3「領主様のお願い」③




「それは、その、無理もないですね」


 治癒士は、お世辞にもみんなから好かれる職業ではない。

 レダたちのように一般の人が躊躇わずに治療のできる治療費の設定をしている治癒士など、探してもそうそうに出てこないだろう。

 冒険者は怪我がつきものだ。

 ポーションや薬草、医者にかかることもできるが、それでは仕事に支障が出る場合が多い。

 だからと言って、治癒士に回復魔法を頼むと、高額だ。

 稼いでいる冒険者ならまだしも、治療費が稼げない冒険者にとって、いや、稼げていたとしても高額治療費をふっかけてくる治癒士を恨むな、と言う方が難しいだろう。

 言いたくはないが、殺される理由は十分にあるように思えた。


「レダ。あまり俺が言うようなことじゃないが、治療費が高かったから殺されたわけじゃないぞ」


 レダの考えが顔に出ていたのか、苦笑気味にネクセンが補足する。


「てっきり、そうかと思ったよ」

「……理由の一つであることは否定しないが、一番の問題は負傷者が多すぎるんだ」

「負傷者の数が問題なのか?」

「冒険者の大半が戦闘に関わることになる。戦えば負傷する。無傷で勝てる人間なんて少ないだろう。だが、治癒士も限界がある。魔力を超えた治療はできない」


 ネクセンとティーダが交互に話をしてくれた。

 冒険者が多ければ多いだけ負傷者が出るが、治癒士に限界がある。そのため、救えなかった命もあれば、一命は取り留めても冒険者として再起不能になった者もいる。

 これはどこの街でも同じだ。

 とくに、治癒士の治療は高額なので、治療費が出せない者もいる。

 治癒士の治療の腕の問題もあるかもしれないが、なによりも治癒士の治療を待たずに命を落としてしまう冒険者も多いのだ。


「仲間や家族を失った怒りが治癒士に向かうことも珍しくないんだ」


 今までユーヴィンにいた治癒士は、治療費の問題はさておき、腕はあり、積極的に治療をしていたようだ。

 だが、殺されてしまった。


「……正直、金銭面なら街や冒険者ギルドが工面することもできた。しかし、治癒士が倒れるほど治療をしても、けが人が減らない」

「治癒士が恨みを買うのは常だが、殺される危険がある場所にはいけないんだ」

「最近では、回復ギルドも大きく変わってきたようだが……ユーヴィンに治癒士がきたがらない以上、問題解決しないんだ」


 ティーダはレダに向かって、深く頭を下げた。


「ユーヴィンの街のために、力を貸してくれ!」




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