第3話
絵にかいたような悪党です。
物語に出てくるような盗賊です。
いえ、人攫いなのでしょうか?
一人二人なら負ける気はしませんが、この人数では……
「お前ら傷つけるんじゃないぞ!
貴族の御嬢様は高く売れるんだ。
分かってるな!」
「そんなぁ。
御馳走を前に御預けなんてあんまりだぁ」
「やかましいわ。
ひと仕事終わったら街娼を抱かせてやる。
それが嫌ならそこらの娘っ子でも攫ってこい。
それなら抱いてからでも売れる。
だがこの御嬢様は駄目だ。
初物は高く売れるんだよ!」
何たる外道!
女の敵を赦すわけにはいきません!
逃げられないのなら、頭目だけでも道連れにしたいのですが、卑怯者だけに子分の後ろに隠れています。
「傷つけるなよ。
優しく捕まえるんだぞ。
見事な衣装も金の内だ。
破いたり汚したりするなよ」
一人目は目潰しで斃す。
二人目には同じ目潰しは通用しないかもしれない。
でも逆手を取って関節を外す事はできるでしょう。
三人目からが難しい。
「うぇふぇふぇふぇふぇ。
いい香りがするなぁ。
抱けないのなら、せめて香りを嗅ぎながら撫でまわしてやるよ!」
「「「ウギャァアァアァアァ」」」
「卑怯者!
女一人に大の男が寄ってたかって何事か!」
「何を悠長な事を言っているんですか。
こいつらは人攫いですよ。
本職は盗賊か何かでしょう。
盗賊に礼儀作法や義侠心などありませんよ」
「なるほど、それもそうです。
御嬢さん大丈夫ですか?」
助かりました!
冒険者の方でしょうか?
六人連れの男性が助けに入ってくださいました。
少なくとも三人は凄腕の戦士のようです。
三人は戦わずに仲間の戦いぶりを見ています。
そのうち一人は仲間に窘められた人です。
残り二人が左右に控えてその人を護るように位置しています。
いかにもいわくありげな人です。
月明かりの下に見る姿なので、断言はできませんが、年のころは二十歳前後でしょうか?
瞳の色が左右で違います。
左の瞳が蒼玉、右の瞳が紅玉の宝石のように美しいです。
髪は月明かりに輝く金髪です。
肌は白磁のように滑らかで、これも月明かりに光り輝いています。
どう見てもただの冒険者ではありません。
五人は護衛なのでしょう。
それにしても、三〇人前後の盗賊をたった三人で叩きのめすとは……
貴族の御忍びだとは思うのですが、このような方を国内の舞踏会で見た事がありません。
「御助け頂いて助かりました。
御礼をしたいのですが、王家に濡れ衣を着せられ、家臣にも裏切られてしまい、頭を下げる以外に御礼のしようがございません」
「いや、気にしないでください。
御婦人が難渋しているのを見過ごしては男が廃ります。
私にできる事なら何でも言ってください」
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