101「戦利品」②




「どうします、この魔石?」


 恐る恐るレダが尋ねると、まずルルウッドをはじめ治癒士たちは顔を逸らした。

 あくまでも治癒士として扱っているが、彼らは貴族だ。

 魔石の価値をよく知っているのだろう。


「私はいらないのだ!」

「我も、可愛いにゃんこの身に魔石など必要ない」


 ナオミとノワールは、興味ないとばかりに「いらない」と言った。


「テックスさん」

「……レダよぉ、俺にこんなもんどうしろって言うんだよ」

「じゃあ、どうしましょう?」


 テックスは困った顔をする。

 いらないという気持ちもあるようだが、扱いに困ると言うのが彼の顔から見て取れた。


「どうするって、なあ?」

「我的には、レダとエンジー、ナオミの誰かが引き受けるべきではないかと思っている。いや、三人全員が所有しても価値としてはお釣りがくるな」

「いやいやいやいや、こんな大きな魔石を所有なんてできないし、したくないから!」


 レダは慌てた。

 国宝級の魔石を手に入れたら人生が狂う。

 仮に、レダがお調子者で魔石を金に変えて贅の限りを尽くしても一生遊んで暮らせるだろう。

 そんな高価なものなどいらない。


 レダは今の生活が好きだ。

 その生活が壊れるような物は正直いらなかった。


「いいことを思いついたぜ、レダのアイテムボックスに突っ込んでみんなで存在を忘れるんだ。それでいいじゃねえか」

「――さすがテックスさん、そうしましょう!」


 魔石は放置できないので、アイテムボックスにしまってしまえばいい。

 魔石のことは忘れ、災厄の獣を倒したことを喜んでアムルスに戻ろう。


「じゃあ、魔石をしまって災厄の獣を倒したところからやり直しということで」

「あの、レダ先生」

「ルルウッド、もしかしてこの魔石を引き受けてくれるかな?」

「い、いえ、さすがにそれは困ります。そうではなく……私は治癒士であり、それ以下でも以上でもないと決めておりますが……実家は貴族です」

「うん」

「貴族の立場からすると、さすがにその魔石をなかったことにするのはどうかと思います。ギルドや国に渡れば、その魔石は様々なことに利用されるはずです。良い意味でも悪い意味でも、と言わなければいけないのが嫌な話ですが、人々にとっても利はあるはずです」

「言いたいことはわかるよ」


 ただ、誰にどう渡すか、だ。

 冒険者ギルドに持って行ったら大騒ぎだ。

 できれば秘密裏がいい。

 献上でもなんでもいいから自分たちの手から離れて欲しい。


「――そうだ。ティーダ様に献上しよう!」


 レダは自分の手には負えない魔石を丸投げすることを決めた。






 〜〜あとがき〜〜

 ようやく帰れます!

 実は、魔石は災厄の獣からのプレゼント的な感じでした。

 まさか持て余すとは、と。


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