第2話 軍事同盟
ルーサー王がもったいをつけて開会を告げる。
「さて、ジーニアン殿、ピオニア姫が貴殿を遣わしたのはいろいろと考えあってのことだろう。それをまずもって伺おう。今までと違った話題も出てくることだろう」
水を向けられて覆面の騎士は小声ではあるが明晰に話し始めた。
「ご存知のとおりレーニアはここメルカットの沖に浮かぶ島国、フランキが攻め上ってくるたびに破壊、略奪、占領を受けるという悲劇を繰り返しております。王が亡くなられてはや2ヶ月、王子もいない今となってはピオニア姫に国を統べていただくほかありませぬ。しかし、フランキは王の崩御を知り次第、レーニアくみし易しとみて戦争をしかけてくるでしょう。わが国は自治を貫きたく、皆様の国々もレーニアがフランキの手に落ち敵の前線基地となるのも百害あって一理なし。ということで『聖なる燭台の軍事同盟』の一員となりたいと存ずる」
「でもレーニアに軍隊はあるのかい?」
ジャレッドが率直に訊く。
「普段はそれぞれの仕事についているが、戦時下では八十名の隊となる」
「それでは同盟と云えぬではないか」
聖燭台同盟参加国内では最北に領土をもち、常に北方民族と国境線のつばぜり合いを繰り返しているラドローは笑う。
「自分の国をうちの軍隊で守ってくれと云っているようなものだ」
「いくさで必要なものは兵隊だけとは限らない」
覆面の騎士は云い捨てた。ラドローはにやりと笑う。
フランキ側に突き出した大きな半島に領土を持つサリウは訊いた。
「フランキの軍備をどうみている? 王の喪があけぬ間に貴殿を遣わすところをみると、余程切迫しているのか?」
「早くて三ヶ月、七月には船団が敵軍港アーブルから出港するだろう」
「レーニアがフランキの属国となりそこから攻められたのではたまらない。メルカットとしてはレーニアに陣をはってでも戦うつもりだ」
海岸線を近接しているルーサーが断言した。
「ラドローやジャレッドは遠いと思って笑っていられるが、サリウの国やうちが陥落することを考えてもみよ」
「嫌だとは云ってないさ、ルーサー。うちの陸軍精鋭部隊でもつれてきていつでも陣頭指揮をとるよ」
ラドローはルーサーの恋わずらいをひやかし加減ににやにやしている。
パラスは「フランキに対して俺たちが協力しすぎるということはないと思うよ」と云った。
そこでルーサーは自分の愛用の剣を手に取った。それを合図に皆が自分の剣を掲げ、聖なる燭台の中心上で剣先をあわせた。
そして、「レーニアを我らが軍事同盟の一員とする。同盟内のいかなる国で紛争のある場合も他国は助力を惜しまない」と唱和した。
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