12「魔王は悩む」
「にゃーん」
元魔王であり、現子猫であるノワールは、屋根の上で伸びをしながら悩んでいた。
「レダはどういう選択肢をするのだろうか?」
死者蘇生の魔術。
魔王として強大な力を持っていたノワールでさえ、使えなかった古の魔術。
長い生の中で死者蘇生を研究したことがないと言ったら嘘になる。
だが、魔王としてのノワールは、簡単な回復魔術を使えても、治癒士としての才能はない。
結局、諦め――というよりも、飽きてしまった。
苦手な分野を伸ばすよりも、得意とする攻撃魔術に特化することで魔王としての地位を磐石なものとして、歯向かう魔族たちを蹂躙していた。
――今なら若気の至りと笑ってしまう。
だが、レダ・ディクソンは心配だ。
ノワールと違い、三十しか生きていない若造だ。
いくら規格外の魔力があっても、死者蘇生を使えたとしても、持て余すのは見えている。
「……この国の王に誰か生き返らせたい者がいるのか? 単純にレダの可能性を見たかったのか、悩ましいな」
この国とは敵対こそしているが、交流はない。
過去には和平を話し合ったりしたこともあったが、交渉は決裂して以来、王は何度も代替わりしている。
もしかしたら、魔王と交流があったことも現在に伝わっていないかもしれない。
「私としては、可愛らしいご主人様が憂う結果にならなければいい。いや、違うな。ご主人様たち家族に、私の大切な家族になにか悪いことにならなければいいだろう」
「――魔王様、ようやく見つけました」
ノワールの背後に、突如ローブを身に纏った何者かが立っていた。
巧妙に隠されているが、人を超えた魔力を持っていることがノワールにはわかった。
「にゃにゃーん?」
なにを思ったのか、ノワールは猫のふりをした。
お腹を上にして、ごろごろと喉を鳴らすという徹底っぷりだ。
「魔王様が可愛らしいことは存じ上げております。猫になったことで可愛らさが増したことをアピールしたいことはご理解しておりますが……」
ローブを羽織った者の声は女性だった。
「違う! 我は可愛いアピールなどしていない!」
「無論です。魔王様はいつでもどこでも可愛らしくございます」
「……よりによって、一番面倒な奴に見つかってしまったな。ご主人たちにご迷惑をかけてしまう予感しかしないんだにゃーん」
女性はフードを外す。
彼女は人と変わりない容姿をしているが、頭部には羊を思わせる角があった。
「魔王様にお使えする四天王――シェイプ。ここに馳せ参じました」
器用に屋根の上で膝をつく女性――四天王シェイプに、ノワールは「やれやれ」と肩をすくめた。
〜〜あとがき〜〜
コミック最新7巻が発売いたしました!
ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!
双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。
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