第7話 アメリカからの観光客と盛り上がる



 さて、その日の市庁舎でのビアガーデンでは、立ち飲みテーブルで適当に場所をとるんですが、結構相席率が高くて、私たちのテーブルには、アラフォーぐらいの熟年カップルが。

その二人に、カメラ渡して、写真を撮って!と頼んだのがきっかけで、つたない英語ながら、会話をします。

その二人は、アメリカのテレビ局のクルーで、ウィーンに撮影に来たついでに飲みに来たみたい。

ウィーンのオペラに行くのよ。とのことで、私たちも、オペラ見に行く!という話で盛り上がります。

オペラを見に行くといっても、私のとったチケットはちょっと特殊です。




「なんかさー、この後ウィーン行くことにしたんだけど、ウィーンでオペラでも見ようと思ってぐぐったら、夏って有名どころのオペラ歌手ってバカンスとってて、ぱっとしないやつしかステージに立たないらしいじゃん。」

私は明日香の家のソファーに寝ころびながら、ウィーン旅行の予定を相談すると、

「そうそう、バカンス問題があって、こっちの人って夏がっつり休みとっちゃうから、夏にオペラとか見ないほうがいいんだよ。ウィーン国立オペラ劇場とか、日本人とかカモだと思ってるから、かなり強引な勧誘して、当日券高く売りつけてるらしいって噂きいたよ」

「えー。カモにはならんけど、でさ。代用案として、湖の上にセット作ってやる、湖上オペラっていうの見つけたんだけど、これ良さそうじゃない?なんか、チケットも日本で買うと3万から4万する席が、そこのHPで買うと、7500円ぐらいなんだけど。S席。こういうイベントなら、しょぼいオペラ歌手じゃないんじゃないの?」

「あ、湖上オペラ?私は行ったことないけど、確かにそういう夏のイベントのやつだと、ちゃんとしたオペラ歌手でるみたい。マリちゃん好きそうだね。」

と、明日香は私のために、スイス料理のラクレットを用意しながらテキパキと私の相談にのってくれている。

「オペラがすごい好きってわけじゃないんだよね。知ってると思うけど。私が好きなオペラって、情緒的なアリアぐらいで、全編みるのは結構しんどい。でも。湖の上にセットたててやるっていうロケーションが見てみたい。」

これを読んだ方は、じゃあ、しょぼいオペラ歌手でもいいじゃん!とお思いかもしれませんがね。

 情緒的なアリアが好きな私は、結構耳が肥えているのである。(舌もこえているがね)いくらオペラおたくというほど、オペラが好きではなくとも、せっかく金を払うなら、なるべくコスパが良いチケットが良いに決まっているのだ。

ということで、明日香のアドバイスのもと、私が目を付けた、メルビッシュ湖上オペラ音楽祭。のオフィシャルHPを英語に表示変更し、チケットを検索。

買うならS席だな。

ということで、ラクレット食べ終わった後、(ラクレットというのは、ホットプレートみたいなやつに、チーズをのせてトロけさせた後に、ゆでた野菜や、パンやソーセージにそのチーズをぶっかけて食べるという結構原始的な料理でした。数年後に田中ヨシタケが北海道でラクレットを宣伝しまくってメジャーな感じになったけど、この時は、ラクレットなにそれ?って感じだった。クリケットの友達みたいなイメージしかない)

「スイス料理っていうか、なんか北海道をほうふつとさせる料理だね。北の国からっていうかさ。」

と感想を述べると、

「スイスなんて、そんな美味しい料理ないから、チーズぐらいなんだよね。日本ってほんと美味しいものだらけだわ。マリちゃん、海外住む場合、食の問題が結構ありそうだね」と笑われる。

「私まじで、寿司に飢えてきた。」

そんな食後の話をしつつ牧子に、めずらしい湖上オペラに一緒にに行くのか?

