第27話 出発

「ついに林間学校だぁー!!」


 いつもより早く家を出て、駅に向かう。

 集合の30分前だけれど、すでに多くの生徒が集まり始めている。


「いよいよだね、紅葉ちゃん」

「うん」


 ここまで頑張って準備してきたことを知っている桜ちゃんが背中を押してくれる。


「それでは、出発します!」



 ***



 今まで準備を頑張った分、と言うわけではないけれど、私の委員会の仕事は事前準備でほぼ終わっている。あとは林間学校を楽しむだけだ。

 私たちの班の一日目は、毎年学校に協力してくれているらしい山荘で、飯盒炊爨の体験をさせてもらう。


「涼ちゃん、カレーどうする? 闇鍋にする?」

「そんな素材ないでしょ……」

「ルーの代わりに、チョコでも入れようか!」

「来栖は白米抜きね」


 そんな話をしている来栖くんとはーちゃんと、そして涼くんの方を見る。

 ふと、涼くんと目が合う。


「っ……!」


 急に恥ずかしくなって、目を逸らす。

 え、今までこんなのなんてことんかったのに。

 変に気合い入れてるから……?


 涼くんの方を見ると新幹線の窓から景色を眺めている。そんな横顔もかっこいい。

 ……じゃなくって! 涼くんは今、何を考えているのだろうか。

 こうしているうちに目的地に近づいていく。



 ***



 来栖と狩谷とくだらない話をしながら、ふと正面の椅子に座っている紅葉に目を向ける。

 ばっちりと、目が合う。


「っ……!」


 俺は咄嗟に目を逸らして、誤魔化すように車窓から流れる景色を眺める。


「涼ちゃん、わかってるよな?」

「ふじー、勝負だね」


 さっきまで馬鹿話をしていた来栖と狩谷が、ひそひそ話で圧をかけてくる。


「……そんなのわかってるっての」


 謎に緊張感が走る、そんな林間学校の始まりだった。

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