38「ドニー・ウェインという老人」③




「……ドニーさん……あなたは何者なんですか?」


 大司教といえば、レダにとっては雲の上の人である。

 そんな人物と親友と言ってしまうドニーに、レダは困惑を抱いてしまった。


「わしはしがない治癒士じゃて。ただ、大司教の――ディロンとは幼い頃から兄弟同然で育ったのだよ。わしは冒険者となり、回復ギルドを立ち上げ、ディロンは教会に入り今では大司教だ。まったく、随分と差がついてしまったものだ」


 かかか、と笑うドニーは明日の天気でも話すように、続けてとんでもないことを言った。


「ついでに言っておくと、わしがこの街にきたのは、修行中に飛び出していきおった弟子の結婚を祝うためと、――大司教ディロンにレダ・ディクソンという治癒士がどのような人物か見極めてほしいと頼まれたからだよ」

「…………な」


 レダたちは硬直する。

 特にレダは心臓の動きが速くなったのを感じた。

 大司教が自分のことを認識しているだけでも驚きなのに、回復ギルドの創設者の一人であるドニーに「見極める」ように頼んだことを知り、どう反応していいのかわからなかった。


「俺をなぜ?」


 なんとか絞り出した言葉はそれだけだった。


「そう緊張するでない。レダ・ディクソンの名は王都にも轟いておる。今まで聞いたことのない名が急に広がったのだ。気にならないわけがないではないか」

「それでぇ? おじいちゃんは大司教になんて報告するつもりなのぉ?」


 警戒を込めてルナが尋ねると、ドニーはにぃっと笑った。


「――レダ・ディクソンは能力的には歴代の治癒士たちを超える素晴らしい力の持ち主であり、人格的にも尊敬できる青年である、と」

「……ドニーさん」

「ほっほっほっほ、教会から正式にスカウトが来るかもしれんが、それはそれということでのう。まあ、お前さんはこの街の診療所で走り回っているくらいでちょうどええじゃろう。王都でお前さんの力を欲する者はいるのだろうが、王都は狭すぎる」

「できることなら、俺もこの街に骨を埋めたいと思っています」

「今、多くの民に必要とされているのがレダ・ディクソン殿のような安心と信頼を持つ治癒士じゃ。どうか、この地の人々を救い続けてほしい」

「はい。お約束します」


 レダの答えに満足したドニーは、目尻を深くした。


「いい返事じゃ。では、無粋な輩もいなくなったので、飲みにいこうではないか! 聖女殿もいかがかな?」

「よろしいのですか?」

「聖女殿はお酒が好きと聞いおるが?」

「お酒は大好きです!」

「ほっほっほっほ、今日は楽しい夜になりそうじゃのう!」


 こうしてトラブルはあったものの、ディアンヌを連れてレダたちはレストランに向かった。






 〜〜あとがき〜〜

 とりあえず教会に関しては、ちょっと置くとして。

 次回はまったり飲み会です!


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 ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!

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