スカイプでお誘いします。


「ってことでさ、オペラ行こうと思うんだけど、あんたもいく??今なら良い席連番でとれるし、日本でこのチケット買うと3,4万はするのに、オフィシャルHPからスイスの明日香んちに発送してもらうと送料も安いんだよね。」

と、付加価値に弱い牧子をオペラに勧誘。

「この時期、ウィーンでオペラ見ようと思っても有名な歌手はバカンスでステージ立たないらしいしさ。夏に湖の上でやるオペラとかオペラ興味なくてもシチュエーションでテンションあがるでしょ。行こうよ!」

そして、牧子も、え!そんな安く買えるなら行く行く!と乗り気。

この頃には、電車のチケットの手配やら、レンタカーの手配やら、アパートの予約などを立て続けにやっていたので、オペラのチケット程度は簡単に買えるようになっていた私。日本でメルビッシュのオペラのチケットを購入したい!と思っている方も、どうそ、代理店なぞ通さずに、ダイレクトにメルビッシュのオペラのHPにアクセスしてチケットをとられたし。激安である)

ちなみに、HPはこちら。https://www.seefestspiele-moerbisch.at/en/

でも、ひとつ問題が勃発。

私がベルンの明日香の家をたつまでに、このチケットが配達されるか。という物理的な問題が・・。

結構きわどい。日程的に。(ウィーンの予約してあるアパート宛てに送って、私たちがまだチェックインしていないのに届いて、他の旅行者の元にいっちゃっても嫌だな。と思って、ウィーンのアパート宛てに送るのは却下。まだ、ここのアパートのシステムがよくわかっていないので。普通に考えたら管理人が、私たちがチェックインするまで預かってくれるはずなんだけど、いきなり直でポストに放り込まれたら紛失する可能性もある)

そして、心配していたとおり、ウィーンにたつ日の前日にもチケットは明日香のポストに配達されなかったのだ。

ぐぬぬ。

明日の夜の飛行機に乗るまでに、配達されなかったら、明日香にウィーンのアパートに転送してもらうとしても、なんというか、心もとない気持ち。

そして、ウィーンに移動する当日。

配達しにこないかなー。と、ポストがある一階までぶらぶら階段を下りていくと(そうだ、スイスに限らず、ヨーロッパの旧市街のアパートにはエレベーターがついていないことが多い。9割方。日本に住んでいる私には信じられないことだが。旧市街の建物は法律で保護されているから、あとからエレベーター一つ取り付けるのもなかなかに難しいらしい)、

郵便の配達員の女性がやってきた。

そして、明日香のポストに配達。

「きゃー!待ってたんだよね!」と、封書を確認すると、オペラのチケットでした!

喜んでいる私をみて(私はその場で飛び跳ねていた)、そんなに喜んでくれて私も嬉しい。と言う配達員のお姉さんと喜びを分かち合ったのち、飛行機にのり、ウィーンにたったのでした。


ということで、メルビッシュのオペラに行くんだよ!と、そのテレビクルーの熟年カップルに言うと、

「あそこ素敵よ!蚊がすごいから、気を付けてね!」と、アドバイスをもらいました。

この人たち、なんか日本でいう情報番組のクルーぽくて、どこのワインが美味しい。とか、グルメ情報からオペラの情報まですごく詳しかったんだよね。

蚊に気を付けて、と女性クルーが言うと、男性の方は、メルビッシュは赤ワインが美味しいからおすすめだよ!と、続いてくる。

牧子が、ホリーゲ行きたい!っていうと、(ホリーゲはウィーンにあるワイン酒場みたいな地域で白ワインが有名)ホリーゲでお勧めのお店があるから教えてあげる、と詳しくメモを書いて渡してくれます。

