40「大きな挑戦」②
――髪の復活。
数多の魔術師、数多の治癒士が挑戦し、失敗してきた難題。
いつの時代でも権力者たちは失った髪を求めて、髪を取り戻す手段を探していた。
――嘘か本当か、死者を生き返らせるよりも難しい、とまで言われている。
現代においても、すべての国で髪の復活は研究されている。
冒険者ギルドをはじめ、各ギルドでも髪の復活は依頼されている。
辺境の地で、「髪の復活」を「神の復活」と勘違いした冒険者が、古の邪神を復活させてしまい大事件となったこともある。
この大事件を解決したナオミ・ダニエルズが勇者として大きく名を世界に知らしめた。
レダたちが住まう国でも、髪の復活は永遠のテーマとして研究がされている。
噂では、髪の復活を可能とした者には爵位と勲章が準備されているという。
髪に悩んでいるのは、男性が主だ。しかし、女性も髪には悩む。
男は髪を失っていくというわかりやすい悩みだが、女性も髪を失う場合もあるが、それ以上に白髪が増えるのを嫌う。
特に髪の美しさを自慢にしている貴族の女性ほど、白髪を嫌うのだ。
黒髪ならば染めることもできるが、金髪や銀髪、ほのかに色がついた髪が白くなると同じように染めることはできない。
髪がなくなって諦めがつく男性とは違い、女性の戦いは続くのだ。
そんな髪の悩みに挑戦しようとするのは、レダ・ディクソン。
アムルスが誇る治癒士であり、治療が不可能とされたアストリット王女、ヴァレリー辺境伯令嬢を治療した手腕は国の外まで名が轟いている。
「さすがレダ殿! 快諾してくださるとは、心強い!」
「いえ、そんな。ひとりの治癒士として見過ごすことができない永遠のテーマだと思っていました」
「……素晴らしい心構えじゃ。レダ殿は、わかっておられる」
固く手を握り合うレダとドニーに、ルナたちがなんとも言えない目を向ける。
「パパぁ」
ルナの呆れが混ざった声を、ハッと、我に帰ったレダは、聞かれてもいないのに言い訳を始めた。
「る、ルナ、違うんだよ。俺はその、治癒士としての向上心をだね」
「……パパが毎朝毎晩鏡と睨めっこしているのは知っているんだけどぉ」
「……そうでした」
レダは、毎日生え際のチェックをしている。
レダも三十過ぎの男だ。
生え際が気にならないわけがない。
「パパったらぁ。別に禿げてないのに……気にするほうが禿げるっていうじゃなぃ?」
「そう言われても、気にしちゃうんだよ」
肩を落とすレダ。
髪がなくなってもいいと割り切るには若かった。
「おとうさん」
「うん?」
食事を終えて口元をナプキンで吹いたミナが、天使のような笑顔を浮かべた。
「髪の毛がなくなってもおとうさんはかっこいいよ!」
「……ありがとう」
なぜか涙が出そうになった。
〜〜あとがき〜〜
永遠のテーマだと思います!
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