10

仕事が終わって、オフィスの入っているビルのエレベーターで下まで降りる。

まばらに人が往き来する中で、ふいに名前を呼ばれた気がして立ち止まった。

キョロキョロと回りを見回していると、


「村田先輩」


先程よりもはっきりした声で呼ばれ。

そこに立っていたのは、竹内くんだった。


「竹内…くん?」

「お久しぶりです」

「ほんとに、久しぶり。どうしてここに?」

「俺、このビルに入ってる会社で働いてるんです」

「えっ?!私もだよ。びっくり…」


竹内くんは、10年経っても変わらずキラキラしていた。

あの頃よりも少しだけ大人びた顔にスーツがよく似合っていて、思わず口をついて出た。


「相変わらず、爽やかイケメンだね」


言って、ハッとなる。

竹内くんにこんな軽口を叩いたのは、いつ以来だろう。


「先輩、変わってないですね」


クスリと笑う竹内くんも、なんら変わっていなかった。

あの時と同じ、爽やかイケメンで、そして優しい雰囲気。

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