ヘンテコ人間、現る―(8/9)


そして、一時間半ほどが経った頃。


「……失礼しました……」


真っ白に燃え尽きたカスさんが校長室から出てきました。

私とマッケンさんは立ち上がります。


「オ疲レ様デース」


「大丈夫でしたか……?」


いざというときのために、私はマッケンさんの前に出ます。


「お前ら、そこで何やってんだよ……」


「私ハ、タダノ付キ添イデース。アナタノコト、心配トカ、シテマセンカラー」


うん、マジで心配してない。


「あの……僕は……カスさんのことが心配で……」


「はぁ? 心配? よくそんなことが言えるな! 俺を裏切りやがって!!」


いや、裏切ったのお前だし。


「た、確かに、悪いことをしたとは思っていますが……ああしないと……トロさんや他の皆さんが無実の罪をきせられてしまっていたので……!」


「でもそんなの関係ねぇ!!」


いやあるし。


「でもそんなの関係ねぇ!! でもそんなの関係ねぇ!!」


私の好きな小島よしおさんの真似を雑にしないで。


「でもそんなの関係ねぇっ!! はい!! 太平洋に平和を!!」


和訳しちゃった。


「ちんとんしゃんてんとーん! ちんとんしゃんてんとーん!」


ヤバイ、なんか気持ち悪い動きで近づいてくる!


「俺はお前を許さねぇ! でもそんなの関係ねぇ!!」


指を差すな!


「今からお前を捕縛する! でもそんなの関係ねぇ!!」


捕縛!?


「お前の母ちゃんデーベーソー! でもそんなの関係ねぇ!!」


確かに関係ねぇ!!


「でもそんなの関係ねぇ!! でもそんなの関係ねぇ!! でもそんなの関係ねぇ!! はい! ほっかっく~!!」


――ギャアアァァァァアァァァァァッ!!!!!!


マッケンさん、すみません。

やっぱりあなたのこと、守れません。


私がひょいと横に避けると、マッケンさんはカスさんに飛びつかれて身動きが取れなくなりました。


「マッケンサン、アイムソーリーヒゲソーリー」


「えっ、えっ……!?」


「ブワッハッハァ!!!!!! 右手にマッチ左手にギザ10!!」


私も裏切り者だな。

マッケンさん、ハゲになったら、本格的な引きこもりになっちゃうかな?


「僕は死ぬ……死にたくないけど……僕は死ぬ……」


川柳調!?

何故こんな時に川柳調子!?


「喰らいやがれ!!!! サーチ&サーチ!!!!!」


「ひぃっ!?」


えっ!?

カスさんがマッケンさんの体をまさぐっている!?

何してんの!? こんなところで何してんのキャー!!


「──キター!! 異物発見!!」


異物!?

ってそれ、さっきの録音機……!?


「これで終わりだぁ!!!! ファイヤァァーパラドックス!!!!」


も、燃やした!?

録音機を燃やした!?

有害ガスとか発生しない!?


「ぼ、僕の記憶媒体が……!」


「ハッハァー!! こいつは爆弾に早変わりだぜ!!」


そう言って、カスさんは燃え盛る録音機を──校長室へ投げ込んだ!


「お前ら逃げるぞ!! ウィ~!!」


「「えぇっ!?」」


何やってんだこの人!?

やっぱり理解不能だ!!


とりあえず、私とマッケンさんはカスさんに腕を引っ張られながらその場を後にしました。

スタコラサッサーと、結構走りました。

途中で何度も転びそうになりましたが、カスさんに有無を言わさず引っ張られていたので転びはしなかったです。


途中で爆発音と校長先生の断末魔が聞こえてきたことは言うまでもありません。


「……あ、あの……カスさん、どうしてあんなことを……」


「ふふ、マッケン。例えどんな理由があろうと、盗聴はいけねぇぜ」


盗聴じゃないだろ。


「あんな機械で、女の子とか女の子とか女の子の部屋を盗聴したりもしたんだろ?」


いや、ないでしょ。

あなたやピーラーさんじゃあるまいし。

逆恨みもいいところだな。


「…………」


何故無言!?

言い返してよマッケンさん!!


「女の子のプライバシーを侵害しちゃいけねぇ。もうあんなもん買うなよ」


なんか話の方向が随分と変わっていますね。


「あ、いえ……あれは僕が自分で作ったものなんですが……」


は!?

あなた阿笠博士!?


「ハァ!? っていうことは、この問題を根絶やしにするには、お前をあの世に送るしか……!!」


こらこら、おやめなさい。


「お前が……お前がいるから女の子達が……!!」


あなた、女性の味方のつもり?

私は認めませんよ!


「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!! 右手にマッチ左手にギ──バタッ」


ん!? 倒れた!?


「あ、あの……!?」


「カスサーン……?」


「……腹……減った……」


なーんだ。そのまま餓死しちゃいな。

──なんてことは言わないけど、そういえば私達、夕飯食べてないなぁ。


今何時?

え、クジラ?

へぇー。


「……トロ……お前……美味そうだな……」


それはあだ名だけでしょ。


「お前が食いたい……」


キモッ!

ハンサムボイスでもキモッ!


「食堂、まだ使えますかね……?」


「ドーデショーカ……。最悪、売店デ何カ買エルトハ思イマスガ~、トリアエズ、食堂ニ行ッテミマショ~」


「そうですね……」


「トユーコトデ、グッバイカスサン。私達ハ行キマース」


「そ、そんなっ……待てっ……俺達、仲間だろ……!」


いいえ、ただのクラスメイトです。


「見捨てるなよっ……死んだら呪うぞ……!!」


そういうことを言うからイヤなんですが。


「あの……トロさん……一緒に連れていってあげませんか……?」


あんたどんだけ甘いんだ。

そんなにカスさんがチュキ?


「マッケン……お前いいやつだな……今度……ラーメン奢ってやる……」


「あ、僕……麺類食べられないので……」


断られたし。


「……仕方ナイデスネ。ジャア、マッケンサン、腕持ッテ~クダサイ。私、足持チマース」


一応、ちゃんと言った通りにグランド100周したみたいですし、今回だけは拾ってあげましょう。


「あ、はい、ありがとうございます……!」


「トロ……せんきゅー……ふぉーえばー……あいらぁびゅー……」


キモイ、しゃべんなっ!

中庭の池に投げ込むぞ!

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