20「ティーダとシェイプ」





「魔王様の忠実な僕――四天王がひとり幻影のシェイプと申します」

「ようこそ、シェイプ殿。私は、ティーダ・アムルス・ローデンヴァルトと申します」

「魔族の私とこうしてお会いしてくださること、感謝いたします」


 執務室でティーダとシェイプは対面していた。

 ノワールとレダが付き添い、ナオミの代わりに冒険者テックスがティーダの護衛として控えている。


 万が一のことはないとノワールが約束しているが、それでもティーダにも立場がある。

 ノワールが最悪のことが起きる前にシェイプを攻撃すると約束し、護衛に信頼の厚いテックスがつくこと、そしてレダもシェイプの背後に立っていつでも魔術を使えるようにすることで、面会が成立した。


「こちらこそ、このような警戒をすることによって申し訳ない。現在、この街は不安定でね。そんな状況下で私に何かあったら大混乱となる。ご理解いただきたい」

「もちろんです」


 まず、挨拶は無事に終わった。

 ティーダが緊張しているのがわかる。

 テックスも警戒をはっきり浮かべている。飄々としているテックスがこうも内面を出すのは珍しい。


「ノワール殿が魔王であったことは疑っていないが、よもや四天王のシェイプ殿まで訪れるとは夢にも思っていなかったよ」

「わたくしは魔王様の忠臣ですゆえ、魔王様がいる場所ならばどこでも向かいます。無論、ご迷惑をかけるつもりはございません」

「それはありがたい」

「ですが、わたくしも魔族の上に立つ四天王のひとりとして、人間側に和平を望みたいのです」

「和平、か」

「もちろん。簡単にはできないでしょう。人間も魔族も、犠牲は多い。和平を望まない者もいるでしょう。しかし、今だからこそ、とわたくしは思っています」

「と、言うと?」


 興味深そうに尋ねるティーダに、ノワールに目配せをしたシェイプは告げた。


「ゆ、ゆゆゆ、勇者様の存在が大きいのです。魔王様を倒した恐るべき存在が人間サイドにいます。魔族は力こそすべてと思う種族が多いです。ゆゆゆゆゆ、勇者様の存在がある今こそ、魔族は人間たちと和平ができるのです」

「ふむ」

「逆に、新たな魔王が立つ……ありえませんが、そのようなことを起きると、再び戦いが始まってしまう可能性があります。四天王、主要幹部すべてが人間と和平をと望んでいる今こそ! どうか!」


 ティーダは、顎に手を当てて短い時間だが、無言で何かを考える仕草をした。


「シェイプ殿のお話はわかりました。しかし、私は一介の貴族。そして、一国の貴族でしかないのです。この話は王にお伝えしたい」

「もちろんです」

「しかし、残念ではあるが、我が国は和平を飲む可能性はあっても、他国はわからないというのが本音です。魔族と隣接する我が国以外は、比較的魔族との戦いは――他人事なのです。どちらかというと冒険者たちの方が、血気盛んといいますか、魔族と戦うことが多い。犠牲も」

「理解しています。それでも、まずは一歩、和解へ踏み込めることを願います」





 ――こうして、短い時間であったが、ティーダ・アムルス・ローデンヴァルトは、魔王軍四天王幻影のシェイプと会談を叶えたのだった。






 〜〜あとがき〜〜

 そろそろアムルスに戻り、そして王都へ。

 お楽しみに!


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