1日だけの想い夢

蝶野ともえ

プロローグ






   プロローグ



 時々、夢を見る。

 昔よく遊びにいった小さな森を、身軽に走る男の子を。いや、女の子かもしれない。

 

 顔はわならないけれど、私がその子の背中をずっと追いかけている夢だった。


 その子の笑い声と、自分が楽しくて笑っているのがわかる。



 そんな自分が小さくなって、ただ森を走り回る。平和で穏やかな夢。



 それなのに、その夢はどこか切なくて、悲しい。



 目が覚めると、ボロボロと泣いているのだ。


 けれど、しばらく経つとその夢の事を忘れてしまう。



 寝ている時に見る夢などそんな物かもしれない。

 その夢を見ると、「あぁ、またこの夢だ」と思い出すぐらいで、他に変わったことも起きる事もなかった。





 だからこそ、年を重ねる毎にその夢の回数が多くなっている事に気づくはずもなかった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る