第6話

 全くの偶然でした。

 神々の助力だったのか?

 亡き父母の導きだったのか?

 運命だったのか?

 何であろうが、私は強運です!


「前言を撤回します!

 父母を殺した敵がいます。

 助太刀してください!

 屋敷にある全ての財産を差し上げます。

 ですから敵討ちを助けてください!」


「その程度では駄目ですね」


 ああ、さっきはあれほど大言壮語していたのに。

 これほどの軍勢を見て怖気づいたのですね。

 仕方のない事ですが、哀しい。

 でも、ここで諦めるわけにはいかないのです!


「何でも差し上げます。

 領地もこの命も差し上げます!

 ですから助太刀してください!」


「では、私と結婚してくれますか?」


「ふぇ?」


「一目惚れしたんです。

 貴女が私の妻になってくれると言うのなら、命を賭けて助太刀しましょう。

 どうですか?」


「……貴男を愛せるかどうかわかりません。

 ですが、貴男が両親と家臣の敵を取ってくれて、領民を幸せにしてくれるのなら、誠心誠意貴男に尽くします」


「分かりました。

 それで十分です。

 私は必ず貴女の愛を得てみせます」


 突然の事で、混乱しています。

 何が何だかわかりません。

 咄嗟に返事できたのは、両親と爺達の敵討ちと領民の事です。

 敵討ちは悲願ですが、その為に領民を苦しめたくないという事です。

 支離滅裂な事を口にしたかもしれませんが、彼の返事は……


「主命である!

 皆殺しにしろ!」


「「「「「おう」」」」」


 虐殺でした!

 戦いと言えないくらい、一方的でした。

 屋敷の者達との戦闘も考え、私達は完全武装していました。

 一方敵は、一部の騎士を除けば舞踏会用の礼服でした。

 彼らから見れば、謀略で手に入れた家と財産の検分だけの心算だったでしょう。


 それでも、完全武装の騎士が、一隊百騎は護衛についていました。

 礼服の王弟、王太子、ティッチフィールド公爵の三人。

 三人の側近も殆どが礼服です。

 三人に媚び諂っておこぼれに預かろうとする腐れ貴族は全員礼服です。

 今は皆血に塗れズタボロになった礼服姿の屍です。

 即死できた者はまだ楽でしたでしょう。


「正直に答えれば、ここにいる神官に治療させます。

 凄腕ですから、完治しますよ。

 マーリアの件は全て貴男方の謀略ですね。

 先代ダファリン公爵夫妻や家臣達を毒殺したのは貴方達ですね。

 嘘を言ったら、治してから指の一本一本を潰しますよ」


 三人の顔が恐怖に引きつっています。

 私の顔も、恐怖に引きつっているでしょう。

 それも当然です。

 それくらい衝撃的な戦いでした。


 たった一撃です。

 一撃で完全武装の騎士が、鎧ごと肉片になって跳ね飛ばされるのです。

 一刀で完全武装の騎士が頭から両断されるのです。

 まるで地獄の悪魔が現れたかのようです!

 

 

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