006 銃
「へえ、クロって銃の整備もできたんだ~」
「煙草を咥えたまま近づかないで。引火するかもしれないから」
「しんぱいしょ~」
現金も数え終え、食事も済ませた以上、後は寝るだけだという時、クロはリナに銃を渡すように言った。
最初は訝しんだリナだが、弾は抜いていいと言われたので、言うとおりにして渡したのだ。
そして就寝後、先に起きていたクロが何をしているのかと覗いてみれば、なんと拳銃を分解整備していたのだ。これには飼い主であるリナも驚きを隠せないでいる。
「結構見様見真似だけど、危険物さえなければ機械ってそう変わらないよ。だから整備位なら結構どうにでもなるんだ」
「ふ~ん。あ、銃身内にも油を塗っといてね。道具はそこの綿棒を伸ばしたやつだから」
「了解、もうすぐ終わるから」
見学をやめ、リナは少し離れたところで煙草を吸い始めた。灰皿を片手にやることもなしに、再びクロの方を見つめている。
「……そういえば」
「ん?」
今日はもう休みかな、と鳴らないアップルフォンを引っ張り出そうとすると、クロの方から話しかけてきた。
「この銃、何処で手に入れたの?」
「……ああ、買ったのよ。それ」
灰皿に煙草を捨ててもう一本を口に咥えながら、視線だけをアップルフォンに落としてリナは語りだした。
「援交始めた頃に取った客の中には、今でも定期的に買ってくれる人が何人かいてね。その中にやばい物捌いてる売人も混ざってたのよ。……んで、偶に買われる代わりに銃や弾を都合してもらってたってわけ」
そういえば、もうそろそろ来るかな。そう考えているとリナのアップルフォンが鳴った。
「は~い、もしも~し。うん、りょうか~い……噂をすれば影ってね。次いでだから弾も多めに貰ってくるわ」
「銃の売人?」
「そうそう。そのくせ『口だけでいい』とか言ってさ。何考えてんだろ~ね」
それでも仕事は仕事だ。
さっそくいつもの制服に着替え終え、繕うのが間に合わなかったので、予備のスクバを引っ張り出した頃には、クロの拳銃整備も終わっていた。
「なんなら、クロの分も買ってこよっか?」
「別にいいよ。……それよりも、信用できるのなら、銃の整備がうまくいっているか確認してもらってくれないかな。正直初めてな分、不安なんだよね」
「はいは~い。……にしても」
リナは座り込んで工具を片付けているクロを、腰を折って下からその顔を見上げた。
「クロも心配になることとかあるんだ~」
「それは……飼い主様の心配位はするよ」
「にゃるほどね~」
納得したのか、リナはさっさとローファーを履いた。
「じゃあいってきま~す」
「いってらっしゃい」
クロに軽く手を振って、リナはアパートを後にした。
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