クラスの美少女の彼氏がExcelでした

ミネムラコーヒー

第1話

 うちの高校のクラスにはちょっと変わった美少女がいる。表 計菜(おもて かずな)。きれいなストレートの髪の毛と華奢で整ったスタイル。成績はトップクラスで特に数学や理系科目では誰もかなわない。休み時間はどこに行っているのかわからないがとにかく教室にはおらず、あまりクラスメイトと喋っているところは見かけない。それはどことなく漂うミステリアスな雰囲気のせいでもあるし、その最大の原因は襟足付近の髪の毛に一束はいった緑色のメッシュだ。優等生キャラと矛盾するようなそのワンポイントの特徴が同級生たちが彼女においそれと近づけない。

 おれもクラスのみんなと同じく、表さんとはまともに喋ったことがない。彼女とちがっておれは平凡なモブだし、成績だって悪いってわけではないが中の上ってところだ。そんなおれは最近どうにも表のことが気になってしまう。もちろん彼女はどうやったって目立つタイプだし普通のことじゃないかとも思うのだが、どうにも最近気になりすぎる。いまだ恋人のできたことのないおれだが、これは恋なのだろうと思う。いまのところ友人たちや当の表さんにもおれが彼女のことを気になっているのはバレてはいないはずだ。

 なにか仲良くなるきっかけができないかと春から思い続けて3ヶ月が過ぎたが世の中そんなに都合の良いことはない。一度きりの人生、恥や失敗を恐れて何もしないよりも行動を起こそう。決意したおれは動き始めた。


 それでは起こすべき行動とはなにか。いきなり放課後に呼び出して告白してお付き合い、なんてのは少年マンガに書かれたファンタジーだ。恋愛経験ゼロのおれだってそんなことはわかる。かといって何のきっかけもないのにふらっと話しかけて仲良くなることができるかといえばモブのおれにはそんなことはできない。プロジェクトの最初に必要なのは調査だ。

 彼女の交友関係、趣味、食べ物の好き嫌い、普段の生活、好みのタイプ、そして最も重要なこととしてそもそも恋人はいるのか。一世一代の決意で恋愛に踏み出そうというのだから、せめてそのぐらいは情報を掴んでから臨みたい。仲良くなってから「実は彼氏が……」なんてのはあまりにもつらすぎる。そのぐらいのリスクは回避したっていいだろう。

 そういうわけでおれはここ一週間、バレないように慎重に彼女のことを調査している。内面的なことはわからないが、謎めいていた彼女のこともすこしはわかってきた。

 まず彼女には特別仲の良い友だちは学校内にはいない。ぼっちというわけではないが、一緒に登下校をしたりでかけたりするような友達は観測できなかった。仲の良い友だちが他のクラスにでもいれば、そこから情報が得られるかもと思ったがそううまくはいかないようだ。しかしポジティブに捉えれば、学校内には仲良く一緒に登下校しているような恋人がいるわけではないということがわかったとも言える。

 次に彼女の行動パターンだ。彼女が朝、教室に入ってくる時間は8時22分ごろ、時間は精緻でブレはない。帰宅時も同様で、授業が終わると寄り道することなく帰っていく。授業中は真面目で、眠そうにしていたりしているところはまったく見かけない。昼休みになるとかばんを持ってどこかへでかけていき午後の授業寸前まで戻ってこない。この間の動きが気になるが、友人の目をかいくぐって露骨に後を追うのもはばかられるため特定できていない。隙のない表さんだが、ここに近づくための足がかりがあるに違いない。


 もちろん1週間を無為に費やしたわけではない。昼休みの動きについても捕捉まであと一歩のところまで詰めている。

 まず月曜日、何食わぬ顔で昼休みを過ごしながら、おれは彼女が教室のどちらに行きそしてどこから戻ってくるのかをチェックしていた。結果、教室の左奥の席にいる彼女はすぐそばの後方のドアを出て左手に向かうことがわかる。戻ってくる際も同じドアから返ってくるが、前側のドアの小窓に緑色のメッシュの入った髪の毛を見かけたため、彼女の昼休みの滞在場所はこの2-Aの教室を出て左側にあることがわかった。

 火曜日、さらに可能性の分岐を狭める検証を行う。教室を出た左側からは上下の階段、そして右に向かう廊下が存在する。おれはそれとなく昼休みの終わり頃に教室を出て、階段に腰掛けてスマホでゲームをしながら彼女の帰りを待った。結果、昼休みが終わる1分前の13時39分、彼女は階段の下から戻ってきた。おれは怪しまれないよう少しだけ目を向けるとスマホのゲームに意識を戻し、チャイムが鳴り始めてからさもうっかりしたかのように教室に走って戻っていった。

 水曜日、調査を休んだ。2日も連続で自分の通路でクラスメートを見かけたら怪しまれるに違いないからだ。大胆な作戦にも、ときに慎重さが求められる。

 木曜日、ここからさきはハイリスクだ。教室からすぐの階段であれば怪しまれるようなことはないし、たいした言い訳も必要ない。だが教室から離れたプライベートに近い場所であまり知らないクラスメートに会ったらどう思うか。どことなく怪しさをおぼえるだろう。不用意に続けばストーカー呼ばわりされかねない。対策として待ち伏せではなくこちらも移動しながらの観察を行うこととした。弁当を平らげたおれはまず1階にある図書室に向かう。10分ほどかけて本を物色しミステリー小説を2冊借りる。読書はおれの趣味で朝や昼休みにも時々ページをめくっている、図書室を利用すること自体も珍しいことではない。表さんが図書室帰りのおれを見かけたとしても、疑問をもつことはないはずだ。スマホで時間を見つつ階段に近づいていく。この日は彼女が2階からもどってくるのか、1階から戻ってくるのかを確かめる。事前の計測によれば1階から教室がある3階まで上がるにはだいたい40秒ほどかかる。つまり13時38分20秒ごろから階段に差し掛かれば、教室に帰っていく表さんを確認することができるというわけだ。均一なペースで階段を上らなければならないという緊張感があったが、答えはすぐにわかった。おれが階段に入る手前、彼女が別の方角からやってきて階段を登っていった。姿勢良く上品に階段をのぼる姿、スカートからのぞく膝の裏に少しだけ見とれながら、おれは彼女の後を追い教室に戻った。


 そして金曜日。表さんの昼休みの核心にせまる日だ。すでに行き先は限られている。1階の廊下の先にあるのは家庭科室、美術室、そしてコンピューター室。どれも部活などの事情で昼休みを過ごしてもおかしくはない場所だろう。あとは思い切って確かめるしかない。忘れ物を探しに来たという言い訳を用意し、昼食を終えたおれは表さんの居場所を探りに来た。昼休みの中頃で廊下を通る人間はまばら。できるだけ涼しい顔を取り繕い、それぞれの教室を覗いていく。

 まず家庭科室。こちらは前後に授業もないようで電気もついていなかった。変わりものの表さんといえども真っ暗な家庭科室で一人過ごしているということは流石にないだろう。次に美術室なのだがここにはいないはずだ。中学からの付き合いの友達の後藤が美術部に所属しているが、表さんが美術部だという情報はない。通り際に覗いたが教壇で美術教師がなにかの準備をしているだけで他にはひとは見当たらなかった。

 残るはコンピューター室。しかしこんなところにあの表さんがいるのか?昼休みはパソコン部の連中が遊んでいたりするようだが、知る範囲ではパソコン部というのはオタクの巣窟だ。まさかとは思うのだが確かめねばならない。コンピューター室は見通しが悪いので窓からでは表さんがいるかどうか確かめられない。おれはノックをして少し扉を開けた。

「あのー、すいません。ちょっと忘れ物を探してるんですけど」

「あ、はい。どうぞ」

 ドアの近くにいたパソコン部員の許可を得て教室に入っていく。奥の席を目指しながら確認したが、いたのは3人のパソコン部員の男子だけだった。奥の席でそれらしく探しものをする仕草をしてポケットに入れておいたペンを手に取る。入口に戻り、部員に会釈をしてコンピューター室を出た。


 おかしい。表さんが昼休みを過ごす場所はわからずじまいだった。いつもどおりでかけていったはずだが、居場所が決まっているわけではないのだろうか。観察している限り彼女は決まったスケジュールを重視するタイプだ。イレギュラーな動きをしていることは考えがたい。しかしこの廊下にある部屋はすべて確認したはずだ。いった彼女はどこにいるのか。

 コンピューター室の前で考えていると答えが見つかった。よく見ないと気づかないが、窓の端に誰かの頭が少しだけ見えている。さらさらの黒髪の女性、よくは見えないが緑のメッシュが入っているに違いない。表さんだ。いったいなぜそんなところにいるんだ。なにをしているんだ。ひとりなのか、それとも誰かといるのか。気になる。あたりを見渡すと、廊下の先に非常口が見える。おそらくあそこから外にでるのだろう。廊下にはタイミング良く誰もいない。おれは外に出て確かめることにした。

 非常口のドアノブに手をかけてゆっくりと回す。鍵はかかっていないようだ。音を立てないようゆっくりとドアをあけて外に出る。表さんがいるのはドアの角からまがって少しいったところ、壁際で聞き耳を立てる。小声だが表さんのものらしい声が聞こえてきた。聞き捨てならない声が。


、ほんとだ〜いすき」


 最悪だ。謎の昼休みが彼氏とイチャイチャだったとは……。





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 やあ、久しぶり。またカクヨムでExcel小説を読んでくれてとても嬉しいよ。実はいまとても困っているんだ。

 このお話はSpreadsheets/Excel Advent Calendar 2019の1日目なんだけど、12月になったにもかかわらず今日を含めてまだ9日分しか埋まってないんだ。しかも既にうち3日はぼくが書くことになっている。このまま状況に変化がないと、25日中19日を埋めないといけない。昨年にもまして厳しい状況だろ?

 どうにか25日完走したいと思っているんだけど、このままじゃおよそどうにかできる気がしない。だから助けてほしいんだ。

 そういうわけで明日のアドベントカレンダー担当はいまこのSOSを読んでいる君にやって欲しい。いやほんと後生だからお願いします。ふざけてフランクなテンションで書いてすいません。真剣なんです。2日の23時まで待ちます。マジで助けて…。

https://adventar.org/calendars/4085

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