24「回復ギルドの事情」②



「だから小娘っていうなって言ってるでしょ! それよりも、回復ギルドの悪党ってどういうこと?」


「私も回復ギルドに所属はしているので悪くは言いたくないが、どこにでも金の亡者はいるということだ」


「ふーん。別に驚かないけど」


「私のように腕のいい治癒士が相応の治療費を要求するのならまだ納得ができよう。しかし、愚かな奴らだと腕が対して良くないにも関わらず、王都や地方で荒稼ぎしているのだ」


「なにそれ、やっぱり回復ギルドって最低じゃない!」


「そう言われても反論はできない。だが、治癒士とはそういうものだと教わり、盲信している人間は多い。治癒士の数がそう多くなく、腕が悪くてもそれなりの治療はできるからな」




 ネクセンもかつては高額な治療費を請求する側だったので、その顔は苦い。




「問題は腕の悪い治癒士ではない。それらを取り仕切っている老人たちだ」


「どこにでもいるのね、そういう老害って」


「……お前たちにすればそうとしか思えないんだろうが、同じ治癒士や回復ギルドの人間にとっては、そう悪い人では無いんだ。回復ギルドに長年寄付を続け、治癒士の育成をしていることから、身内からの信頼は厚い」


「ようは身内贔屓ってことでしょ、それ」


「……もっと言葉を選べ、小娘め」




 実際その通りなので、ネクセンもルナに反論はしなかった。




「ていうか、老害はさておき、腕が悪くても儲けられる治癒士ってどうなの? それって、患者は納得してるの?」


「してはいないだろうな。だが、腕が悪くとも、そんな治癒士に頼らなければならない場所もあるということだ」


「一応、補足しておくけど、そんな治癒士だって最低限のことはできるよ」




 黙って話を聞いていたユーリがネクセンを補足する。




「ただし、私のように技術に対して治療費が適切かと問われるとそうでもないのだ」


「最低ね、治癒士って」


「私だってそれなりに治療費は田舎だからと抑えていたんだぞ。回復ギルドの幹部連中など、ちょっとした治療で金貨十枚は平気で取るからな!」


「はぁ、なにそれ!?」




 ルナの驚きは当たり前だ。


 口を挟まず会話を聞いていたレダだって目を丸くしている。


 一度の治療で金貨十枚も取られたら、生活などできない。


 それが命に関わる重傷ならまだ折り合いがつくだろうが、些細な怪我で金貨十枚も取られることに納得する人間はおそらくいないだろう。




「言っておくが、幹部連中と回復ギルドを支配する老人たち、そしてその取り巻きくらいしかそんなことはしていないからな!」


「言いたくないけど、それって結構な人数だよね」


「パパの言うとおりよ! 回復ギルドなんていらないでしょ、それ! ていうか、治癒士なんてパパ以外高額請求じゃない!」


「それでもあの悪党どもよりはマシだ。口では心地いいことを言うので、若手や、職員は騙されるが、私はよく知っている」


「なんでよ?」




 訝しげな顔を向けるルナに、ネクセンは苦々しく告げた。




「私もかつて、その老人たちの弟子だったからだ」






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