103「帰還」②
「お父さん! よかった、みんな無事だ!」
レダの腕の中に愛娘が飛び込んできた。
「おかえり、父さん!」
「――ただいま、ミナ」
ミナの小さな身体を抱きしめて、ようやく帰ってこられたのだと実感する。
仲間が欠けることなく、災厄の獣という物語に出てくるような獣に勝利したのだ。
「怪我してる!?」
「してないよ、ちゃんと治したよ。でも、さすがに体力と気力が限界かな」
ははは、と娘の前だから無理して笑ってみせるが、身体中が悲鳴をあげている自覚はある。
「ちょっと、ミナったら! 先に行ったら危ないでしょって――パパ!?」
ミナを追いかけてきたルナもレダを見つけて走ってくる。
「パパ! よかった、パパ!」
ミナに続いてルナも腕の中に飛び込んできてくれた。
「ははは、ただいま」
「おかえりなさい! 無事でよかったぁ! ていうか、どうして聖属性の訓練からいきなり災厄の獣とのバトルになってるのよぉ!」
「それは俺もびっくりだったよ」
「とにかく、街に戻りましょう!」
「そうだね、帰ろう」
ふらつくレダを、ミナとルナが小さな身体で支えてくれる。
「愛されてるじゃねえか、レダ」
「そりゃ新婚ですものぉ。っていうか、テックスおじさんを含めてみんな疲れているわね」
「まあな。災厄の獣とやりあって疲れている、で済んだのなら御の字だ。嬢ちゃんにも見せてやりたかったぜ、あのおっかない獣をよ」
テックスたちも大きく消耗していることに気づき、ルナが目を丸くした。
勇者であるナオミも、支えられていなければ満足に歩けないほど消耗しているのだ。
ルナは、レダとナオミがこうも弱った姿を見たことがなかっただけに驚きは大きいようだ。
「荷台を持ってくればよかったわねぇ。――って、エンジーはもうダウンしているのね」
「エンジーは頑張ってくれたよ。魔力も体力も、気力も限界を超えて戦ってくれた」
「ふぅん。エンジーの戦うところって想像できないんですけどぉ。――でも、愛の力は偉大ね」
「愛?」
「それはいずれわかるわよぉ」
片目を瞑って笑うルナだった。
レダは疲れのせいで思考が上手くまとまらないので、考えることを放棄した。
いずれわかるのであれば、それでいい。
「エンジー! 大丈夫!? 死んでないよね!?」
愛娘が離れ、仲間たちに引きずられているエンジーに走っていく。
少しだけ寂しかった。
「くくく、レダ。エンジーにミナの嬢ちゃんを取られちまったなぁ」
「……テックスさん、今の俺は弱っているので……泣けますよ」
「はいはい、泣かないの。かわいい奥さんがここにいるじゃない! 街にはヒルデも、ヴァレリーもアストリットもいるわよ。パパたちのために食事を作って、いつでも帰ってこられるようにしているんだから」
「そっか。なら、早く帰らない……と」
「――パパ?」
目が霞む。
ミナとルナの顔を見ていたら、張り詰めていた糸が切れてしまったようだ。
「ちょ、パパ!?」
「ごめん、俺……もう、限界」
限界が訪れたレダは意識を手放したのだった。
〜〜あとがき〜〜
目が覚めたら事後処理が待っています!
魔石の行方など、問題は結構あります!
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