核心、現る―(5/19)
※~[盛利桃子]視点~※
私は、昨日保健室で見たこと、聞いたことを、すべて世麗奈に話してしまった。
今さらだけど、会長が隠していたことをこんな簡単に言いふらしてはいけないんじゃないかと思った。
私って、最低だな……。
「…………」
世麗奈は険しい顔で押し黙ってる。
何を考えてるんだろ……。
「──桃子。あなた、自分の想いを会長に伝えるつもりはありませんの?」
「はい!? そ、そんなことできるわけないじゃん!!」
なんてこと言い出すんだ世麗奈!! いじめなの!?
「何故できないと決めつけるのですか? 物事は、できるできないではなく、やるかやらないかです。そんな簡単に諦めてどうするのですか」
「だ、だって……伝えてもどうしようもないじゃん! そんなことしたって、会長に鬱陶しがられるだけだよっ……」
もうこれ以上傷つきたくないっ……会長に嫌われたくないのに……!
「あなたは会長をそんな方だと思っているのですか? わたくし達の会長は、思慮深くて、心が寛大で、部下を大切に想う、思いやりに満ちあふれた、とてもお優しい方です。あなたの気持ちをおざなりにするような方ではありません」
「!」
そう……そうだった……。
会長は、時には厳しく、時には優しい態度で接してくれて、いつも温かい笑顔で微笑みながら私達を心配してくださるような、そんな人だった……。
そんな人だからこそ……私は……。
「あなたが会長にフラれたと思うのであれば、それはそれで構いません。しかし、あなたはそうやって逃げ続けるだけでよろしいのですか? これから先、あなたは会長のことを思い出すたびに後悔するのですよ」
「うっ……」
逃げ続ける……?
私は、会長のことを忘れられずに……ずっと生涯逃げ続けるの……?
「しない後悔よりする後悔です。当たって砕けろですわ。──ということで、わたくしが今からここに会長を連れてきて差し上げます。あなたは顔でも洗って待っていなさい」
「へっ!?」
ちょ、ちょっと待って!?
何それどういう展開!?
「えっ、何言い出すの世麗奈!?」
「ご安心なさい、すぐに連れて参りますわ。──では」
ちょっ、だからままままま待ってってばああ行っちゃったっ!!;;
えっ何!? 私に逃げ場なし!? 強制!?
──慌てふためきつつ、とりあえず顔は洗いました;;
でも目は真っ赤だし泣き腫らしちゃってるし、こんな顔で会長に会いたくないよ!!
ああもうどうしよぉぉぉ!!!!;;
Σハッ!
私、会長にフラれたのに、まだこんなにドキドキしてる……。
どんなに会長を想ったって、もう意味なんてないのに……何期待してるんだろ……。
──コンコンコン。
キタァァァァァァーッ!!!?
どうしよどうしよどうしよ!!
Σアッ!
もしかして、世麗奈のドッキリでマサハル君を連れてきちゃったっていうパターン──
『桃子くん、入るよ?』
じゃないっ!!!!
会長だ!!
確かに会長だぁぁぁ!!!!!!;;
──ガチャリ。
「!」
やっぱり会長だぁ……;;
会長が入ってきちゃったぁ……;;
「……世麗奈くんに、君から僕に話があるって聞いてきたんだけど……何かな?」
「えぇっ、あ、あ、あの……;;」
キャー!!!!
そんなに近づいちゃダメです!!!!
「──? どうかしたのかい?」
「あっ、い、いえっ……」
世麗奈に気を遣わせちゃって言うのもなんだけど!!
私!! 逃げたいですっ!!
「桃子くん、なんだか顔色が悪いね。大丈夫? 何かあったの?」
何かって……話せたら苦労しないです……。
そしてそんな心配そうに見つめないでください……。
そんなに優しくされたら……私……また……!
「……うっ……;」
「……!?」
ヤバいヤバいダメダメダメ!!
泣いたらまた顔が酷くなる!!
「あ、あのっ、あのっ……!」
こ、声が震えちゃう……会長に泣き虫だと思われちゃう……!
「え、えっとっ……その……!」
最後なんだ……これが最後なんだから……言っちゃえばいいんだ……!
「桃子くん……?」
言わなきゃ……言わなきゃ……!
もう私にはそれしかできない!
ごめんなさいっ……会長……!
「わ、私っ……。──正生徒会を辞めますっ!!」
「……えっ……!?」
あ、あれ!?
私……そんなことを言うつもりじゃ……。
「あっ、い、今のは……;」
ど、どうしよう……嘘じゃないけど……言う順番間違えちゃった……。
「……冗談、だよね……?」
「えっ、えっと……。じょ、冗談では……ありません……」
もう、これは事実なんだ……嘘じゃない……嘘じゃない……。
「ど、どうして……!? 何かつらことでもあったのかい!? 悩みでもあるのかい!? 僕でよければ相談に乗るよ!」
会長……。
そのお気持ちはとても嬉しいです……。
だけど、会長に相談したところで、何かが変わるのでしょうか……何かを変えてくださるのでしょうか……。
その優しさがあるが故に、私が今言おうとしていることを言えば、会長を傷つけてしまう気がします……。
「…………」
でも……言わないと……。
最後のあがき……。
もう、止まれないんだ……。
「私……ここにいるのがつらいんです……会長に会うのが……つらいんです……!」
「えっ……!?」
言っちゃった……。
もっと遠回しに言ったほうがよかったのかな……。
でも私、不器用だし……。
「今こうして、会長と話しているのもつらいんです……怖いんです……ご、ごめんなさいっ……」
「…………」
体の震えが止まらない……。
どうしてだろう……自分から言い出したのに、会長に冷たくあしらわれたり見放されたりするのが怖い……。
「こんな調子では、ただの役立たずにしかなりません……正生徒会の務めは果たせません……だから……」
「待って。僕のどんな点が、君につらい思いをさせているんだい? 今からじゃ遅いかもしれないけど、それは改めなければならないことだと思う。よかったら、教えてくれないかな……?」
「違います! 会長は何も悪くありません! 悪くないんですが……ただ……」
「……?」
「私……昨日……見ちゃったんです……。保健室で、会長が──」
私は、昨日目撃したもの・ことについて、すべて話しました。
盗み見した場面を、盗み聞きした会話を、すべて、洗いざらい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます