第26話◆新婚生活
◆新婚生活
東京に帰ってから直ぐに、サキさんと二人で区役所へ婚姻届を出しに行った。
ちなみに届出用紙の証人欄は、同期の田口君とサキさんの親友の友美さんに書いてもらった。
これで二人はこの日、晴れて夫婦になったのである。
家はボロいが、俺の家は持ち家である。 普通ならば、ここに二人で住めばいいと思うだろうが、俺達には少々問題があった。
ひとつは、サキさんのご両親が俺たちの結婚についてまだ何も知らないという事だ。 しかも一人は大反対するのが目に見えている。
そして二つ目は、サキさんが買った大きなキャンピングカーの置き場所である。
垣根を取っ払ってしまえば、庭になんとか置けないことはない。
けれども、俺の家には置けない理由がある。
それは、サキさんが家出してからしばらくして、あの親父さんがここ(俺の家)まで訊ねて来たことがあったからなのだ。
どうやら、俺がサキさんをそそのかしたと思われていたらしい。
その時は日曜日だったけど、ちょうど俺は休出で会社にいたため、隣の村上さんが対応してくれたのだ。
もちろん、そのころ俺はサキさんに振られたと思っていたし、毎朝暗い顔をして出勤していたため、村上さんもそれはきっぱりと否定してくれた。
ということで、またいつ親父さんがここに訪ねてくるか分からない。 もし、二人でいるところを見つかったら、きっと殺人事件として報道される事態になるだろう。
いっそ近くにアパートを借りようかとも思ったのだけれど、あのデカいキャンピングカーを止めて置ける駐車場がない。 二人して不動産屋を何十件も回ったが、どうにもならなかった。
万策尽きて頭を抱えていたところ、ひさびさに友美さんからサキさんに電話がかかってきて、いろいろ話しているうちにそれなら「うちの敷地」に置いて、しばらくそこで暮らせばと言われた。
友美さんの実家は都内にあるが、友美さんは信州大学医学部の学生で、いまは安曇野市に住んでいる。
で、ご実家は開業医さんで超お金持ちなのだ。 当然、お屋敷の敷地も広大である。
サキさんも何回か遊びに行ってたので、友美さんのご家族とも面識があった。
友美さんからご両親には了解を取り付けてもらったので、ご厚意に甘えさせていただき、俺たちはしばらくそうすることにした。
サキさんは、既にキャンピングカーで三か月以上暮らしてきていたので、慣れたものだったが俺は最初ずいぶん戸惑った。
クルマには、一応トイレもシャワーもついているのだけれど、排水タンク容量の問題で日常的には使えない。
冷暖房もクルマのエアコンとは別に、一般家庭で使っているエアコンがついていたけど、こちらもバッテリーの問題があった。
屋根についているソーラーパネルだけでは、フル充電とはならないのである。
しかし、この問題も友美さんが解決してくれた。 なんと電源をガレージから延長ケーブルでクルマまで引っ張ってくれたのだ。
これで、電子レンジもエアコンも照明もバッチリ使える。
トイレは病院のを使わせてくれたし、風呂は歩いて15分のところに銭湯があった。
こうして住む環境も整い、やっと二人の新婚生活が始まったのだった。
***
友美さんの実家は都内にあって、俺の家から通うよりも会社に近かった。 なので朝もゆっくりしていられたし、帰りも早く帰ってこれた。
いままでは、睡眠優先で朝食など食べたことがなかったが、今はサキさんが先に起きて朝食を作ってくれる。
なんだか直ぐに幸せ太りしそうだ。
しばらくの間の休日の過ごし方は、月に1度はキャンプに出掛け、残りは不動産屋さんめぐりだった。
しかしいつまでも友美さんのご家族に甘えているわけにはいかないし、やはりキャンピングカーで毎日を暮らすのは無理がある。
だけど、都内の駐車場の相場は場所によっては家賃より高く、当然でかいキャンピングカーを止められる場所も限られていた。
もう打つ手なしと思いかけていたところ、サキさんが自分のクルマのことは自分で解決しますと言ってキャンピングカーで出かけて行ってしまった。
なかなか帰ってこなかったのでメールをしたら、サキさんは上田にいた。
なんと上田にキャンピングカーを止めて置ける土地を買いに行っていたのだ。
上田市の土地の平均坪単価は8万円弱だそうで、40坪ほど買って320万円。 それに比べ都内の駐車場は、月20万円(2台分のスペースが必要なので)だ。
キャンピングカーの問題が解決したので俺とサキさんは、いったん俺の家に戻ることにした。
しかしこの家も築45年であちこち傷んでいるし、そろそろ建て替えか大規模リフォームが必要になっていた。
散々悩んだ末に、俺は親父の遺産(生命保険のお金など)を使わせてもらい、俺は新しい家を買うことにしたのだった。
第27話「蒼汰、北海道で本物の熊を見る」に続く
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