第12話 あやかし、アニメ化を目指す

『ここまでだ! 魔王ガルナザーク! この聖剣エーヴァンテインの力を持ってお前に引導を渡す!』


『ふははははは! 異世界の勇者よ! 笑わせてくれるわ! この魔王ガルナザークが不死身の王! 貴様が我を倒したとしても、我は何度でも蘇り、貴様に復讐をしてやろう!』


『望むところだ! 今との因縁ここで断つ!』


「おおおおおおお! これが『アニメ』か!! すごい! すごいぞー!! 動いておる! この箱の中のイラスト、漫画が動いて喋っておるぞー!!」


 夜。アニメとは何かと佳祐に質問した後、佳祐は刑部姫にテレビを見せ、そこで放送されている様々なアニメを見せた。

 最初のうちはお決まり通り「箱の中の映像が動いている!?」と驚いていたが、今では漫画が動くということに驚きと感動を覚えているようであり、夕飯を食べている佳祐の隣で刑部姫はテレビにくっついたまま離れようとしなかった。


『喰らえ! ガルナザーク! これで終わりだ! 全ての因縁に終止符を打つ! ファイナルホーリーカリバーン!!』


『ぐおおおおおおおおおおお!! おのれ、勇者めえええええええ!! この恨み、晴らさで置くべきかああああああああああ!!!』


「うおおおおおお!! すごい! すごいぞー!! 佳祐ー! アニメすごいぞー!!」


「ああ、うん、まあ、そうだね。アニメはすごいね」


 テレビの前で文字通り子供のようにぴょんぴょんとはしゃぐ刑部姫を見ながら、佳祐は苦笑を浮かべる。

 その後も様々な深夜アニメを片時も離れることなく集中して見ては、アニメの中で動くキャラクター達に合わせて激しく叫んだり、動いたり、時に同じように感情を顔に出し、のめり込んだりと佳祐はアニメの内容よりもそれを見ている刑部姫のリアクションにいつしか夢中になっていた。


「ふわー、すごいのじゃな。アニメ。これも漫画の一種なのか?」


「まあ、そうですね。漫画の最終地点とでも言いますか。人気のある漫画はこうしてアニメとなってテレビの中で動いたり喋ったりして、いろんな人が見れるようになるんですよ」


「ほおー! そうなのじゃなー! すごい世の中じゃなー!」


 佳祐の答えに目を輝かせる刑部姫。

 だが、そこでふと何かに気づいたように考え込む。


「……ん、待てよ、佳祐。人気のある漫画はこうしてアニメになるんじゃよな?」


「ええ、まあ、そうですけど」


「ということは……わらわ達が描いている漫画。あれも人気が出たら、このようなアニメになるのか?」


「え?」


 そう言って刑部姫はテレビの中で派手に動いているアニメを指差す。

 その答えに佳祐は一瞬言葉を詰まらせる。

 なぜならそれは彼自身、何度となく夢見たことであり、いつかは自分もと密かな目標として抱いているからだ。

 それをなんの疑いもなく問いかけた刑部姫に対し、どう答えるべきか僅かに悩む佳祐であったが、自らが夢としているものを隠す必要もないと声を大に答える。


「――ああ、そうだな。もしもあれが連載になって人気を得たら、今あってるそれみたいにオレと刑部姫の漫画もアニメになるかもな」


「おおおおおお!!」


 その答えに刑部姫は無邪気な笑みと、これ以上ないほど期待に胸をふくらませた瞳を向ける。

 そして、目の前のテレビに向かって刑部姫はまるで誓いでも立てるように拳を突き立てる。


「うむ! では目指すはこのアニメ化じゃ! わらわとお主の漫画! 必ずやあの雑誌の頂点をとって、アニメになり多くの者達にわらわ達が作った物語、漫画を見てもらうのじゃー!!」


「はは、大きく出たなー。刑部姫」


「当然じゃ! 夢は大きく! それに昔、大名になりたいとわらわに相談を持ちかけたこせがれがおった。わらわはそやつに夢は大きく持てとだけ助言したが、そやつはその助言を元に見事己の力で大成して大名にのし上がった。それを考えればわらわ達の漫画をアニメ化させるなど全然手の届く範囲ではないか!」


「大名か……確かにそれと比べればどんな夢も些細なものかもな」


「うむ! じゃから佳祐よ。共にアニメ化を目指すぞ!」


 そう言って手を差し伸べる刑部姫に対し、握り返さない選択肢など佳祐にはなかった。


「ああ、こちらこそ、これからもよろしく頼むよ」


「うむ!」


 固く握手を誓い合う二人。だが次の瞬間、刑部姫はふと佳祐へと耳打ちする。


「時に佳祐よ。明日『あしすたんと』とやらに行く奴の漫画はアニメ化するんじゃよな?」


「ああ、そうだね」


「ということは面白いのか?」


「まあ、面白くないとアニメ化はしないだろうね」


 佳祐がそう答えると刑部姫は何かを期待するような目で彼を見る。


「えっと、一応漫画本いくつかあるけど見る?」


「見る!!」


 即答であった。

 その後、刑部姫はたっぷりと南雲の漫画を最新刊まで読み込むのであった。

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