33「教会とのコンタクト」①
一日の仕事が終わり、すっかりアムルスの街並みが雰囲気を変えた。
空は暗くなり、家屋や商店に灯りが灯った。
酒場も賑わいを見せはじめ、冒険者たちも街に帰ってくる。
「今日も一日お疲れ様でした」
今日は怪我人こそ多かったが、重症者はおらず、死者も出ていない。
忙しかったが、悪くない日だった。
「レダ殿、そなたは良き治癒士じゃ。精進なさい。もう少し魔力の制御を繊細に行うことができれば、負担は減るだろうし、呼吸をするように治癒魔法が使えるようになるだろう」
「ありがとうございます、ドニー様。精進します」
一日、レダの治癒を見ていたドニーが、そう褒め、助言をした。
レダは素直に言葉を受け取り、お礼を言う。
治癒士として師匠がいないレダには、彼の言葉がありがたかった。
「わしの愛読している書物を何冊かお貸ししよう。きっとためになるであろう」
「重ね重ねありがとうございます」
「よいよい。レダ殿のような才能ある治癒士を成長を手助けできることなどそうそうないだろうしのう」
ドニーは朗らかに笑っい、エンジー、ポール、アメリアにも言葉をかけていく。
「エンジーは、もう少し相手の目を見て治療するとよい。患者は治癒を施される以前に、安心も求めているのでのう。人見知りは大変だろうが、精進なさい」
「は、はい!」
エンジーは背筋を正し、返事をする。
「ポール殿は、基本に忠実で良い治癒士だ。経験を重ね、応用ができるようになれば格段と成長するだろうのう」
「ありがたいお言葉です」
ポールは深々と礼をした。
「アメリア嬢は、もっと柔軟にのう。そなたは少々生真面目すぎる。怪我をした患者に怖い顔をしたらいかんぞ」
「……はい。気をつけます」
怖い顔、と言われてしまったアメリアは、自らの顔を触ると、少し落ち込んだ顔をした。
「おっと、すまぬすまぬ。レダ殿の診療所で偉そうにしてしまったのう。まったくこれだから年を取るといかん」
「いいえ、ご助言に感謝します」
長い時間、治癒士をしてきたドニーの言葉は、レダだけではなく、みんなの成長につながるだろう。
ありがたく、お言葉を頂戴する。
「しかし、この診療所の在り方は素晴らしい。夜中であろうと、患者を見るのだろう? これほど隣人に寄り添う治癒士もおるまいて。のう、ネクセン」
「私だって、患者に寄り添っております!」
「わかっとるわかっとる」
診療所に一晩いるわけではないが、住まいが診療所に二階にあるため、夜中でもレダは患者の対応をしている。
交代でネクセンとユーリが診療所に泊まってくれるので、レダばかりに負担があるわけではない。
仲間と一緒に診療所を運営しているからこそ、できることだ。
「今夜はレダ殿が夜の治療に備えると聞いているので、酒とは言えんが、食事くらいはよいだろう。皆で食べにいこう。わしが奢ってやろう」
ドニーが提案すると、ネクセンたちが喜んだ。
「あ、あの、お仕事終わりに申し訳ございません」
そんな時だった。
診療所の扉から、ミナの母であり聖女でもあるディアンヌがのぞいていた。
「ディアンヌさん?」
「これはこれは聖女殿」
レダが扉を開け、入ってもらうと、彼女の後ろに見知らぬ男女がいた。
「えっと」
「レダさん、申し訳ございません。教会の方が、レダ様と一度お話をしたいと」
少し困り顔でディアンヌがレダに頭を下げた。
〜〜あとがき〜〜
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