おじさんの方が、

「安いのにクオリティの高いワインですごくお勧めだよ!」

と、教えてくれたあとに、

「でも、かかってる音楽が最悪なんだよね。」

と、女の人と顔を見合わせて苦笑いしてました。

どんな音楽なんだかめちゃ気になるところです。

そこのお店と、もう一つをお勧めしてくれて、帰りはタクシーで帰りなよ!とアドバイスされました。

オフコースです。


そのあとも、ピュアビール(オーガニックビール)を色々飲んで、お姉さんの方が、こっちも飲んでみなよ。と、グラスに分けてくれます。

この人たち、ほんと気さくだったなー。結構盛り上がって、4人で記念撮影。

帰るときに、おじさんの方が、これがビエナスタイルだよ。と言って、手にキスする(ふれないんだよ!)といって、キスするふり?みたいな王子様挨拶で別れました。

お姉さんとは、チークで挨拶。

牧子と、きもい外人にチーク挨拶迫れれたら、ノンノン、アイライク、ビエナスタイル。っていって手を出せばいいね。と盛り上がりました。

みなさまも、海外に行くと、はぐとかキスとか迫ってくるきもい外人のおっさんが結構いるので、ビエナスタイルで乗り切りましょう。

お姉さんたちがかえってからも、私たちは更に飲みます。

最初に飲んだ、ラズベリーがたくさん入ったドリンクの、今度はマンゴーがたくさん入ったやつを買いに行きます。

これマンゴー?と確認すると、飲んでみる?といって試飲させてくれました。これめちゃうま。なので、お買い上げ。

そういえば、さっきのお姉さんが、それ結構強いお酒だから、気を付けてね!とラズベリーのお酒のことを言っていたんだけど、私も牧子も酒が強いので、何も感じませんでした。例えていうなら、家でつけてる葡萄酒的な強さかな?お酒の弱い方は気を付けてくださいね。甘くてジュースみたいんだけど、強いみたいです。

更につまみに、ベトナム料理の生春巻きを買って持っていると、「それなんて料理?」って料理名を聞かれます。

私たちも、最初ラズベリーのお酒注文するときに、そのお酒を持っている人に、それなんて名前?って名前を聞いて注文したので、みんなそんな感じで美味しそうなものを持っている人に、料理の名前を聞いて注文していました。

そういえば、日本食屋さん?みたいなのも出店していて。

「私たち日本人なんだよー。」というと、

「日本食作れるの?」って聞かれる。

麺つゆ1,5リットルを毎日せっせと消費している私たちには愚問ですよ。

その日本食屋?さんには、おばさんと、23歳の男の子が働いていたんだけど、23歳には全然見えなかった。35歳ぐらいの見た目。(日本でいうと)、

小声で、おいめちゃ若いぞ。なのにすごい老けてる。って牧子とひそひそ。

「あれで23歳なら、私たちティーンエイジャーに見えるね。」

とご満悦。

海外では、セクシーであることが価値があるみたいなので、ティーンエイジャーから可愛い路線ではなく、大人っぽい女の子が多いみたいなんだけど(それって、白人って老けるのが早いからだと私は推察している。ティーンのうちからセクシーで売っておかないと、あっというまにでぶったババアに変身するからね。私たち日本人はゆったりとある程度若い見た目で楽しめるので、若いうちからセクシーで売る必要はあまりないと思われる)そう。私たちは日本人。

若く見えることに価値があるって固定概念があるので、若く見られてほくほくでした。2019年のいまの年齢でも、海外いけば、ヴァンパイア並みに若く見えるはず。ぐふふ。

30超えて、なんか若くみられたいわー。と思ったそこのあなた!

ヨーロッパお勧めです。

日本人なら自分の息子ぐらいの年齢の男の子にナンパされる率がかなり高いと思われます。(嬉しいかどうかは微妙なところだけど)

まあ、私は外国人との恋愛には興味ないので、そこらへんから先は詳しくないんだけど。

牧子は外国人結構好きなので、がんがんいくタイプ。

ここらへん、いらん情報かな?、先を続けます。


その日は、流れていたオペラも情緒的でよくて、熟年カップルとの出会いも楽しく、レンタカー返すのに2時間さ迷った疲れも酒で癒え、大満足でアパートに帰ったのでした。

明日はウィーン観光です。

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