転生スキルとドラゴンマスター☆セメコ!
尾上遊星
プロローグ
『まもなく二番線に
そのアナウンスに自分の足元を確認する。
大丈夫大丈夫。さっきも確認しただろ俺。
ったく心配性っていうか、ビビリなんだよな。
高校生になったらちょっとは変わるかもって思ってたけど、どんどん臆病になってる気がするし。
そんな自分が嫌で「ハァ……」とため息をついた。
その瞬間、
「ため息なんてついたらダメよ! せっかく素敵なスキルがあるというのに!」
背後から聞こえる声に思わず振り向く。
そこには、ひとりのコスプレ女が立っていた。
腰までのびる
光り輝く宝石のような
そして、黒いトンガリ帽子に全身を包む黒いワンピースと右手に持つ木の棒。
これぞコスプレ! って感じの格好だった。
なんのアニメかはわからないが魔法使いのキャラだってことはわかる。
「……」
とりあえず関わらないようにしておこう。
コスプレ女のせいでみんなに見られてるし……。
「私の名前はセメコ。タツヒコに会えて嬉しい」
そう言ってコスプレ女、セメコは俺の腕に抱きついた。
「ひえっ! ちょっ、あひゃ!」
突然のことに変な声がでる。
当たってる。柔らかいのが当たってるから。
ちょっ、思春期の十六歳には刺激が強すぎる!
「あー、やっぱりいい匂いね。タツヒコは絶対カッコいいオスになるわ」
わけわからんことを口にして、セメコは俺の制服に顔をうずめる。
っていうか、セメコってなんだよ。名前も言動もふつうじゃない、この女。
「はな……離れて――」
セメコを腕から離そうとしたそのとき、豊満な胸が……。その凶悪な胸の谷間が俺を誘惑する。
ダメだっ! 目が離せないー!
「うふっ。タツヒコはコ・コ・ガ・気になるのかしら」
そう言って胸元を指で広げるセメコ。
グイッ。
うぐっ。 股間が、股間が痛い。
「タツヒコさえよければ恋人になってもいいのよ」
「――!?」
その言葉にピクンと反応する。なにが、とはいわないが。
「いや、でも、まだお互いのこと知らないし……てか、なんで俺の名前知ってんの?」
「私はあっちの世界からタツヒコをずっと見てたの。だから、タツヒコのことならなんでも知ってるわ。ベッドの下にある本の名前とか」
「なっ、なんで俺のお宝を……素人ナンパ! ムチムチギャル特集のことを知ってるんだ!」
そのとき、電車がこちらへ向かうのが見えた。
「残念、もうお別れね。早くたくましくなったタツヒコに会いたいわ」
その瞬間、ドンッと強い衝撃が俺を襲う。
「――えっ」
ゆっくりと身体がホームから離れる。
「「きゃあああああああああああ!」」
悲鳴が聞こえる。みんなこっちを見て震えていた。
そして、一番近くにいたセメコは、
「いってらっしゃい。タツヒコ」
俺に向けて手を振っていた。
まるで、最愛の恋人に再会したような笑顔。
俺はその笑顔に向けて必死に手を伸ばした。
頼む。手を掴んでくれ! 助けて!
いやだあー! 死にたくな――
グシャッ。
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