66「新たな聖属性持ち」②
目を白黒させるエンジーの背後にいつの間にか移動していたナオミが、彼の腰を掴んで抱き上げる。
「ちょちょちょちょ、なんですかぁ!?」
「聖属性持ちの戦力ゲットなのだー!」
「待ってください、言っている意味がまるでわからな……戦力!? 戦力ってどういう意味ですか!? もしかして、僕って戦うことになるんですか!?」
「理解が早くて助かるのだ!」
「まってまってまってまって! 無理無理無理無理無理! 僕は治癒士ですから! しかも見習いです! 前線は無理です!」
「安心するのだ! 最前線なのだ!」
「もっと無理ですからぁあああああああああああああああああ!」
エンジーを逃すまいとするナオミだったが、このままでは話が進まない。
レダが間に入る。
「ナオミ、エンジーが困っているから話してあげて」
「……わかったのだ」
「エンジー大丈夫かい?」
「あ、はい。ありがとうございます。それにしても、聖属性とか戦力とかどういう意味ですか?」
「気になるのはわかるんだけど、外でする話じゃないから。冒険者ギルドは落ち着いているかな?」
「え、ええ。仲間を失っているので皆さん沈んでいますが、もう混乱もないようで、落ち着いていると思います」
「そっか。ならよかっ――いや、良いとはいえないね。冒険者ギルドが落ち着いているのなら、部屋を借りて話をしよう」
「わ、わわ、わかりました」
不安そうにするエンジーの背中を軽く叩き、レダは冒険者ギルドの中にはいる。
レダとナオミを見つけた冒険者ギルド職員が小走りで駆け寄り挨拶をしてくれる。
職員に頼んで、話がしたいので部屋を貸して欲しいと願うと、密談をしたいと察したのか防音に優れた部屋に案内してくれた。
職員にお礼を言って、レダたちは部屋の中に入るとそれぞれ椅子に座る。
「エンジー。食事はちゃんと食べたかな?」
「いえ、少しだけ。正直、食欲がなくて。でも、ミナ先輩がちゃんと食べないといけないって言ってくださったので、頑張って食べました」
エンジーの言葉に笑みが漏れる。
ミナはレダの一番弟子であると自負しているようだ。
もちろん、そのことで威張ったりすることはないのだが、幼い彼女から見てもエンジーはいろいろ気になるようで、なにかと声をかけたり世話を焼くことがある。
姉と弟のようで微笑ましく思っている。
「よかった。治癒士も魔術師と変わらないからね。やっぱり資本は身体だよ。ちゃんと食べて、しっかり休んで、身体を万全な状態にしておくのは……若いとつい疎かになると思うけど、頑張っていこう」
「はい! えっと、それで」
「うん。気になることを話すよ」
ナオミに目配せをすると、彼女は頷いた。
冒険者ギルド職員を信じていないわけではないが、万が一もある。
だが、聞き耳を立てているような者はいないようだ。
災厄の獣に関してはいずれわかることなので隠すことではないが、エンジーが聖属性を持つことは隠しておきたい。
彼の性格上、いや、経験上も含めて、全線で戦うことは難しいとレダは考えている。しかし、戦える力があるのに戦わない結果――不満を言われることがある。仲間を失った者にとっては、より感情的になってしまう可能性だってある。
(災厄の獣が来なければ……いや、現実逃避はやめよう)
レダはゆっくりと口を開いた。
〜〜あとがき〜〜
エンジーくんは今後メインのひとりとして物語に絡んできますので、応援していただけますと幸いです。
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