009 ファーストフード

「言われたものを買ってきたよ」

「はいはいごくろうさ~ん」

 公園から離れた場所にある24時間営業のファーストフード店に、リナ達はいた。

 カウンターで注文している間に、青年にはコンビニまで買い出しを頼んでおいたのだ。流石に身なりはどうしようもないが、あまり傷んでない分、ホームレスとまでは見られないだろう。

「しっかし、なんであんたホームレスなんてやってたのよ?」

「お金がないから」

「たんじゅんなりゆ~」

 コンビニ袋を物色しながら、リナはけらけらと笑った。

 確かに、青年はコンビニで買い物するお金すら持っていなかったから、仕方なしにリナが財布から中身を出して渡したのだ。丁度仕事帰りということもあってか、未だに懐は温かい。

「ほら食べて食べて、男なんだから、ガッツリいけるでしょう」

「……いただきます」

 棒読み口調ながらも、挨拶はきちんとできている。元は育ちがよかったんだろうな~とリナは自分のドリンクに口をつけた。みるみるなくなっていく食べ物を見て、思わず自分の分にも手を掛けた。

「これも食べていいよ~夜中に食べると太るし」

「うん、ありがとう」

 礼を言うと、青年は押し出された食べ物にすぐさまがっついた。

 ほとんど食べてなかったのか、すごい食欲である。

「ごちそうさまでした」

「はいおそまつ~」

 時間潰しに立ち読みした週刊漫画の台詞で返してから、リナもドリンクを飲み干した。

「そんで、あんたこれからどうするの?」

「どうする、って言われても……」

 まあ、そりゃそっか。とリナは思った。

 ホームレスでしか生きられない以上、何処かに住み着くしかないのだ。まあ先程の公園は今荒れているから、しばらくは近寄れないだろうが。

「ところで」

「ん~?」

 今度は青年から話を振って来た。

「君は一体何者?」

「ワタシ、そうだね~」

 そう言われても、自分自身どう説明したらいいのかが分からない。

 とりあえず状況整理も兼ねて、リナは順番に話すことにした。

「一応高校生だったんだけどね。母親が蒸発だっけ、まあいなくなっちゃったから、仕方なしに援交で生計立ててる、ってところかな」

「……気持ち悪くないの?」

「おっ、その質問は初めてだね~」

 普通は真っ当な生き方はできないのか、って聞かれるけどね~。

 とリナは軽く返してから、その質問に答えた。

「まあ、セックスはそこまで嫌いじゃないからね。性病持ちとかじゃなければ存外悪くないし。……もっとも」

「うん?」




「その初体験も……記憶にないんだけどさ」




 不思議そうに見つめる青年と、何で話したんだろうな、と苦笑するリナ。

「なんていうかね、中学の半ばくらいだとは思うんだけどさ~。それ以前のエピソード記憶ってのがぽっかりなくなってるんだよね~」

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