揺籃忌

雨伽詩音

第1話白鳥の真白き胸を射よ少年

マルガリタ・マリアの末裔

孔雀をなぶるよりも白鳥の真白い胸を引き裂いてみたい。中に詰まったはらわたが私の顔に手足に降り注ぎ、かぐわしい香りが匂いたつ。その奥に潜む心臓を取り出して、きりりと歯を立ててみたい。頭ごなしに愛を説くあなたにはきっとわからない血みどろの衝動は、あなた自身にもひたと向けられている。あなたは一向に気づく様子もなく、祭壇の前でおごそかな聖句を唱えるばかり。漆黒の僧衣カソックの背中に純白の羽が見えるのはきっと敬虔な子羊だけで、私には愚昧な羽なんて見えない。代わりにあなたのまばゆく輝く心臓の中心に真珠が埋められているのを私は知っている。いつかの時代に乳房の中心に真珠を埋めた少女を描いた画家がいて、彼の画集を紐解くたびに、あなたの心臓に輝く真珠の光沢を想う。柔らかな肉に包まれた真珠は少しずつ層を厚くし、あなたの心臓の中で時間をかけて容積を増してゆく。祈りを糧に艶を増していく純白の粒をピンセットでつまんで取り出したとき、世のコレクターは涎を流し、迷える子羊は聖蹟を目にし、あなたは美に捧げられた生け贄となる。

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