第7話キスのない世界

まだあどけない少年の勇者は今日も愛用の自動小銃の手入れをしていた。




彼のいる場所は、例えるならば、キスのない世界。




おやすみも、おはようも、ない。




ただ、サヨナラだけはよく使う世界。




砂漠に面した道路を行軍する少年。




荒ぶる太陽の熱にさらされて、彼の心は高ぶっていた。




昔、友人が足を無くした為に、上官に処刑された。




彼のいる世界では普通のことだったから、




少年は特に何とも思わなかった。




ただサヨナラを言うとき、


ほんの少し心が潤ってきて、少年は暫く天を見上げ続けた。




ある日、


彼の弟が自分の目の前で敵兵の爆弾を食らって死んだ。


弟は、傷ついていた少年をかばって死んだ。




サヨナラを言う最愛の相手は、


その原形すら留めていなかった。




それから数年、


少年の心は、隣の砂漠よりも乾いていた。




そして今日も彼は人を殺した。




少年は言った。




世界平和の「世界」って、一体どこの世界のことを言ってるの?


少なくとも、僕のいる「世界」には永遠に平和なんて来ないよ。


僕は僕と僕の守りたい世界を守る、


それだけで精一杯なんだ。




もし君達の言う「世界」が平和になったとしても、


僕の心に平穏が訪れることはないよ。






それから数ヵ月後、


少年は沢山の仲間にサヨナラを言われた。


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