96「全力の回復魔術」①
まるで攻撃魔術のようにレダたちは、ヒールを撃った。
回復魔術は飛ばすことができる。ただ、患者を前に飛ばす必要がなく、真偽は不明だが離れれば離れるほど効果が薄れるという話があるためわざわざ飛ばす者はいない。
広い範囲で回復魔術を行うのならば「エリアヒール」がある。
だが、今回は違う。
災厄の獣を癒すのではなく、倒すために回復魔術を撃つのだ。
光の筋が災厄の獣に向かった。
ルルウッドたちの聖属性を持たない回復魔術は、獣が産んだモンスターを貫き散りにした。
「――よし!」
視界の端でノワールがガッツポーズをしていた。
レダとエンジーの聖属性が込められた回復魔術は、災厄の獣に届き、その巨体を焼いた。
「――――――――――――――――」
つんざくような絶叫が響く。
どんな攻撃よりも、ダメージを受けたのだろう。
今までにない、叫びだった。
鼓膜がどうにかなってしまいそうだったが、耐える。
「いける! いけるぞ! 治癒士たちよ! 君たちは、レダとエンジーのための我々と共に露払いをしてもらう! レダ! エンジー! 任せた!」
「――ああ! やってやるさ!」
「――頑張ります!」
ノワールが大剣を構えモンスターに突進していく。
大剣を振るいモンスターを斬り飛ばす姿は、魔王の名に相応しい荒々しいものだった。
「私も負けないのだ!」
ナオミが聖剣を振り回す。
彼女が一振りするだけで、モンスターが複数体絶命する。
かつて敵対した勇者ナオミと元魔王ノワールが共に戦う姿を見ることができたレダは、すごいことが起きていると思った。
「んじゃ、まあ、あとは頼んだぜ!」
「テックスさん! 気をつけて!」
「ははははは! 安心しな、もうミスはしねえさ。元魔王様が対災厄の獣用の魔剣をくれたしな。まあ、獣には効果はないようだが、奴さんが産んだモンスターには従分通じるってさ! じゃあ、さっさと片付けて酒でも飲もうぜ!」
「はい!」
「エンジー! お前も、立派な男だ! 頑張れよ!」
「ありがとうございます!」
レダに親指を立てて、エンジーの背を叩いたテックスも唸りをあげてモンスターの中に突進した。
「よし。エンジー」
「はい!」
「俺はもう疲れたから、さっさと獣を倒して街に帰ろう」
「――はい!」
笑いながら、ふたりは魔力を全て解放した。
レダも規格外だが、エンジーも負けていない。
頷き合い、そろって声を上げた。
「――エクストラヒール!」
ふたりができる最大の回復魔術を獣に向かって放った。
〜〜あとがき〜〜
そろそろ獣との戦いも終盤です。
イベントはまだまだ続きますので、お楽しみに!
私ごとですが、本日誕生日デス!
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