71「五人目の治癒士」②
レダがアメリアと少しながら言葉を交わし改めて思ったことは、――少し危うい、だった。
彼女は商家出身のおかげか、底辺を這いずったことはないだろう。
底辺に落ちる必要もないが、理想が高いと思ってしまう。
生きていくのに金は必要だ。
怪我人を踏み躙るつもりは毛頭ないが、生きていくのに金は必要であるのは誰でもかわらない。
困っていると人を助けるという善行を当たり前のようにできることは素晴らしい。
治癒士の多くが、助けられる人を見捨てぬとも、大金をせしめることがあるのだ。
アメリアは、当たり前のことを当たり前にできる素晴らしい人だと思う。
――しかし、世の中は綺麗事ばかりでは生きていけないのも事実だった。
レダも救える命は救いたい。
治療費だって最低限でいい。
だが、生きていくためにはお金は必要である。
救えない命もある。
救えるはずが、魔力不足や判断ミスで失うこともあるだろう。
――理想だけでは人は救えない。
(俺も甘いところは毎日反省しているけど、この子はちょっと潔癖と生真面目な感じだから、心配だな)
ただし、アメリアの人柄が嫌いかと言われたら否である。
前に向かってまっすぐ進んで行こうとする姿は好感を抱ける。
若いゆえに、少し頭が固い雰囲気があるが、時間が彼女を柔軟にしてくれると思われた。
(アマンダさんが紹介してくれた治癒士たちは、みんな将来が楽しみというか、俺よりも間違いなく凄い治癒士になるんだろうなぁ)
レダはずっと冒険者だった。
正直にいうと、治癒士の真似事をしたこともあるが、逆にいうとそのくらいしかしたことがなかった。
そんなレダが、今はこうして治癒士の弟子を取ろうとしている。
いろいろな思惑は絡んでいるのだろうが、人生何があるのかわからない。
同僚であるネクセンとユーリは、一人前の治癒士であるため、頼りになる仲間だ。
なので、誰かを育てるということはしたことはない。
基礎ができている治癒士とはいえ、彼女たち五人の今後はレダの影響を受けるだろう。
レダが道を誤れば、離れていくかもしれない。それだけならいいが、一緒に道を誤ってしまう可能性がある。
大きな責任がのし掛かることを自覚した。
(だけど、大丈夫だと思う)
レダは隣にいるティーダと頷き合った。
仮にレダが道を誤っても、止めてくれる友がいる。
道を正してくれる友人がいる。
共に歩んでくれる家族がいる。
ならば――。
レダは覚悟を決めた。
「アメリア」
「は、はい!」
「俺は君たちのことを好意的に思っているし、力を貸してほしいと思っている」
「で、では!」
「うん。前向きに検討させてもらうよ」
「――どうもありがとうございます! 弟子にしていただけるのであれば、絶対に後悔させません!」
嬉しそうに笑顔を浮かべるアメリアを最後に、治癒士五人の面談が終わるのだった。
〜〜あとがき〜〜
新たな登場人物に時間をかけてしまいましたが、そろそろお話が動き出していきます。
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