出る前に、会長とさよならするんだ。


さようなら……会長っ……!




──と、思ったんだけど──。




「──ちょ、ちょっと待って!」


「!?」


まさかのまさかで、会長に腕を掴まれ、引き止められてしまいました。


「今……なんて言ったの……?」


「えっ……?」


何って……。


「私は……会長の幸せを、心から願っています……?」


「じゃなくて、そのあと……」


「…………」


そそそそんなこと二回も言わせないでくださいよ!!;

イジメですか!?;


「……ど、どうか……彼女さんとも……お幸せに……」


「…………」








「──僕の彼女って……誰?」








「え」


いやいやいやいや、今さら何をおっしゃるんですか!

私をいじめるのがそんなに楽しいですか……!?


「だ、誰って……どうして私にそんなことを言わせるんですかっ……さっきも話したじゃないですかっ……保健室で……見たって……!」


「…………」


もう、やっぱり泣きそう……。

最後の最後で……会長にいじめられるなんて……。


「あの……間違ってたらごめんね。でも、もし僕の予想が当たってるとしたら……」






「――君は誤解してるよ」


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