核心、現る―(2/19)
…………。
おじいちゃんは過大評価をしていると思う。
今なら冷静に受け止められる?
そんなわけあるか。
――私は一睡もできないうちに一夜を明かしました。
頭がボーッとする……でもお腹は空いた……。
昨日夕飯食べなかったからなぁ……。
とりあえず顔を洗って着替え、部屋の鍵を閉めて食堂へ向かいます。
……まさかおじいちゃんがあんな手紙をよこしてくるなんて……。
まあ、血が繋がってないことはなんとなく気づいてたし、別に気にしてないからいいけど、〝両親に捨てられた〟ってなんだ……。
かなりの親バカで、私のことは気持ちが悪いほど可愛がってたって言っていたのはどこのジジイだ。
全くの正反対じゃないですか。
お墓参りだって行っていたのに、あれは誰のお墓だったんですか。
ただの石の塊ですか。
しかも、交通事故じゃないかもって何。
なんでそんな曖昧なまま放っておくんだ。
私の身に何があったんだ。
私を助けてくれた人、どうして何も話さずに立ち去ったんだ。
あーもう思い出せない自分が鬱陶しい。
記憶がないって怖いな。
重要なことでも忘れちゃうわけだし。
まあ、とりあえず、あのジジイの言うことはもう一切信じてやらない。
「……そういえば……」
おじいちゃんの知人って誰だろ。
なんで私がここにいること知ってたんだろ……。
ま、まさか!
誰かに監視されている!?
キョロキョロキョロ。
……いや、そんなわけないか。
でもおじいちゃんの知人ってことは年寄りの可能性が高いから……校長先生とか?
あり得るな。
もしかしたら小さい頃に会っているかもしれない。
どのみち憶えてないけど。
「──トロちゃ~ん!!」
あ、ナルシーさんだ。
「グッドモーニ~ング」
「グッドモーニングじゃないわよ! どうして昨日の夕飯に来なかったの!? 昨日はローストビーフが出たのよ!? 食べないと死んじゃうのよ!? もう死んじゃったの!?」
ご覧の通り、生きていますが。
「スミマセン、疲レテイタノデ~スグ寝チャイマシタ~」
嘘だけど。
──って、嘘ついたらあのジジイと同類じゃん!
「信じらんない! トロちゃんはゴキブリ並みの生命力ね!」
そんなものと同類になるくらいならおじいちゃんのほうがいいです。
「しかもカスも来なかったし、二人してピーラーの料理を食べ損なうなんて、運が悪いわね!」
……え?
「カスサンモ、イナカッタ~?」
「そうよ。なんか夕飯前くらいに発狂して暴れ出して正生徒会を襲って、監禁処分になったんだって」
何やってんだあの人。
「ソーナンデスカ~。……ピーラーサンノ料理トハ?」
「ああ~あのね。昨日、あの保健の教師が言ってたじゃん? お仕置きするって。ピーラーのお仕置きは、無期限で食堂のお手伝いをすることなんだって」
なんじゃそりゃ。
料理上手のピーラーさんにとってはお仕置きでもなんでもないじゃないですか。
逆に腕が鍛えられてラッキーじゃないですか。
「やっぱり、ピーラーの料理は最高だわ♪」
ナルシーさんも得してるし。
「ナルシーサンノオ仕置キハ、何デスカ~?」
「富士子はグラウンドダッシュ100周だったわ。毎日の日課だからさっき終わらせちゃったけど」
えっ!?
毎日そんなことしてたんですか!?
運動嫌いじゃありませんでしたっけ!?
朝からランニングって……意外と健康的な生活してるんですね~。
それでもぼっちゃりだなんて、ホント、どんだけ食べているのやら。
「スゴイデスネ~グレートレディ~」
「このくらい朝飯前よ」
うん、確かにその言葉通りだ。
「ちなみにカスのお仕置きは監禁の続行で、マッケンは美容グッズの開発なんですって」
美容グッズって、完全にあの先生の私用目的じゃないですか。
「あ、トロちゃんは校舎全体の大掃除って言ってたわ」
大掃除!?
私だけなんか重くない!?
やっぱりあの覗き見が響いたか!
食堂に到着すると、ナルシーさんは真っ先に厨房のほうへ、ピーラーさんがいるか確かめに行きました。
ピーラーさんは頭にバンダナを巻いて頑張っていました。
「──次!! ロールキャベツと野菜炒め上がったぞ!!」
「「「「ハイヤッサー!!」」」」
なんか料理長みたい。
……それで、私達は朝食をいただいたのですが、なんか味はよくわからなかったです。
勿論まずくはないのですが、特別美味しいというわけでもなかったです。
まあ、よく考えたら私、別に舌が肥えているわけではないので、わからなくても当然ですね。
期待していただけに、ちょっとガッカリです。
「……ふぅ~食べた食べた♪」
「ごちそうさまでした……」
あ、マッケンさんいたんですね。
ナルシーさんが邪魔で見えなかったです。
「おいお前ら! 今日の味はどうだった!?」
「あらピーラーお疲れ様~。今日も最高だったわ!」
「だろだろ♪ 本当は汁物をフカヒレスープにしたかったんだけどよ、お前のばあちゃんが栄養的に味噌汁にしてくれっていうから出せなかったんだよなぁ~」
ピーラーさん、生き生きと語ってる。
「そうなの? 後でおばあちゃんに注意しておくわ」
「そうしてくれ」
いやいや、フカヒレスープなんて学食で出さなくても。
「それにしても、やっぱりカスは来なかったわね~。いくら監禁だっていっても、ご飯抜きだなんてやりすぎだわ」
「ん、ああそれなら、僕が今から作って持っていくぜ」
「あ、そうなんだ~。部屋に行く時は気をつけたほうがいいわよ」
「ああ」
なんかカスさん、今まで以上に危険人物扱いされていますね。
そんなに酷く暴れたのかな?
「…………。というわけで、行きましょうか……トロさん……」
「ヘ?」
どこへ?
「お仕置き……校舎内の掃除なんですよね……?」
「ソーデスケド?」
「だから行きましょう……」
いや、だから何故?
「ア、モシカシテ~、手伝ッテクレルノデースカ~?」
「え……何故僕がそんなことを……」
違うんかい。
「僕は……トロさんがサボらないように監視するだけです……」
ああ、そういうことか。
掃除用具ロッカーの神様ですもんね。
──というわけで、私は強制的に食後の運動をさせられることになりました。
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