52:勇者は相棒に翻弄される(1)

召喚された勇者でもあり、ルナリア帝国帝王の奴隷でもあるオレ、<仲河光輝なかがわこうき>は、アルフレッド(アルフォンス)を襲撃してレティシアの前から転移した日の翌日、大量の猫に囲まれていた。


数匹の猫が、オレの膝に乗って気持ちよさそうにしている。



「こいつが、猫じゃなく理奈だったらなぁ・・・・」



猫をなでながら、ついつい日本にいる大好きな恋人に思いをはせてしまう。

もう2ヶ月以上も会ってないので、当然だ。


思った以上に会えないのはキツかった。

せめて写真だけでも持ってこられれば良かった。


理奈がオレの膝で幸せそうに寝ているのを想像する。

オレが撫でたら、顔を真っ赤にして上目遣いで見上げるかもしれない。



「うわっ・・色々もたないな・・・」



想像の中の理奈の威力が凄まじく、思わず手で口を抑えてしまう。

ハーフのせいで、白い肌が真っ赤になっているのが自分で分かる。

オレが少し動揺したせいか、膝がゆれた。猫が「にゃー」と少し不機嫌そうに鳴く。



「早いところ、女神の願い<加護持ち>を<ルナリア帝国>の<玉座>に座らせるをかなえて、日本に帰らなきゃな」



召喚された当時の<理奈との年齢差>をなくすため7年間はこちらにいる、という選択はもうオレの中にはなかった。なるべく早く帰らなくてはならない。


少し不機嫌になった猫をなだめる様になでながら、そんなことを呟く。


そもそもなんでいま、オレがこの迷宮都市<アッシド>の片隅にある小さな一軒家で大量の猫に囲まれているかというと、話は数刻前にさかのぼる。


この一軒家で、<相棒、兼監視役>の紫色の長い髪を持つ、片目を眼帯で覆っている小柄な女性<ベルタ>と、暗殺協力のため一時潜伏しているのは既出のとおりだ。


・・・・・・・そして、彼女が<重度の猫狂い>であることも既出のとおりだろう。

だから、元々この家には大量の猫がいて、彼女が面倒を見ていた。


・・・しかしいま大量の猫の面倒をオレに押し付け、ベルタは出かけてしまったのだ。


この街にいる<フレデリック・フランシス>に会いに行くと言い放って。

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