第4話
「あんたが月形? なんかイメージしてたのと違うけど」
素直な感想を口にすると、前から突然ピンクのチョークが飛んできた。
「……っ!? 何すんだよ、危ねーな!」
とっさに交わして教卓にいるやつを睨む。
するとそいつはチョークを投げたままのポーズで、俺を睨み返してきた。
「無礼者がッ! ”月形さん”と呼べ!」
「どうして同じ2年に、さん付けしなきゃいけないんだ」
「月形さんはな、去年の弁論大会で全国3位に入賞しているんだ! さらに高校生直木賞では選考委員長を務めているんだぞ! その他一般の2年生とは格が違う!」
チョーク男は顔を真っ赤にしながら、おかっぱ頭を振り乱す。
もう1人教室にいるやつも、チョークの演説への同意を示すように小さく頷いていた。
「しかし、3位ってまた中途半端な……」
つぶやくと、チョーク男がまたチョークを構える。
「なんだと!? そばかす、もう1回言ってみろ!」
「そばかすって俺かよ……」
別に気にしているわけでもないんだが、蔑むように言われてカチンときた。
「お前以外いないだろ、よくもその顔で堂々と月形さんのそばに立てるな」
「俺もこいつもそんな変わんねーだろ!」
月形はよく見れば整った顔立ちをしているが、ぱっと見は普通に地味だ。
キッズモデルがそのまま成長したような、言ってしまえばそんな感じか。
さすがに美形というのとは違う。
しかしチョークの目には、相当に麗しく映っているらしい。
「お前ッ……目玉腐ってんのか!?」
また新しいチョークが飛んできた。
「わっ!?」
ぶつかると思った瞬間、顔の前に腕が伸びてくる。
「やめなよ」
チョークをキャッチして言ったのは、話題にされている月形本人だった。
案外、反射神経はいいらしい。
「別に呼び捨てでいいよ。それに確かに、3位は中途半端だった」
ため息交じりに言われて、どう反応していいか分からない。
「それから僕は、泉くんのそばかすはなかなかいいと思う」
「なんだそれ……」
セルフレームの奥の瞳に微笑まれ、さらにどうしていいか分からなくなった。
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