京州署刑事課は異常じゃない
みずかん
#chapter1
アイドル(パート1)
彼女は机の上に手を重ねて、黙ってこちらを見た。その雰囲気は心地良いものではない。
殺伐とした、ピリピリとした空気だった。
「総監、何のご用件でしょうか」
「貴女の捜査一課での活躍を見込んで、貴女に今回の任務を任せたいと思っているんだけど…単刀直入に、京州署が悪いことをしていないか、調べてほしいの」
「京州...、というと地方警察本部...」
「ええ...、2年前にあそこの刑事が一人自殺して、一人が逮捕された。けど、あの事件は個人的な私怨に過ぎなかった。だけどここ最近、その組織全体で悪いことを企んでいるんじゃないかってね」
「....」
「何事も無ければそれでいいの。
ただ、貴女にはひとつ、あそこの監視をしてほしいだけ」
「...わかりました」
こうして、私は京州の地へ旅立った。
***
[京州警察署 刑事課]
「本日から京州署に配属になりました。
ハクトウワシ巡査です。よろしくお願いします」
敬礼し、深々と頭を下げた。
「よろしー!私はサーバル、そんな固くならなくていいよ~」
やたらと特徴的な挨拶だった。
本庁のリストで確認していた。
彼女はサーバル警部補。この人物は、逮捕歴が2件もある。うち1件は冤罪だったが、もう1件は実刑を受けている。だが、この点でも妙な所がある。それは話すと長くなるので、機会があれば述べようと思う。
「よろしくね、あたしはカラカル。
あなたのこと“ハクト”って呼んでいい?」
「あ...、ええ、なんでも」
彼女はカラカル巡査部長。高校の時暴力事件を起こして書類送検されている。1年前に大きな事故に遭ったという噂は聞いているが詳細は知らない。
「よろしくお願いします!ハクトウさん!
私、新人のドールって言います!」
元気な挨拶をしてきたのは新米のドール巡査。
特にこれといった問題は聞いてはいない。
「僕がここの課長をしてるかばんです。
何か困った事があったら言ってください」
かばん警部...。
今回の目玉だ。2年前の事件の犯人を逮捕した。そして、私がもっとも警戒している人物。
京州刑事課は“普通じゃない”と言われてる原因は彼女にあると言っても過言ではない。
その闇をえぐり出す事が出来れば、この京州署は無事ではいられないだろう。
***
『空は~飛べないけど~♪』
テレビからは軽快な音楽が流れる。
その前で食い入るように耳を傾ける人物がいた。
「むふふふ...、PPPは最高なのね...!」
『みんなー!どうもありがとうー!』
「私の...モノに出来たらいいのに...」
溜め息を漏らした。
「あ、明日は握手会...!興奮してきた...」
***
私が配属されてから1週間、目立った事件は無かった。
しかし平穏な日々は唐突として、豹変するのだった。
「みんな、聞いて」
「どうしたの?かばんちゃん」
呑気にお茶を飲んでいたサーバルは彼女の焦った声に驚いた様子だった。
「事件ですか!?」
ドールは興味津々に尋ねた。
「何よ?」
「....」
「誘拐事件だ。誘拐されたのはPPPのメンバーのジェーンさん。今のところ、犯人から連絡は入ってない」
「リーダー、どういう状況で誘拐されたの?」
「レッスンの帰り道に誘拐されたそうだけど...。とにかく、事務所の方に行って本部を設置するって形になったから。全員行くよ」
突然発生した、誘拐事件。
私達一同は、PPPの所属する芸能事務所へと急行した...。
ーーーーーーーー
【登場人物】
ハクトウワシ / 巡査部長
警視総監の依頼で京州署に転属になる。
帰国子女であり、英語はそこそこ出来る。
その影響か稀に英語と日本語が混在することも。かばんのことを『リーダー』と呼ぶ。
強い正義感があり、指示に従いつつも、かばんの行う捜査の手法に疑問を抱く。
かばん / 警部
フェネックの後を継いで刑事課の課長となる。
数々の難事件、特にフェネックの死体遺棄事件を解決した功績が称えられ警部補から昇格した。2年経ってもその推理力は衰えを全く見せていない。またリーダーシップも遺憾なく発揮させており、刑事課の連係プレーを円滑にさせている。
サーバル / 警部補
かばんの昇格から繰り上げになる形で副課長のポジションになった。しかし、自身が副課長であるという自覚は全く感じられない。相変わらずカラカルと共に捜査を行うことが多い。
カラカル / 巡査部長
1年前に事故に遭いそれ以前の記憶を失っている。性格も大分様変わりしたが、他人にあだ名を付ける癖は直っていない。本来はカラカルが警部補になる予定だったが、上記の理由で長期休養していたために、サーバルが警部補となった。
ドール / 巡査
1年前に京州署にやってきた新人。
耳が良く、捜査では細かい音を聞き分ける事が出来る。また、射撃が上手く世界大会の代表選手にも内定が決まるほどだったが、自身は辞退している。
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