本当にあったちょっと怖い話

@masamisorimachi

第1話 棺(ひつぎ)

 祖母の亡骸が棺に納められた。

 伯父は万事において派手好きだった。祖母の葬儀にも惜しみなく金を使っていた。

祭壇も豪華だった。段ごとに彫刻が施されているし、棺の外側もめいっぱい欄間の彫刻のようにそれはそれは見事だった。

ンでいく。 僧侶にもお布施は大盤振る舞いだ。おかげで読経がえらく長く座って告別式に列席している親族は、読経が始まると、

 思い切り痺れ(しびれ)をきらした足でよたよたしながら、抹香を焚きに祭壇に進んでいく。

 葬儀の進行係が、棺の周りに遺族たちを促すと、祭壇に飾ってある菊の花を遺体の周りに手向けていった。蓋が閉められ、最後の釘を遺族たちが次々に打ち石に軽く添えながら、打ちつけていった。


 男性たちで棺を持ち上げて、霊柩車へ運んでいっていたとき、伯父が葬儀屋に耳打ちしてなにか話していた。

 そっと、その会話に耳を傾け聴覚を最大にした。

すると、伯父が

「この棺、いつお返しするんですか。」

(んっ、返す?)

 葬儀屋が伯父に問いかけられ、かがめた姿勢を正して、軽く咳払いをすると、

「ご遺体と一緒に火葬いたしますので、ご返却はございませんねぇ。」

(だよね)


 欄間の彫刻のように見事な彫刻が施された棺だったので、伯父はレンタルだと思ったらしい。

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