雪の降る夜に

@0xffffff

第1話

眠れない夜とは、案外ありふれたものだ。


宇宙の始まりが無だったのなら、そこからは何も生まれないのではないか?

そもそも空間も無いというのはどういう状態なのだろうか…。


夕飯を食べながらのんびり見ていたはずの科学番組。いつの間にか汚染されてしまっていた私の深層心理はいつしか世界の本質を求めていたのだった。


ふとベッドから膝立ちになり、窓から星を眺める。

眺めようとした。


一面の銀世界だった。


わぁ、と声が出た。

私の町は珍しい気候で、真冬でも雪が降ることは滅多にないのだ。

確かに今日は、もう昨日か、ニュース番組が巨大寒波だとか積雪だとか言っていた。正直期待なんかしていなかったのだ。「うちの町は空が違う」と諦めていたのだが…。


「うちの町の結界も破れたか…!」


なんてちょっと痛いことを言ってみる。なにせテンション有頂天だ。

今日はもう眠れないだろうと確信して、外に出てみる事にした。


ふかふかのダウンジャケットにこれまた分厚い灰色のパーカーを重ねた私。

ダウンが余った所を寄せ集めて巨乳を演出してみたりした。

玄関の姿見に映った私はセクシービューティフルガール─などとどこかで聞いた歌詞のような事を思い浮かべながらブーツを履いていざ外へ。



極寒ここに極まれり。


顔が、痛い。


息を吸うと肺が凍えそうな、張り詰めた真冬の空気。

手に吐いた息が雲のように広がって、闇に消えてゆく。


顔を上げると、車の屋根には真っ白な雪がこんもりと積もっている。

フェンスにも。植木鉢にも。見るもの全てに雪が積もっている。


空気の冷たさを忘れる程にわくわくしていた。


そして、私は眠れる町へと足を踏み出した。





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