003 クロ
「あれリナじゃん!」
「ん、お~おひさし~」
買い出しに出掛けた時、青年と並んで歩いていたリナに話しかける人間がいた。
リナと同年代位の少女が二人で、そのうちの赤いメッシュを入れた方が話しかけてきたのだ。
「最近この辺りで見なかったけど、なに、場所変えたの?」
「ううん、向こうのホテル街が多かっただけ。たまにはこっちにも来てたけどね~」
きゃいきゃいと姦しい中、青年はもう一人の清楚系な黒髪少女と見守っていた。
「ところでお兄さんは誰です?」
「……俺?」
そんな話をしているのを聞いて、リナ達も会話に加わって来た。
「そういえば誰よこの男。リナの客?」
「ちがうちがう、この男は……ペット?」
リナの発言に、二人はげらげらと笑いだしたが、青年は何食わぬ顔で突っ立っている。
「うっそでしょ、ペットって何、M男?」
「あ~なんていえばいいのか……」
「ちょっと向こうで話しませんか。今でも開いているカフェがあるんですよ」
黒髪少女に連れられ、リナ達はそのカフェへと向かった。
「というわけで一旦自己紹介。わたしはミサ、リナとは援交仲間ね」
「同じくアカネです。よろしくお願いしますね」
赤いメッシュを入れた少女はミサ、清楚系の黒髪少女はアカネと名乗った。
「たまに複数プレイやら乱交の頭数やらで呼び出された時に一緒になってさ~。あんたがまだいなかった時は泊まりに来たこともあったのよ」
人の少ない店内、その奥まったスペースでカフェラテを飲みながら、皆思い思いに話していた。
「で、リナとそのお兄さんとの関係は?」
「だからなんていえばいいのか……」
どう話したものかと悩むリサに、青年は代わりに話した。
「ホームレスやってた時に、優しさか気まぐれかは知らないが、家にこないかと誘われたんだ。だからペットとして拾われたというのはあながち間違ってはいない」
「まぁ……」
アカネが口を隠して驚く中、あんた何やってんのよ、とミサはリナにツッコんでいた。
「いやぁ……代わりに家事やらなにやらしてくれるから、今じゃいなくなるとこっちが困ることになっちゃって……ほんと何でホームレスなんてやってたのよ~」
青年の背中をバシバシと叩くリナ。結構勢いよく叩かれているが、その体は微動だにしていなかった。
そんな中、アカネはふと思い出したかのように口を開いた。
「そういえば……お兄さんのお名前はなんていうんですか?」
「名前?」
その言葉に、リナは思わず青年の顔を下から覗き込んだ。
「そういえば……何て名前なの?」
「知らないのかよっ!!」
今更な問いかけにミサはまたリナにツッコむが、青年の言葉にまた別の意味で驚いていた。
「名前か……じゃあクロで」
「「ペットかっ!!」」
リナとミサがツッコミ、アカネはニコニコ笑っていた。
「……というか何でクロ?」
「最初はシロでもいいかと思ったんだけど……黒の方が好きだからクロでいこうと」
「だからペットかっ!!」
ミサのツッコミに青年、クロは構わず自分の分のカフェラテを口に含んだ。それで諦めたのか、全員自分のカフェラテを手に取った。
「というか……クロ?」
「うん?」
カフェラテを置いたクロに、リナは問いかけた。
「ひょっとして名前って……聞いちゃいけない系?」
「というよりも……聞いたら後悔する系、かな」
男性一人と少女三人という奇妙なのか警察レベルの変態話なのか、とにかく四人の話はミサ達が仕事に行くまで続くことになった。
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