不協和音

かしまからこ

第1話

気持ち悪い音ってあるよね。

聞いたら毛が逆立つ音。

よくあるのが、黒板をひっかく音。

椅子を引いた時の音や、マジックのこすれる音。

苦手な人多いでしょ。

そういう音って、日常に溢れてる。


例えば、あいつとあいつの声。

同時に話してるとほんとに不協和音。

1秒だって我慢できない。

みんなよく平気だよな。


担任の先生の足音。

あれもすごく気味悪い。

学級委員長の貧乏ゆすりも耐えがたいし、人気者のサッカー部キャプテンの笑い声も。


みんなには聞こえない。

前から感じてた。

僕はみんなよりほんの少し耳がいいのかもしれないって。

でも得したことなんて一度もない。

不快な不協和音にイライラさせられるだけ。

なら聞こえない方がいい。

こんな耳、いらなかった。


不協和音を出す人は、どこか人として欠陥があるってことに、今までの経験で気付いた。

だから委員長もサッカー部キャプテンも、担任もみんな、どこかおかしいところがあるということ。

あいつとあいつみたいに、合わせると不協和音になるケースは、相性が悪い人同士ってこと。

あー、もう。

今日も朝から頭が痛い。


「ほら、みんな座れ」

嫌な足音を響かせながら、担任が教室に入ってきた。


「今日はみんなに転校生を紹介するぞ」

昨日言ってた転校生か。

どんな子だろう。

教室中がそわそわし始める。


「初めまして。今日からこのクラスになります。佐藤です、よろしくお願いします」


完璧な足音、声。

ああ、こんなに心地良い音を聞いたのは随分久しぶりだ。


「席はあそこ、川西の隣だ」

しかも僕の隣の席。

心音がうるさい。


「川西くん、よろしくね」

「あ、よろしく。佐藤さん」


やばい。

どうやら僕は完璧な音を持つこの佐藤さんに。


恋をしてしまったらしい。


おわり

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不協和音 かしまからこ @karako

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