44:勇者の過去(5)勇者のチート能力
それからの日々は、まぁ一言でいえば・・・・順調だった。
勉強の中で、世界のざっくりとした<地図>とルナリア帝国の<地図>を見ることができたのはかなりの収穫だったし、訓練でこの世界の騎士・兵士の力を知ることが出来たのは、いざという時に逃げる助けになりそうだ。
自分の実力もみんなが寝静まる深夜に様々な場所に転移して、実験することで分かった。
なぜ<午後の訓練中>ではなく、<深夜に一人>で確認したのかというと・・・・やはりこの国の王様を信用できそうにないと感じたからだ。
例えば、最初につけさせられた<腕輪>。
<勇者の身分の証明>のためだとつけさせられたが、これを極力見せないようにと言われたのだ。
「貴殿が勇者であると分かると国の危機だと混乱になる恐れがあるから」・・・と。
ならば、なぜ最初につけさせたのだと・・・・・・かなり腑に落ちない。
それに、こっそり一緒に訓練をしている兵士に見せたところ「キレイな腕輪ですね」と褒められただけで「勇者」の「ゆ」の字も出なかった。
そういうわけで、訓練をしてくれている
・・・・で、その深夜実験の結果、<転移>と<治癒魔法>はゲームと同様のことができ、<素早さ>もなかなかの再現度だということが分かった。
もちろんほとんどできる人がいないという<詠唱省略>だって問題なくできたし、特に<サムド>は治癒魔法のレベルをカンストさせていたせいか、その能力の再現度は規格外だった。
また訓練さえすれば、<サムド>ではできなかった能力が芽生えることも知ることができた。
最初、うまく扱えなかった剣も数日後には一般兵士と同等くらいには扱えるようになるくらい。
女神が授けた能力に、勇者補正か何かがあるのかもしれない。
<サムド>では取得していなかった<時空魔法>も練習すれば、そのうち出来そうな気がする。
元々、VRMMOのアクションゲームにかなりハマっていたオレは、こんな感じで、今後の方向性が色々見えたこともあり、召喚された当初より、俄然楽しく過ごしていた。
そんな折だった。
ーーーー王様・・・いやルナリア帝国の帝王に呼ばれたのは。
呼ばれた場所は<玉座の間>。
第一の目標が<玉座の位置を正確に把握すること>だったので、早々に第一目標をクリアすべく意気揚々と出向いたオレは・・・・またもや帝王の言葉に戦慄した・・・・。
玉座に座った帝王は、朗らかに笑みを浮かべてオレにこう言った。
「この1か月で勇者様の素晴らしい実力が分かりました。・・・・そろそろ本番の練習のために、1人暗殺してほしいのですが、いかがでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます