第1話 ステータスの件について
「…………はい?」
ダンジョン? クリア? ボーナス?
何だかRPGでもやっているような気分が襲ってくるが……。
〝レベルアップ ジョブランクアップ〟
またもよく分からん文字が出ましたよ。
文字に触れようと手を伸ばすが、立体映像のように空を切る。
本当に空中に文字が浮かび上がっているみたいだ。
「ていうかレベルアップって……マジでゲームみたいじゃねえか。ステータスとかあったり――」
そう口にした直後、今度は文字じゃなくて青い画面が浮かび上がった。
「おわっ、何だよ今度は!?」
有野
体力:26/26 気力:20/20
攻撃:E → E+ 防御:E++ → D
特攻:D → D+ 特防:E+ → E++
敏捷:C → C+ 運 :D
ジョブ:
スキル:ステルスⅠ
称号:ユニークジョブを有する者・コア破壊者
「……………………………………えーと」
何コレ? ステータス画面みたいなんが出てきたんですけど?
しかもちゃんと俺の名前が映し出されていることに驚く。
思わずこの状況を見ている俺のことを知った誰かがいるのかと思い周りを見回してしまう。
俺は他に情報を集めようとスマホを操作し始める。
相変わらずSNSは大炎上中というか、お祭り騒ぎになっているが、中には自分家の地下室がダンジョン化しただの、大きいものでいうと一つのビル全体がダンジョンみたいな変貌を遂げたなどのメッセージがあった。
「ダンジョン化……まさか俺の家も?」
だとすれば一応説明がつく。突如現れたモンスターたちに、廊下に設置された罠のこと。
当然少し前は普通の家だったし、スライムやゴブリンなんてもんもいなかった。
戸締りもしているので、入ってくるとしたら窓を割ったりなどをする必要があるだろうが、そんな気配は微塵もなかった。まるで急に降って湧いたような感じだ。
「じゃあさっきの光の玉は何だ? そういやさっき『コア撃破ボーナス』ってあったが……」
あることを思いつき、それを確かめるために行動を開始することにした。
俺は扉を開けて外へと足を踏み出してみる。
耳を澄ませてみるが、階下からは生物の気配はしない。
警戒しながら一階へ向かい、閉じられた障子に近づいて静かに開く。
するとその向こうにいたはずのゴブリンの姿が一切見当たらなかった。
俺は他の部屋も同じように確認してみるが、モンスター一匹も遭遇しなかったのである。
「……ダンジョン……コア撃破……。もしかして俺がさっき壊したのって、ダンジョンコアだったのか?」
ダンジョンコア――ゲームや漫画の知識にはなるが、そのダンジョンを構成している核であり、コアを失えばダンジョンとして成り立たず、中にはダンジョンそのものが崩壊したりする。
つまりコアこそがダンジョンにとっての要で、そこに棲息する者たちはコアを守る必要があるのだ。
「俺がコアを破壊したからダンジョン化が解けて、モンスターも消えたってわけか?」
そう推理するのがしっくりときた。
だとするなら、何故いきなり、しかも俺の家がダンジョン化したか、だが。
スマホの情報では、ダンジョン化の統一性は見つからなかった。
森が迷宮化したことや、山で見かけた謎の生物なんかも、すべてはその場がダンジョン化したことによって起こった現象だろう。
その他の出来事も恐らくダンジョン化で間違いない。
ということはダンジョン化は、ランダムで行われているということ。
SNSではダンジョン化の究明をしている人たちもいて、その人たち曰く、世界がこうなる前に耳にした関節が外れるような鈍い音が、豹変のきっかけだったのではと考えている。
「あの音、世界中の人が聞いてたのか……」
てっきり聞き間違いか何かだと思っていたが、これだけ多くの人が証明しているのなら、世界豹変に何らかの関わりがあるのは確かだと思う。
「にしてもいきなり異世界みたいになるって……」
俺がよく読むネット小説では、こんな不可思議な現象が起きたりして、突然世界にモンスターが溢れたり、異世界に飛ばされたりするものがある。
しかしあくまでもそれは創作の中の話であり、当然起こり得ないことだと思っていた。
まあゲーム好きな男としても、そういう世界には憧れはあったが、まさか実際に体験してしまうことになると、モンスターのリアルさに恐怖を感じざるを得ない。
もしあのゴブリンたちに襲撃されていたら、今頃俺は……。
そう思うと、逃げ込んだ物置部屋にダンジョンコアがあったことは本当に行幸だった。
ステータスを見れば『運』はあまり高くないようだが、何とか九死に一生を得たような気分である。
「とりあえず家のダンジョンは消えたってことでいいんだよな? じゃあ次は……そうだ、テレビだ!」
この現状に政府はどう対応するのかと考え、リビングに行ってテレビをつけた。
全チャンネルがすべて同じニュースを取り扱っている。
もちろん内容は世界豹変についてだ。
しかしまだ豹変が起きて間もないこともあり、まだ詳しい道標なども示されていない。
とにかくモンスターには近づかないことと、近くの避難シェルターやそれに近しい場所へ逃げることが求められている。
中には世界遺産や国宝級の建物や地域がダンジョン化しているらしく大騒ぎになっているらしい。
それだけでなくモンスターによって傷つけられたり、死亡したというケースも少なからず情報として挙がっている。
これらを見ると、本当に俺はまだ運が良かった方だということが分かった。
もし家の中にドラゴン級のモンスターとかいたら、逃げる間もなく殺されていたかもしれない。
するとニュースキャスターが何やら一枚の紙を受け取ると、突如として慌てたようにこんなことを言い出す。
「そ、速報です! 世界各地で奇妙な黒い物体が出現したとの報せが入りました。あ、映像があるそうです!」
そこで映し出されたのは、世界遺産にも登録されている有名なアメリカのグランドキャニオンである。
その上空にフワフワと異質な黒い球体が浮かび上がっていた。
「うわ、何だあれ? しかもでけえし」
キャスターの情報では、直径三百メートルはゆうに超える球体だという。
この球体が現れたのはグランドキャニオンだけじゃなく、全部で七か所が現在確認されているとのこと。
しかもその一つが日本の北海道の上空にも現れたらしい。そのせいで北海道住民たちのSNSは大炎上どころではない。
すぐに自衛隊が出動して調査するというが、あんな不気味なものによく近づけるものだと感心する。
「てかマジでこの世界……どうなっちまうんだよ」
俺はテレビをつけたまま、もう一度ステータス画面に注目する。
仮にこの世界がゲームのようになったとしてだ。
ならやはりステータスの把握は重要になってくるだろう。
「いろいろ説明が欲しいんだが、どうすればもっと詳しく……」
適当に自分の名前を指で押してみると、新たに『名前』と出現した。
他にもEXPを押してみたら、
『次のレベルアップに必要な経験値。100%に達すると上昇する』
と、分かりやすい説明が表示された。
「なるほど。こいつは便利だ」
体力や攻撃などは文字通りなので問題ない。
ただ気力に関していうと、スキルを使用する時に消費するものだということが分かった。
そして〝→〟についてだが、これはレベルアップで上昇したことを意味しているようだ。
「さて、気になるのはここからか」
そう、ジョブだ。
これもゲーム知識だが、恐らく職業や役職みたいなものだろうが。
俺は『回避術師』というこれまで見たことも聞いたこともないジョブを押す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます